日本製鉄がUSスチールを買収するとして注目を集めていますが、現アメリカ大統領であるバイデン氏や今月1月20日より大統領に再就任するトランプ氏たちは、批判的な意見を持っていることが明らかになっています。『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』の著者である宇田川敬介さんは、この件に関して、石破内閣が与える影響など政治的な背景も踏まえて解説してくれています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:USスチール買収拒否に見る「石破内閣の信用」
USスチール買収禁止命令への経緯
まずは簡単に「USスチール」という会社について見てみましょう。この会社は1901年にアメリカ合衆国に設立された鉄鋼会社で、現在はペンシルバニア州ピッツバーグに本店を置く会社です。2022年の粗鋼生産は世界24位、アメリカ合衆国第2位のシェアを占める会社です。この会社を日本製鉄が買収するという計画を2023年12月に発表しました。
日本製鉄は2022年の粗鋼生産は世界4位ですから、USスチールよりもかなり大きいということになります。買収予定額は約141億ドル(1兆4100億円)といわれております。
買収にはアメリカの同業者であるクリーブランド・クリフスも名乗りを上げましたが、買収額で日本製鉄に決まったということで、2024年4月12日の臨時株主総会で賛成多数で可決したのです。
しかし、全米
...more鉄鋼労働組合 (USW) はこの買収に反対し、また、アメリカ大統領のバイデン氏も難色を示しています。また、大統領選挙の最中にトランプ候補もまたハリス候補も反対する姿勢を見せています。この買収に関して関係機関で審査してましたが結論が出ず、今年の1月3日に、バイデン大統領は買収計画の禁止をする方針を発表したのです。
理由はバイデン大統領は安全保障上の理由としていましたが、アメリカ政府に訴訟をするとした日本製鉄の中村会長によれば「CFIUSは、国家安全保障上の懸念について政治的に中立な立場から誠実に審査や調査を行うのではなく、バイデン大統領の政治的目的を支援するために、あらかじめ決められた結果に達するための審査手続きを行った」としています。
これに対してUSスチールは、「中国共産党のトップが小躍りして喜んでいる」とXに投稿していることも話題になりました。
この問題に関する政治的背景
この問題に関しては、いくつかの問題が指摘されています。まず最も単純でありながら最も困難な内容を見てみましょう。
一つは、この会社の名前です。「USスチール」という「アメリカ合衆国」を冠にした会社を、日本製鉄という「日本」が買収するということになります。
経済合理性から見れば、業界4位が業界24位を買収することであり、また、経営が危機的な状況と、地理的にアメリカやヨーロッパに事業を拡大する企業が合併するということになるのです。
しかし、感傷的・情緒的には、その様にはならないということになります。つまり、感傷的または名前的には「ユナイテッドステート(アメリカ)が日本に買収された」ということになります。
そして「アメリカの大衆」は、そのような合理的な解釈をできるものではありません。昭和30年代に、力道山がアメリカのプロレスラーを「空手チョップ」で倒していて、多くの日本人が「大戦で負けた日本が、アメリカを倒していする形に熱狂した」ということを考えれば、アメリカの大衆も同じようになっておかしくないということになります。
つまり「自分たちの象徴が買収される」という感覚です。この雰囲気に推されたのが、大統領選挙中の民衆に対して、「アメリカが日本に買収される」として支持を取り付けようとしたということがあげられることになります。要するに、トランプ候補も、ハリス候補も、双方ともに選挙中の言説として反対をしているということになります。
しかし、バイデン大統領だけは、そもそも選挙戦から撤退していたので、そのような選挙言説ではないということになります。そしてそのとおり行ったということになります。それが二つ目の理由ということです。。
二つ目には「アメリカ国内の政治的な力学」ということになります。アメリカにも「経営者側=共和党」と「労働組合側=民主党」というような政治的な対立があります。雇用者と被雇用者ですから、当然に対立関係にあり、それを票田とした正当が出ます。バイデン大統領は、当然に民主党ですので、労働組合側ということになります。
労働組合側とすれば、「製鉄業に日本が入ってくれば、他のアメリカ製鉄業も圧迫される」ということになります。
要するに、他の製鉄業も圧迫されるということになります。
しかしこの考え方には問題があるということになるでしょう。そもそも「中国の鉄鋼ダンピング商品」が入ってくることによって、アメリカの鉄鋼業が経営不振になっているということであり、そもそもの敵は中国であるということになります。
その様に考えれば、バイデン大統領が日本製鉄による買収を単なる感傷で反対するように誘導するということは、当然に中国の製鉄業を手助けするということになります。USスチールのXの投稿で「中国共産党のトップが小躍りして喜んでいる」というのはその通りということになるのです。要するに、「共和党と民主党の支持獲得の戦い」と、「アメリカが日本に買収されるという感傷」が主な理由であるということになります。
もちろん、アメリカの製鉄会社が買収するなどの案を推進すべきということになりますが、今まで通りのアメリカ的な経営方針を貫いていれば、当然に、中国に撒けてしまうということになってしまいます。そのことを理性的に考えるだけの余裕が、今のアメリカはないということになるのです。
信用されていない石破内閣
さて、本来このような問題で「中止命令」がバイデン大統領から出されたということになります。つまり、経済合理性も市場の内容も全く関係ないということになります。政治において、感傷で物事を判断するほど愚かなことはありません。当然に、日本は「論理性」でしっかりと反論すべきでしょう。
日清戦争時、日本の軍艦浪速の艦長東郷平八郎は、清軍兵を輸送するイギリス国籍の高陞号を警告したうえで撃沈します。いわゆる高陞号事件です。この時も「日本はイギリスを攻撃した」という感傷的な問題がロンドンで行われましたが、国際法上問題がないことを確認し、その騒ぎは収まりました。
つまり、「感傷的」な反論は、常に「合理的および論理的であり、法的に正しい」という内容で沈静化を図ることができます。バイデン大統領はそのようにならないように「安全保障上の問題」ということを言っております。この発言が、一つはアメリカ国民がこの理由を話すことによって買収の中止が納得できるということを意味しています。
要するに「真実かどうか」ではなく、「何を言えばアメリカ国民が納得できるか」ということになる。要するに、少なくともバイデン大統領は「日本がアメリカ企業を買収することは安全保障上の問題がある」ということで、政治が経済行為に介入することを是認したということになるのです。要するに「日本がアメリカ企業を買収することは、中国が買収することと等しい」ということを言っているのと同じです。
さて、経済行為に対して政治が介入しているのですから、当然に日本も政治が介入すべきです。しかし、石破内閣は外務大臣や経済産業大臣の派遣もなく、また、石破首相がバイデン大統領と直接話すこともない。石破首相がマスコミを使って不当であると話しただけです。それでは交渉をしたことになっていません。
さて、このことでわかるのは何でしょうか。一つ目は石破内閣は「国家間の大規模買収に関して、すでに昨年夏の次点で買収の中止議論が出ていたにもかかわらず、何の政治的な調整もしていない」ということです。
もともと石破首相は、根回しなどはしないところですが、外交の席でそのようなことはありません。国内で、根回しなどはなく議会で議論すればよいなどといっても国際社会では、そのような詭弁何の役にも立たないのです。要するに、国内の陳腐な正義感と建前論で、外交的な優位性や経済的な優位性を考えないということです。
二つ目は、少なくともバイデン大統領からも、石破内閣は「安全保障上危険である」と判断されているということになります。実際に、岸田内閣の頃から中国に近しい関係であるということを言われていました。また、今回の石破内閣の外交も、中国が中心でありアメリカとの公式な外交はありません。
要するに「石破内閣は中国に近しい内閣」であるというような感覚を思います。このことに関しても、アメリカとの外交を...
歌手の宇多田ヒカルさんが2025年1月13日、Xでロンドンでのエピソードを明かし注目を集めている。
英王室のキャサリン皇太子妃(43)が14日、英ロンドンにあるロイヤル・マースデン病院を訪問し、そこでがんの治療を受けていたことを明かした。 約1年ぶりに単身で公の場に姿を見せたキャサリン皇太子妃は、過去12カ月間に渡って同病院で「並外れ…
英国に本拠を置く環境活動家団体「ジャスト・ストップ・オイル」は13日、「進化論」で知られる博物学者チャールズ・ダーウィンのロンドンの墓石に、団体の支持者がスプレーで文字を書いたと発表した。化石燃料か…
お笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんが2025年1月10日、トヨタイムズのレポーターを務める元テレビ朝日アナウンサーの富川悠太さんとラリー初挑戦に関するトークショーを行いました。
ト