ショッキングな事件の裏にある社会の歪みを浮かび上がらせ、深い余韻を残す無二の作風。ウチヤマユージさんのマンガを、ずっと紹介したかった。最新刊『もろびとこぞりて』も期待を裏切らない衝撃作!エスカレートする加害者バッシング。正義の欺瞞を暴く令和版「罪と罰」。「もともと実在の事件などをモチーフにした作品も描くので、事件ルポなどをよく読みます。ただ、何が起きたかや犯罪者自身については扱われても、周りの家族に目を向けたものは少ない印象があって。加害者家族はその後どんなふうに生きているのか、以前から興味がありました」描かれるのは、加害者家族をめぐる、市井の人々の悪意の暴走と、再生への希望だ。実社会でもSNSでも、加害者のみならずその家族や友人、同情を示した人にまで容赦ないバッシングが起こるのは見慣れた光景。だが、その際限のなさを含めフィクションとして眺めると、大義名分を振りかざした“ふつうの人”の愚かさがはっきりと伝わってくる。「人生のいろいろで少し認識が狂ってしまった、という感じの人たちを描くのが好きなんです。もちろん本人にとってはおかしくなっている意識があまりない。何かの劇的なきっかけでその人が急に変わるわけではなくて、少しずつ曲がった方向に誘導されていくのではないかなと。認知の歪みではなく、認知が曲がる感じを、淡々と描いていきたいという思いは昔からあります」前半は重苦しい場面が続くが、驚
...more きの展開が待っている。何より、いじめられっ子の海藤亮介と転校生・大島真琴とのボーイ・ミーツ・ガールは甘酸っぱく、一筋の光となる。映画監督志望だったというウチヤマさんのマンガは、実際、一本のショートフィルムを観るようだ。「北野(武)映画や、コマ割りは小津安二郎のカメラワークに影響されているかもしれません。本書も、着想のきっかけのひとつが岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』なんですが、自分でも、初めに考えたこととはどうも違ってしまった気がするなと思うんですけれど(笑)」ウチヤマさんは、連載でもすべて最初に完成させてしまい、それを分割で提出するやり方なのだそう。「ハマってしまったパズルは動かせない」と言うが、それくらい完成度が高いのだともいえる。サスペンスフルなメインストーリーに加え、セクハラ、ネグレクト、DVなど、簡潔に描かれたコマで裏側にある世界まで連想させる凄み。他の作品もぜひ手に取ってみて。『もろびとこぞりて』 クリスマス・イブに起きた新宿駅無差別殺傷事件。町田市から越してきた一家が、その加害者家族ではないかと噂に…。正義が凶器になる怖さ。日本文芸社 792円 ©ウチヤマユージ/日本文芸社ウチヤマユージ マンガ家、個人サークル「キツネツカ」主宰。「コミティア」等で活動を始め、2013年、『夏の十字架』で商業デビュー。他の著作に『よろこびのうた』など。※『anan』2023年6月7日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)https://ananweb.jp/news/487316/
マンガやドラマで話題となった「ゆるキャン△」。その中で主人公の相棒として活躍し、ケナゲでかわいいセリフも印象的だった原付スクーターは、ヤマハ発動機の「Vino(ビーノ)」がモデルとなっています。街中でもよく走っているのを見かけるはずです。今やスクーター界の人気者となった「Vino」ですが、人気の秘密はやはりレトロポップなルックスでしょう。現在は三代目となった「Vino」の歴史を振り返りつつ、そのデザインの魅力に迫ります。
日本人向けの海賊版マンガ作品リンク集として最大だった「13DL」が閉鎖。米国裁判所から発信者情報開示命令が出ていた。
“マンガ原作者の仕事”にスポットを当て、なぜマンガ原作者という仕事を選んだのか、どんな理由でマンガの原作を手がけることになったのか、実際どのようにマンガ制作に関わっているのかといった疑問に、現在活躍中のマンガ原作者に答えてもらう当コラム。原作者として彼らが手がけたプロット・ネームと完成原稿を比較し、“マンガ原作者の仕事”の奥深さに迫る。第8回には「マイルノビッチ」「モジコイネネコイ」などで知られる佐藤ざくりが登場。これまでさまざまな少女マンガを発表してきた佐藤が、「彼女が可愛すぎて奪えない」の吉田夢美とタッグを組んでスタートさせたのがマーガレット(集英社)で連載中の「四畳半のいばら姫」だ。初めてマンガ原作に挑む佐藤の制作の裏側と、そこから感じたことに迫った。