世界的に注目を集めるロボット研究機関RAI Instituteが、またしてもロボティクスの未来を感じさせる映像を公開しました。
今回の主役は、同研究所が開発した自律型の自転車ロボット「UMV(Ultra Mobility Vehicle)」。
ジャンプ、旋回、バランス保持など、まるで人間が乗って操っているかのような運動能力を披露する動画に、技術者だけでなく一般視聴者からも驚きと賞賛の声が寄せられています。
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RAI Instituteが開発する自転車ロボット「UMV」神業!自転車ロボットが「宙返り」を披露!
RAI Instituteが開発する自転車ロボット「UMV」
RAI Institute(旧AI Institute)は、米国マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするAIとロボティクスに特化した研究機関です。
2023年12月にはスイス・チューリッヒにも研究拠点を開設し、ETHチューリッヒのマルコ・フッター(Marco Hutter)氏を中心としたヨーロッパチームが参加しています。
そしてRAI Instituteが開発を進めるロボットの1つがUMV(Ultra Mobility Vehicle)です。
In this demo, Ultra Mobile Vehicle (UMV) drives, turns, jumps, tricks, and comes ...moreto a sudden stop called a track-stand. All of the driving, landings, balance, and track-stands are done using reinforcement learning. pic.twitter.com/p2tpOImVyY
— RAI Institute (@rai_inst) February 27, 2025
UMVは、まるで自転車のようなフォルムを持ちながら、ジャンプしたり、細かなバランス制御でトリックを決めたりする自律走行ロボットです。
RAI Instituteは、このUMVに強化学習(Reinforcement Learning)を用いて複雑な動作を習得させ、まるで熟練のBMXライダーのような動きすら可能にしました。
特に注目を集めたのは、ジャンプ後に姿勢を崩すことなく静止する「トラックスタンド」や、障害物を軽々と飛び越える動作です。
これらは単なるプログラム動作ではなく、環境に応じて適応する高度な運動知能の成果です。
このUMVの能力には驚かされますが、最近UMVは、私たちをさらに驚かせる「神業」を披露しました。
神業!自転車ロボットが「宙返り」を披露!
2025年4月17日RAI Instituteは、UMVが宙返りし、着地後もそのまま安定して走行する動画を投稿しました。
New tricks loading … pic.twitter.com/AK83xTDjAu
— RAI Institute (@rai_inst) April 17, 2025
人間でも難しい業を、無人のロボットでいとも簡単に行ってしまったのです。
この動画を見た人々はその技術力の高さに驚嘆し、大きな盛り上がりを見せています。
そしてもちろん、RAI Instituteが注力しているのは単なる技術デモではありません。
同研究所は、ロボットが「退屈で、汚く、危険」な作業を人間に代わって行うことを目指し、ロボティクスとAIの本質的な融合に取り組んでいます。
マルコ・フッター氏は、インタビューで次のように語っています。
「我々は、ハードウェア、制御、知能のすべてが密接に連携する設計を目指しています。
最も難しい現実世界の課題に挑戦するには、この一体化が不可欠です」
今回のUMVの高度な業は、まさしく「様々な要素が密接な連携した結果」だと言えるでしょう。
それらの技術が、実際に人間を助けるロボットに導入されることを考えると、そんな未来が実現する時を待ち遠しく感じます。
全ての画像を見る参考文献Marco Hutter Wants to Solve Robotics’ Hard Problems The AI Institute’s new Zurich head will focus on reliable, mobile robotshttps://spectrum.ieee.org/marco-hutter-ai-instituteStunting with Reinforcement Learninghttps://rai-inst.com/resources/videos/stunting-with-reinforcement-learning/New tricks loading …https://www.youtube.com/shorts/H_8n9MM580gライター大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。編集者ナゾロジー 編集部...
約4万年前にネアンデルタール人が絶滅してしまったのは「日焼け」のせいだったのかもしれません。
そしてホモ・サピエンスが生き残ったのは「日焼け止め」を開発できたおかげかもしれません。
米ミシガン大学(University of Michigan)の研究チームはこのほど、約4万1千年前に起きた地磁気異常「ラシャンプ地磁気エクスカーション」により、地球の磁場が急激に弱まっていたことを明らかにしました。
この時期、宇宙からの有害な紫外線が地上に大量に降り注ぎ、これにどう対応したかが、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の命運を分けた可能性があるようです。
研究の詳細は2025年4月16日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。
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4万年前に発生した磁場の異常現象ネアンデルタール人は「日焼け」で絶滅した?
4万年前に発生した磁場の異常現象
地球は「磁場」という見えない磁力のバリアに包まれています。
この磁場は、地球の外核を流れる溶けた金属によって作られ、宇宙から飛来する太陽風や宇宙線といった高エネルギー粒子を遮る「磁気シールド」のような役割を果たしています。
しかし、この磁場は常に安定しているわけではありません。
地質学的な時間スケールで見ると、磁場の向きが逆転したり、一時的に弱まったりすることがあります。
その一例が「ラシャンプ地磁気エクスカーション」...moreです。
これは今から約4万1千年前に起きた現象で、研究チームの新たな調査によると、地球の磁場が現在の10%程度にまで弱まり、磁極の位置も大きくずれていたことがわかりました。
A:現代の磁気シールド、B〜F:ラシャンプ地磁気エクスカーションが起きた頃の磁気シールド/ Credit: University of Michigan – Sunscreen, clothes and caves may have helped Homo sapiens survive 41,000 years ago(2025)
この期間はおよそ2000年続き、最も磁場が弱まったピーク時には、地上に降り注ぐ紫外線や宇宙線の量が大幅に増加していたと考えられます。
そして最新の3D磁気圏モデル解析によると、この時期のオーロラは現在よりもはるかに広範囲に出現しており、北アフリカやオーストラリアにまで達していた可能性があります。
この現象はつまり、それだけ強い宇宙線が低緯度まで届いていたことを意味するのです。
ネアンデルタール人は「日焼け」で絶滅した?
この過酷な時代に、2種のヒト属がヨーロッパで共存していました。
一方はホモ・サピエンス(現生人類)、もう一方はネアンデルタール人です。
しかし約4万年前、ネアンデルタール人は突然姿を消しました。
その原因は完全に解明されていませんでしたが、今回の調査から、急激に強まった紫外線に対応できなかったことが大きな要因だった可能性が浮上しています。
実はホモ・サピエンスは、ちょうどこの時期から「仕立てられた衣服」を作り始めていたことがわかっています。
これにより肌の露出を避けて、紫外線から身を守ることができるようになりました。
さらに彼らは「オーカー(黄土)」と呼ばれる鉄を含む赤い顔料を肌に塗る習慣を発明したことが知られています。
近年の研究では、このオーカーに紫外線を遮る効果があることが実験的に示されており、現生人類は「服」と「日焼け止め」のダブルで紫外線から身を守ることができたと考えられるのです。
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
対してネアンデルタール人は、単純な布を巻き付けるような簡素な衣服しか持っておらず、加えて、日焼け止めのような対策も行っていませんでした。
その結果、紫外線による皮膚がん、視力障害、葉酸(ビタミンBの一種)の欠乏による出生異常など、健康被害が多発し、集団維持が困難になった可能性があるのです。
このようにしてホモ・サピエンスとネアンデルタール人の間に、生存率の大きな差が生まれたと予想されています。
今回の調査報告は、紫外線が強まった時期とネアンデルタール人が滅んだ時期が一致することからの相関関係を示したものであり、この説を正しいものとして証明するためには、さらなる調査が必要となるでしょう。
また現代に同様の地磁気エクスカーションが起これば、私たちの生活もただでは済みません。
通信衛星の障害、GPSや航空ナビゲーションの不具合、電力インフラへの影響、さらには宇宙飛行士への被ばくリスクも増大します。
今後も地磁気の傾きや強度変化は続くと予想されており、私たちもまた「科学技術という衣服」で紫外線から身を守る時代に備える必要があるのかもしれません。
全ての画像を見る参考文献Sunscreen, clothes and caves may have helped Homo sapiens survive 41,000 years agohttps://news.umich.edu/sunscreen-clothes-and-caves-may-have-helped-homo-sapiens-survive-41000-years-ago/#:~:text=Ancient%20Homo%20sapiens%20may%20have,Europe%20from%20harmful%20solar%20radiationSunscreen, Clothing and Caves May Have Given Modern Humans an Edge Over Neanderthals When Earth’s Magnetic Field Wanderedhttps://www.smithsonianmag.com/smart-news/sunscreen-clothing-and-caves-may-have-given-modern-humans-an-edge-over-neanderthals-when-earths-magnetic-field-wandered-180986462/元論文Wandering of the auroral oval 41,000 years agohttps://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adq7275ライター千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。編集者ナゾロジー 編集部...