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本作は
「ワクチンで防げるがんがある」という話は、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
その代表がヒトパピローマウイルス(HPV)を原因とする子宮頸がんですが、現在、世界ではこの病気を単に減らすだけでなく、社会から「根絶」するという高い目標が掲げられています。
しかし、具体的にどの程度の接種率を達成すればウイルスが姿を消すのか、その明確な基準を導き出すのは容易ではありません。
この難問に数学という視点から挑んだのが、アメリカのメリーランド大学(University of Maryland: UMD)のアバ・グメル(Abba Gumel)教授とソヨン・パーク(Soyoung Park)氏らによる研究チームです。
彼らは、人々の接触やワクチンの効果を数式で再現する「数学モデル」を用い、韓国をモデルケースとした詳細な分析を行いました。
その結果、女子のみへの接種に頼る現状の政策では、がんを大幅に減らせても根絶には至らないという事実が示されました。
一方で、男子への接種を組み合わせると、社会全体がウイルスから守られる「集団免疫(ウイルスが広がれなくなる状態)」が形成され、根絶への道筋がより現実的なものになることを突き止めたのです。
本記事では、数学が解き明かした「がんを消し去るための最適解」について解説します。
この研究の詳細は、2025年12月3日付けで科学雑誌『Bulletin of Ma
...morethematical Biology』に掲載されています。
目次
数学モデルが導き出した「子宮頸がん根絶」への最短ルート男性自身にもたらすワクチンの恩恵
数学モデルが導き出した「子宮頸がん根絶」への最短ルート
子宮頸がんは、世界中で毎年約66万人が新たに診断され、約35万人もの命を奪っている深刻な病気です。
そのほとんどが、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus: HPV)というウイルスへの感染によって引き起こされることが分かっています。
現在、世界140か国以上でワクチンの接種が進められていますが、この病気を社会から消し去ることは可能なのでしょうか?
メリーランド大学の研究チームは、この難問に答えるために「数学モデル(Mathematical model)」という手法を用いました。
この数学モデルは、人々の性別やワクチンの有無、ウイルスの広がり方を複雑な計算式で再現し、将来の予測を行うシミュレーターのようなものです。
彼らは韓国の実データをもとに、現在の「12歳から17歳の女子の80%がワクチンを打つ」という政策を続けた場合をシミュレーションしました。
すると、がんの数を大幅に減らすことはできても、ウイルスそのものを社会から根絶(Elimination)するには不十分であるという結果が出たのです。
では、一体どうすれば「子宮頸がんのない社会」を実現できるのでしょうか?
研究チームが導き出した答えは、女子の接種率を99%という極限まで高めるか、あるいは女子の接種率は現状の80%程度を保ったまま「男子の65%」にもワクチンを打つことだったのです。
特に男子への接種を組み合わせる戦略は、女子の接種率を無理に100%に近づけるよりも、はるかに現実的な選択肢となります。
数学的な計算によれば、この新しい戦略を取り入れることで、今後60年から70年以内に子宮頸がんを根絶できる可能性が見えてきたのです。
また子宮頸がんの問題ばかりが取り上げられがちですが、HPV自体はウイルスのため、感染すれば男性にも様々な症状をもたらします。そのためHPVワクチンの摂取は、子宮頸がんの撲滅という目的だけでなく、男性自身にもさまざまな恩恵をもたらします。
男性自身にもたらすワクチンの恩恵
実は、男子への接種が重要なのは、女子を守るためだけではありません。
HPVは、男子にとっても肛門がん (Anal cancer) の88%、陰茎がん (Penile cancer) の50%、中咽頭がん (Oropharyngeal cancer) の30.8%を引き起こす原因になっていると報告されています。
また、がん以外にも、再発しやすく生活の質を損なう「尖圭コンジローマ (Genital warts)」という生殖器のいぼの約90%が、このウイルスによって引き起こされます。
韓国ではHPVに関連する男性のがん症例が過去20年間で3倍に増加しており、ワクチンは男性自身の健康を守るための盾にもなるのです。
「免疫の海」で守る:集団免疫の数学的な裏付け
研究を主導したグメル教授は、男女にワクチン接種する意義を「免疫の海(Sea of immunity)」という表現で説明しています。
ワクチンを打つことでウイルスへの抵抗力を持つ人が増えると、社会全体が防波堤のようになり、ウイルスが広がる場所を失っていきます。
これを「集団免疫(Herd immunity)」と呼びますが、男女両方に接種することで、社会全体のウイルスの通り道をより効果的に塞ぐことができるのです。
男子への接種によるプラスの影響は、女子の接種率を無理に引き上げる重圧を減らし、社会全体の安全を底上げする効果があります。
一方で、今回の研究では「パップテスト(Pap test:子宮頸部細胞診、またはパパニコロウ検査)」と呼ばれる子宮頸がん検診の効果についても分析が行われました。
検診は、がんになる前の異常を早く見つけて個人の命を救うためには極めて重要な手段です。
しかし数学モデルの分析によると、検診の頻度や範囲を広げるだけでは、ウイルスが社会に蔓延する状況そのものを止める力は限定的であることが示されました。
つまり、病気を社会から根絶するには、検診という「出口の対策」だけでは不十分であり、ワクチンという「入り口の阻止」と組み合わせることが不可欠なのだという。
ただし、この研究結果を解釈する際にはいくつか注意すべき点もあります。
今回の数学モデルは、主に男女間の接触による感染を計算しており、同性間での感染リスクなどは今後の研究課題として残されています。
また、性行動のパターンは国や地域によって異なるため、韓国のデータに基づいたこの結果を日本などの他の国にそのまま当てはめるには、さらなる再計算が必要です。
それでも、グメル教授は「毎年35万人もの命を失う必要はない」と断言しています。
数学が明らかにしたのは、私たちが正しい戦略を選び、ワクチン接種の対象を広げることで、子宮頸がんを「過去の病気」にできるという希望の未来なのです。
全ての画像を見る参考文献New study charts paths to end cervical cancerhttps://www.eurekalert.org/news-releases/1109413元論文Mathematical Assessment of the Roles of Vaccination and Pap Screening on the Burden of HPV and Related Cancers in Koreahttps://doi.org/10.1007/s11538-025-01548-5ライター相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。編集者ナゾロジー 編集部...
世間で話題沸騰のアニメや映画について、「あんまり流行ってると逆に見たくない」という感覚を抱くことは珍しくはないでしょう。
また、多くの人が絶賛する社会的なブームに対して、自分だけはあえて批判的な態度を取りたくなったという経験も、覚えがあるかもしれません。
素直に楽しめばいいのに、なぜか斜に構えてしまう心理は、一見すると単なる「へそ曲がり」や「冷笑的」な態度に見えますが、心理学的な視点で見ると、そこには「人にコントロールされたくない」「自分らしさを保ちたい」といった、人間に普遍的な動機が潜んでいます。
それは単に流行を嫌っているのではなく、巨大なブームとの距離感を調整することで、「自分の輪郭や価値」を守ろうとする防衛的な心理です。
本記事では、ドイツのマインツ大学(Johannes Gutenberg University Mainz)の社会心理学者ローランド・イムホフ(Roland Imhoff)博士による「ユニークさの欲求」に関する実証研究や、アメリカの社会心理学者マリリン・ブリュワー(Marilynn Brewer)博士が提唱した「最適弁別性理論」などを手がかりに、流行に背を向ける人々の心理を紐解いていきます。
ここからは、人気のものにアンチ活動を始めたり、人気のものを否定するために陰謀論めいた理屈を唱えだす人たちの心理も見えてきます。
目次
批評家ぶってしまう心理の理由
...more「みんなと同じ安心感」と「自分だけ特別」の最適点を探している
批評家ぶってしまう心理の理由
なぜ、人は素直に流行を楽しむのではなく、あえて「自分は興味がない」「あんなもののどこが良いのか」と批判的な立場を取りたがるのでしょうか?
その一因として、私たちの中で働きやすいと考えられるのが「ユニークさの欲求(Need for Uniqueness)」と呼ばれるものです。
これは、アメリカの心理学者C.R.スナイダー(C. R. Snyder)とハワード・フロムキン(Howard L. Fromkin)によって提唱された概念で、「他者と適度に異なっていたい」という根本的な欲求を指します。
彼らの研究によれば、人間は他人と自分が「そっくりだ」と感じるとき、不快感を抱くことがあるのだといいます。
自分と同じ服、同じ髪型、同じ意見の人間が目の前に現れたとき、私たちは「親近感」よりもむしろ、「自分という存在の独自性が脅かされた」という不安を感じるのです。
猫も杓子も同じ作品を見て、似たような感想を言い合う状況だと自分の感性や意見の独自性が保ちにくくなります。
そこでアイデンティティを取り戻すための手っ取り早い方法が「みんなが右を向いているときに、あえて左を向くこと」になるのです。
この心理メカニズムについて、興味深い実証研究があります。
ドイツのマインツ大学の社会心理学者、ローランド・イムホフ(Roland Imhoff)博士らが2017年に発表した研究では、一般的に信じられていない「陰謀論」を支持する人々と、この「ユニークさの欲求」の関連が調査されました。
その結果、ユニークさの欲求が高い人ほど、定説(マジョリティの意見)を否定し、少数の人しか知らない情報を信じる傾向が強いことが示されたのです。
イムホフ博士は、彼らが陰謀論を信じる動機について、純粋に真実を求めているというより、「多くの人が気づいていない“隠された真実”を知っている自分は、特別でユニークな存在だ」という感覚を得るためではないかと分析しています。
もちろん、「流行の否定」と「陰謀論」は異なる現象ですが、ここにはどちらも「多数派の考えから距離を置き、自分独自の視点を示したい」という心理メカニズムが共通して隠れているように見えます。
「この人気は不自然だ」みたいな意見を聞くことがあるのも、「流行の拒否」と「陰謀論」にはどちらも多数派を否定する似た性質があるからかもしれません。
流行への反発が強まると、根拠の薄い理屈でも「自分の立場を支えてくれる情報」に見えてしまうことがあるのでしょう。
そしてもう一つ重要なのが、自律性という心理的欲求です。
私たちは誰しも、「自分の行動は自分で決めたい」「誰かに指図されたくない」という「自律性(Autonomy)」の欲求を持っています。
通常、私たちは好きなコンテンツを自分の意思で選んでいるつもりです。しかし、「社会現象」と呼ばれるほど巨大なブームが起きると、状況は一変します。
テレビをつけても、SNSを開いてもその話題ばかりになると、まるで「それを見ることを社会全体から強制されている」ような、目に見えない圧力を感じることがあるのです。
このように、外部からの圧力によって自由が脅かされたと感じたとき、反発しようとする心の働きを、心理学では「心理的リアクタンス(Psychological Reactance)」と呼びます。
普通なら「そんなに話題なら見てみようかな」となるところを、自律性の欲求が強い人は「自分の自由意志の危機だ」と感じて強い反発を起こすのかもしれません。
この理論に基づけば、へそ曲がりに見える「流行りのものをあえて見ない・買わない」という行動の正体が見えてきます。
それは、流行に流されず、「自分の行動は自分で決めたい」という自律性を回復するための、心の防衛反応なのかもしれません。
「みんなと同じ安心感」と「自分だけ特別」の最適点を探している
流行を拒絶するということは、多くの人との共通の話題を捨てることであり、孤立を招くおそれがあります。
しかし人間には他者とのつながりを求める「関係性(Relatedness)」という心理的欲求があり、多くの人は自律性やユニークさの欲求より、こちらの欲求が大きいので「そんなに話題ならちょっと見てみるか」となります。
では、流行を拒絶する人というのは、孤立をおそれず関係性の欲求がない人たちなのでしょうか?
実はそういうわけではありません。ここには、人間関係における非常に興味深いパラドックス(逆説)が存在します。
私たちは「仲間外れになりたくない」と願う一方で、「その他大勢の中に埋没して、自分らしさを失いたくない」とも強く願っているのです。
この相反する欲求のバランスを説明するのが、アメリカの社会心理学者マリリン・ブリュワー(Marilynn Brewer)博士が提唱した「最適弁別性理論(Optimal Distinctiveness Theory)」です。
ブリュワー博士は、人が社会集団に所属する際、「同化(みんなと同じ安心感)」と「差別化(自分だけの特別感)」の両方が満たされる、ちょうどいい湯加減のような場所(最適点)を探し続けていると論じました。
この理論を「流行」に当てはめてみましょう。
世界的な大ヒット作品などの「巨大すぎる流行」の輪に入ることは、数千万人規模の集団に「同化」することを意味します。 そこでは「みんなと一緒」という安心感は得られますが、集団があまりに巨大すぎるため、自分が「その他大勢」の一部になってしまい、「差別化(自分たちの特別感)」が満たされません。
逆に、たった一人で孤立してしまうと、差別化は極端に高まりますが、「同化」が満たされず不安になります。
そこで、彼らが選びやすい落としどころの一つが、「アンチ派閥」や「マイナー愛好家」という『適度なサイズの少数派グループ』に所属することなのです。
「みんなが知らないマイナーな作品」を推したり、「流行りの作品をあえて批判する」という立場を取ったりすることは、社会心理学の視点で見れば、「巨大すぎるチーム(大衆)」から脱退し、「選ばれた少数のチーム(通な人たち)」に移籍する行為だと言えます。
この「少数派チーム」の中であれば、大衆とは違うという「差別化」を満たしつつ、同じ価値観を共有する仲間との連帯感(同化)も同時に得ることができます。
つまり、彼らは決して孤独になりたいわけではありません。
「大衆」に埋没するのを避け、「居心地の良いサイズの集団」に所属し直そうとしているのです。
多くの人は流行りのものに対して、ぼんやりとではあっても嫌悪感や、抵抗を感じていると思います。その背景にはこのような人間の基本的心理欲求が隠れていると考えられます。
もちろん物事の感じ方は人それぞれなので、流行に乗れなかったとしても何もおかしなことはありません。
しかし、ここで述べたような欲求が強すぎる人たちは、無自覚なまま過激なアンチ活動に走ってしまうおそれもあるので注意が必要です。
ただこうした心理メカニズムを理解すると、流行に背を向ける人たちの態度も、自分の居場所を探す人間らしい行動として映るようになるかもしれません...