小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第5回目のテーマは「乗り継ぎへの全力疾走」です。子供の頃、よく“全力疾走”したものだ。公園で、運動場で、河川敷の堤防で。何かを追いかけていたのか? 何かに追われていたのか? 誰かと競争していたのか? それとも、外の世界へ飛び出そうとしていたのか? ただ走るのが楽しかった。あれから50年。日常生活で走ることはなくなった。年齢的に“全力疾走”はやめた方がいいとインストラクターにも注意されている。6月末、セルビアでの撮影を終えて帰国する為、ベオグラード空港にチェックインした。東京までの直行便はない。フランクフルトで羽田行きの便に乗り継ぐ。乗り継ぎには2時間の余裕を取っていた。ラウンジで仕事の成功を祝う乾杯をしながら出発を待っていると、「フランクフルト行きの便が遅延」との案内。2時間近くもの遅れだ。航空会社に相談してみたものの、ギリギリ間に合うかどうか? とのこと。遅れると帰国便はもうない。案の定、2時間遅れでフランクフルトに到着する。真っ先にボーディング・ブリッジを駆け抜け、ターミナルビルに! そのつもりだったが、なんと、出口から伸びていたのは、地上へのタラップ?! しかも待機していたのは、数台連結のバス! 乗客全員が乗り込
...moreむまでバスは出発しない! さらにバスが送り届けてくれたのは、隣のターミナルのA! 乗り継ぎ便が待つのはターミナルのB! これはまずい! そう思った時、出口で「TOKYO」のプラカードを持った空港職員の40代くらいのドイツ人女性を発見!「20分以内でゲートに着かないと乗り遅れます! 私について来てください!」と、女性はそう言って唐突に走り出した。「え? 走るの?!」。僕は大きなバッグを背負い直して、彼女を真似て“小走り”を始めた。裏道をショートカットすると思いきや、そうではなかった。彼女は正規のルートを、一定のスピードを保ったまま進んでいく。走り慣れていない僕には、“小走り”さえもきつい。ただ乗り継ぎには、出入国管理場(パスポート・コントロール)は通過しない。それで時間が稼げる?! だがそこはトラムのホーム。どうやら、隣のターミナルまでトラムで移動するらしい。彼女は冷静沈着に、「あと10分!」と航空会社と無線連絡を交わしている。しかし、当のトラムはなかなか来ない。筋肉だけではなく、胃まで痛くなる。到着したトラムに駆け込み、ターミナルBで降りる。セキュリティ・チェックが待っていたが、問題なく通過。あの空港職員がいない! 見失った?! と、彼女が廊下の向こうで手を振っている。ゲートはまだまだ先! 停止している空港内の電動カートを尻目に、また“小走り”を再開する。今いるのは10番ゲート、目指すのは42番ゲート?! 随分と先だ。彼女は、ペースを崩さず進んでいく。驚くべき体力。僕には、このラストスパートは辛かった。諦めてもいい? そんな弱音が一瞬、頭を過(よぎ)った。なんとか搭乗ゲートに到着。ヘロヘロになりながらも、ゴールイン。乗客がいなくなったゲートでチケットを見せる。航空会社のCAは「荷物は間に合わないかも知れません」。あの女性を探したが、“小走り”の天使の姿はもうなかった。お礼は伝えられなかった。彼女は幻だったのか。結局、離陸機が混雑していたとのことで、1時間以上遅れての離陸となった。おかげで絶望視していた荷物の積み込みも完了。本当にあそこまで走り続ける必要が、あったのだろうか。空港での乗り継ぎには、リスクが付き纏う。乗り遅れたり、荷物がなくなったり、スーツケースが壊れたり。なるべくなら、直行便が安心だ。でも、長い人生には、乗り継ぎや乗り越しは、必然。7年前、僕は大きな“乗り継ぎ”、いや、“乗り換え”を行った。30数年間勤めた会社を去り、自分の機体となる“コジプロ”を創った。僕が“全力疾走”していたのは、乗り継ぎの為ではなかった。“物創り”という大きな目的地に向けての“全力疾走”だったのだ。僕はもう機体を乗り換えない。同じ機体(スタジオ)で給油と乗組員(スタッフ)の交代をしながら飛び続ける。僕の新たな冒険はノンストップ便だ。だから、この旅は“トランスファー(注1)”ではなく、“トランジット(注2)”だ。もう自分の機体も、目的地も、変えるつもりはない。この機体で“全力疾走”を続ける。いま、僕は再び“乗り継ぎ”の危機に直面したフランクフルト空港にいる。ベオグラードからの便が、機材の遅延と雷の影響で離陸が大幅に遅れた為だ。ヨロヨロと迎えに来たバスに乗り込み、時計を確認する。出発時刻まで僅か10分! 前回よりもシビアな状況だ。他の乗客たちも殺気立っている。乗り継げるかどうか? “全力疾走”が試される。注1:トランスファー 目的地へ向かう途中の空港で飛行機から降り、最終目的地へ向かう別の飛行機へと乗り換えること。注2:トランジット 目的地へ向かう途中の空港にいったん着陸し、燃料の補給や清掃、クルーの入れ替えを行い、再び同じ飛行機で最終目的地へ向かうこと。今月のCulture Favoriteフランクフルト空港での全力疾走の乗り継ぎの様子。映画『NOPE/ノープ』などで知られるジョーダン・ピール監督、ホイテ・ヴァン・ホイテマ撮影監督と、お揃いの上着で記念撮影。今年12月日本公開予定のホラー映画『Talk to Me』を監督した、フィリッポウ兄弟と。こじま・ひでお 1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS』の予告編が、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2368号(10月11日発売)です。※『anan』2023年9月20日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)https://ananweb.jp/news/505309/...
モモアの笑顔がまた光る
映画『アクアマン』の続編となるDC最新作『アクアマン/失われた王国』が、2024年1月に日本公開される。
超ときめき♡宣伝部が11月17日に日本公開されるシンガポール発のロボットバトル映画「HEAVENS -THE BOY AND HIS ROBOT-」(邦題「メカバース:少年とロボット」)の“グローバル主題歌”を担当することが発表された。
ハワイ在住の国際派俳優平岳大(ひら・たけひろ=9)が14日、TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食/一直線」(月~金曜午前5時)に電話出演した。 15日日本公開予定のハリウッド映画「グランツーリスモ」は、8月25日に全米公開され興行収入…
君たちはどう生きるか(2023)【もっと読む】ジブリの新作『君たちはどう生きるか』今日公開って知ってた?ほとんど宣伝しない理由とは…宮崎駿監督のスタジオジブリ新作「君たちはどう生きるか」の海外版ティザー予告が9月7日に公開された。日本で7月14日に上映が始まったこの作品。MANTANWEBによると、動員517万人、興収77億円を突破する根強い人気を誇っている。12月8日からはアメリカで順次公開される予定だ。日本映画の海外上映や、海外映画の日本上映の際、その国の言語に合わせたタイトルがつけられることも多い。また日本公開時に英題がついている作品もあるだろう。 「君たちはどう生きるか」は、英語で何というタイトルが付けられたのだろうか。スタジオジブリや配給会社の公式サイトを見ると、この映画は「The Boy and the Heron」と名付けられている。これをあえて日本語に直訳すると「少年とアオサギ」。作品に出てくる登場キャラクターを並べた形だ。過去のジブリ作品も、同様に英語のタイトルなどがつけられている。 いくつか見ていこう。 千と千尋の神隠し→Spirited Away(直訳:神隠し)思い出のマーニー→When Marnie Was There(直訳:マーニーがそこにいた時)風立ちぬ→The Wind Rises(直訳:風が立つ)ハウルの動く城→Howl’s Moving Castl
...moree(直訳:ハウルの動く城) 今回「君たちはどう生きるか」の北米配給権を担うGKIDS Filmsの CEO・デヴィッド・ジェステッドは、アメリカでの作品公開についてVarietyの取材に答えている。 「『千と千尋の神隠し』でのアカデミー賞受賞や、2度のアカデミー賞ノミネートからも明らかなように、宮崎監督は映画製作における『生きる伝説』です」「GKIDSは、宮崎監督の10年ぶりになる最新作を北米でお披露目できることを誇りに思います」Related...ラピュタの「目玉焼きパン」、ドーラの肉厚ハムも。“ジブリ飯”のレシピ本で憧れの料理が再現できちゃう木村拓哉さん、「しばらく待ち受け」にした巨匠とのツーショット公開「普段からエプロンされているんですね」山時聡真(さんとき そうま)さんとは誰? ジブリ新作「君たちはどう生きるか」で主人公の声優。これまでの出演作は?...クリックして全文を読む