秋田県食品衛生協会(阿部恭子会長)は9日、気温の高い日が続き食中毒の発生が懸念されるとして、今年初めての食中毒警報を県内全域に発令した。 発令基準は、前日の最高気温が32度以上で、当日も30度以上が…
千葉県は7日、県内の最高気温が30度以上の真夏日が3日連続で続いたことから、食中毒警報を発令した。2022年の6月29日に続く過去2番目の早さでの発令となり、県衛生指導課の担当者は「細菌が増えやすい
千葉市は4日、同市若葉区高品町の仕出し弁当店「ケーエムフーズ」の日替わり弁当などを食べた20代~50代の男女15人が下痢や吐き気の症状を訴え、12人の便から「サポウイルス」が検出されたと発表した。同
1日の北海道は、十勝地方を中心に厳しい暑さとなりました。2025年07月01日(火) 16時40分 更新
過敏性腸症候群は一般には、食事をとると急にお腹が痛くなることで知られる「よくある」症状です。
これまでストレスや不摂生が引き起こすのではないかと言われてきましたが、詳しいメカニズムは最近までよくわかっていませんでした。
しかし2021年1月13日に『Nature』に掲載された論文によって、生物学的・医学的な原因が解明されました。
いったい何が、私たちのお腹をゴロゴロさせ、トイレに駆け込ませてきたのでしょうか?
その原因は誤作動を起こしてしまった「ポンコツ免疫」のせいでした。
目次
長年原因不明だった「過敏性腸症候群」原因不明の要因は論理パズルの落とし穴だった全てはポンコツ免疫の誤った学習のせいだった過敏性腸症候群を防ぐには抗ヒスタミン薬が重要
長年原因不明だった「過敏性腸症候群」
過敏性腸症候群の原因はずっと不明だった / Credit:Canva
過敏性腸症候群は5人に1人が経験するという、非常にありふれた症状です。
その始まりは普段の何気ない食事から。
食事をとってすぐに、急にお腹がゴロゴロしはじめ、トイレに駆け込みたい衝動にかられます。
原因は一般的に、睡眠不足やストレス、栄養の偏りなどと言われていました。
しかし睡眠不足もストレスもなく、栄養学的に完璧な食事をとっていても過敏性腸症候群は発症します。
なかにはリンゴとチーズを食べた時だけに発症するという、奇妙なケースも
...more存在したとのこと。
そのため、過敏性腸症候群をめぐっては、怪しい療法や意味不明な食事制限を推奨する確証のない医学がはびこる事態になっています。
しかし残念ながら、それらニセ医学を完璧に否定することもできませんでした。
誰も生物学的・医学的な原因を知らなかったからです。
原因不明の要因は論理パズルの落とし穴だった
図は必要十分条件を表したもの。人類が陥っていた論理パズルは落とし穴はこの図よりもずっと簡単なものだった / Credit:wikipedia
通常、病気の原因は限られています。
複数ある場合でも、互いに矛盾しないことが求められます。
例えば酷い下痢になったとき。
原因1が「牛乳を飲んだせい」で原因2が「牛乳を飲まなかったせい」
であってはダメです。
原因1と2が互いに互いを否定するからです。
そんなのは当たり前だと思われるかもしれませんが、まさにそこが落とし穴でした。
発見の契機となったのは、過敏性腸症候群を起こした患者から集められた大量の糞便でした。
研究者がこれら糞便を詳細に分析した結果、サルモネラ菌をはじめとした病原体が多数、確認されたのです。
ただ、やはり全てではありませんでした。
何人かの患者の糞便は非常にクリーンであり、病原体とは無縁だったのです。
糞便の含まれる菌の有無を病気の原因とするには、クリーンな糞便をもった患者の存在はあってはなりません。原因が否定されてしまいます。
しかしベルギーの腸神経免疫相互作用研究所のハビエル・アギレラ-リザラガ氏は、この単純な論理パズルこそが、原因不明とされている最大の要因であると考えました。
そして、2つを(病原体を含む糞便とクリーンな糞便)合わせて、どちらも原因として失わないで済む新しい仮説を考え付きました。
全てはポンコツ免疫の誤った学習のせいだった
過敏性腸症候群はポンコツ免疫が原因だった / Credit:Canva
免疫は優れたシステムですが、時には役に立たなくなります。
新型コロナウイルスにおいても免疫の過剰反応が重症化の原因とされている事例が有名。
これは本来私たちを守るべき免疫が誤作動を起こしてしまっている状態と言えるでしょう。
アギレラ‐リザラガ氏はこの免疫の誤作動が「過敏性腸症候群」でも起きているのではないか? と仮説を立てました。
そしてその仮説を証明するために、食中毒を起こすバクテリアをマウスに感染させ、同時に卵に含まれるタンパク質(オボアルブミン)を食べさせました。
オボアルブミンはマウスにとっては非常にありふれたタンパク質であり、通常ならばなんの健康被害をもたらしません。
時間が経過すると、マウスは食中毒から回復し、糞便からもバクテリアが消えました。
次にアギレラ‐リザラガ氏は再度、卵のタンパク質(オボアルブミン)だけを与えます。
すると興味深いことに、マウスの体にはもうバクテリアが存在しないにもかかわらず、まるで食中毒をおこしたかのように、免疫系が活性化したのです。
この結果は、バクテリアに感染したマウスの免疫が、感染時に一緒に食べた無罪の卵のタンパク質(オボアルブミン)も、敵として認定してしまっていることを意味します。
免疫は一度感染した相手を記憶することで二度目の感染を防ぎますが、一度目の学習時に誤作動を起こすと、病原体だけでなく、そのとき一緒に食べていた食事までもまとめて「敵」として学習していました。
そしてこれら安全な食べ物(卵のタンパク質)が体内に入ると、免疫システムを作動させ、脂肪細胞からヒスタミンを分泌させ、防御システムの一種である、炎症を誘発させていたのです。
このとき分泌されるヒスタミンは腸のニューロンを非常に敏感にすることが知られており、常識の範囲内の量である腸内の食事の存在や消化にかかわる腸自体の運動をも「痛み」として知覚してしまうのです。
アギレラ‐リザラガ氏が遺伝的に脂肪細胞をもたないマウス(つまりヒスタミンも分泌されない)で同様の実験を行った結果、マウスは痛みの反応を示しませんでした。
同じ結果は、人間のボランティアを用いた実験でも得られたとのこと。
過敏性腸症候群に苦しむ患者から、よく腹痛を起こす食べ物(大豆や牛乳など患者によって違う)の成分を抽出し、腸壁に注射した結果、注射された場所だけにヒスタミンを原因とした「超小規模」な過敏性腸症候群が起こったことが確認されたのです。
過敏性腸症候群を防ぐには抗ヒスタミン薬が重要
過敏性腸症候群に対しては抗ヒスタミン薬の効果が期待できる / Credit:Canva
今回の研究により、長年謎だった「過敏性腸症候群」の原因が、ポンコツ状態になった細胞の「間違った学習」が引き起こした誤作動だったことが示されました。
またこの結果から、ヒスタミンの分泌を防ぐ効果がある抗ヒスタミン薬が過敏性腸症候群に効くことが示唆されました。
研究者たちは今後、伝統的に言われてきたストレスや睡眠不足といった要因が、ヒスタミン分泌と関係があるかどうかを調べていくとのこと。
ストレスや睡眠不足がヒスタミン分泌につながる場合、間接的ではあるものの、古くから言われてきた原因が再評価されることになるでしょう。
また、現在深刻な過敏性腸症候群に苦しんでいるなら、腹痛を起こしているときに食べたものをメモすると良いかもしれません。
原因となっている食材をあぶり出すことができるでしょう。
もしかしたら、意外な食べ物が過敏性腸症候群を引き起こしているかもしれませんね。
全ての画像を見る参考文献Scientists May Have Finally Found a Key Mechanism Behind Irritable Bowel Syndromehttps://www.sciencealert.com/researchers-have-sussed-out-a-driving-mechanism-behind-irritable-bowel-syndrome元論文Local immune response to food antigens drives meal-induced abdominal painhttps://doi.org/10.1038/s41586-020-03118-2ライター川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。編集者ナゾロジー 編集部...