ブルース・スプリングスティーンの自伝的作品「Tenth Avenue Freeze-Out」(『Born To Run』収録)にはこう歌われている。「ビッグ・マンがバンドに加わって、転機が訪れた」と。
ブルースとザ・ビッグ・マンことクラレンス・クレモンズの出会いは今や伝説だが、クラレンスは半分は作り話と認める愉快な自伝『Big Man』で、これこそが真実とする話を語っている。1971年9月の運命の夜、彼はブルースの出演していたクラブに行った。
「雨が降って風が強い日だった。俺が扉を開けたら、それが蝶番から外れて、道路の方へ飛んでいった。バンドは舞台上で演奏中だったが、入口の枠の中に立つ俺をじっと見た。それがブルースをちょっと不安にさせたんじゃないかな。だって、「君のバンドと一緒に演奏したい」と言っただけなのに「もちろん、何でもやりたいことをやってくれ」と言ったからね。
最初にやった曲は「Spirit In The Night」の初期のヴァージョンだった。ブルースと俺はお互いを見て、一言も言わなかったけど、俺たちがお互いの人生に欠けていたミッシング・リンクだとわかったんだ。彼は俺がずっと探していたものだった。やせた小柄な若造にすぎなかったけど、彼には将来を見通す力があった。彼は自分の夢を追いかけたかった。そのときから俺は歴史の一部になったんだ」
クラレンスの力強いサック...moreス演奏はEストリート・バンドのサウンドを決定づけたが、その巨体の存在自体も同じく重要だった。1970年代には、黒人メンバーが白人のリーダーと対等に絡むロック・バンドはありえなかった。
だから、2人が演奏と舞台上の動きで表現する人種を超えた友情と信頼の絆は、公民権運動からまだ日の浅いアメリカに強いメッセージを発した。大ヒット・アルバム『Born To Run』のカヴァーをブルースがクラレンスに寄りかかる写真が飾った意義は非常に大きかったのだ。
2011年6月にクラレンスは脳卒中で倒れて帰らぬ人となったが、ブルースは感動的な弔辞の中で、自分たちの重要な仕事を「僕らの(人種を超えた)友情がそれほど例外的ではない類の場所を作った」と表現し、「その仕事はまだ完成していない」ので、「次の人生でこの道の先で、また会おう。そこで僕らは再びその仕事を始めて、やり遂げるんだ」と亡き親友に呼びかけた。
2012年3月から始まった「レッキング・ボール・ツアー」では、最後に「Tenth Avenue Freeze-Out」が演奏され、「ビッグ・マンがバンドに加わって~」の箇所で演奏が止められ、クラレンスの映像がスクリーンに映し出された。
毎晩繰り返される演出にもかかわらず、観客と一緒にその映像をじっと見つめるブルースの姿には、「クラレンスは死んでもEストリート・バンドを去りません。彼がバンドを去るのは僕らが死ぬときです」が心の底からの言葉だと思い知らされたのだ。
ブルース・スプリングスティーン
『Born to Run』
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*このコラムは2014年7月26日に初回公開されました。
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2025年11月14日公開『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ (Springsteen: Deliver Me from Nowhere)』
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米メディア「Futurism」が報じた最新研究によれば、科学者たちはMRIで取得した脳活動データから、被験者が見ている映像内容を文章として再構成する「マインドキャプショニング」と呼ばれる技術を開発したようです。複数のAIモデルを組み合わせることで、脳の活動パターンから意味情報を抽出し、具体的な描写文へと変換する仕組みらしいのですが……。詳しく紹介していきましょう。高精度な文章生成能力とその検証この訓練を経た脳デコーダーは、新たな脳スキャンデータを解析して意味シグネチャを予測し、AIテキスト生成器がその予測シグネチャに合致する文章を生成します。このプロセスにより、たとえば「滝の上から人が飛び降りる」映像に対して、「滝の上で人が飛び降りる」といった具体的な描写を、数十回の推測を経て生成することに成功しました。さらに、生成された文章は、100通りの候補の中から正しい映像を特定する精度が50%に達し、これは偶然による正答率(1%)を大幅に上回るものでした。既存技術との比較と実用化への期待「マインドキャプショニング」技術は、従来の思考読み取り技術と比較して、単語の羅列に留まらず、詳細な文脈まで含めて記述できる点で優れています。Meta社などの過去の試みでは、高価で大型な装置が必要であったり、AIが生成した文章と本人の思考の区別が曖昧になる可能性がありましたが、本研...more究で開発された技術は、より実用的な応用が期待されています。思考を読み解く技術の未来と倫理的課題「マインドキャプショニング」技術は、脳卒中や失語症などでコミュニケーションが困難な人々にとって、新たな表現手段を提供する可能性を秘めています。しかし同時に、個人の思考という最もプライベートな領域へのアクセスが可能になることで、深刻なプライバシー侵害のリスクといった懸念も。技術の進展とともに、この二面性をどう管理していくかが重要な課題となることは言わずもがな。本研究は、AIが人間の脳活動を解読する能力の飛躍的な向上を示唆しており、将来的にはMRIのような大型装置に頼らず、脳インプラントなどと組み合わせることで、思考の直接的なインターフェースが現実のものとなるかもしれません。これは、人間とAIの共進化による新たな知能の形や、人間の能力拡張の可能性を示唆しているのではないでしょうか。Reference: Scientists Say They’ve Figured Out How to Transcribe Your Thoughts From an MRI Scan Top Image:AIによる生成