【音楽通信】第138回目に登場するのは、シンガーソングライターとしての活動が7年目を迎え、20代最後となるニューアルバムをリリースする、山本彩さん!いろんなシチュエーションに合う楽曲が揃うアルバム【音楽通信】vol.138コンスタントに作品を発表し、ライブ活動も展開してきたシンガーソングライターの山本彩さん。最近では、バラエティ番組などでも元気な姿を届けています。そんな山本さんが、2023年5月17日に4thアルバム『&(アンド)』をリリースされるということで、お話をうかがいました。――前回、2020年10月にこのananwebで取材させていただきましたが、シンガーソングライターとして活動されてから今年で7年目となりますね。昨今は少し休養されたり、個人事務所を設立されたり、いろいろと整えられて。最近はバラエティ番組でもご活躍で、リフレッシュされてパワーアップされたように感じます。休養させていただいた際は歌っていなかった期間も長かったので、そのブランクを取り戻すのと、休む前よりは良い状態で今後も続けていきたいので、また一から歌のトレーニングや勉強をしました。まだ進化した感じはしないのですが、少しずつ自分のベストがわかってきて。あとは、もともとすぐ考え込んでしまうタイプだったのですが、いまはだいぶん気楽に物事をとらえられるようになりました。――2023年5月17日には、4枚目となるアル...moreバム『&』をリリースされます。いつ頃からアルバム制作を始めていたのですか。一昨年から、アルバムを作ろうという話をしていました。新曲「劣等感」と「Bring it on」の2曲を収録しているのですが、まず「劣等感」を途中まで作り始めながらも完成はせず。休養のタイミングで一度制作を中断して、復帰してから「劣等感」を仕上げて、復帰後に「Bring it on」を書き終えました。――新曲は2曲とも山本さんが作詞と作曲を手掛けられていますね。そうです。「劣等感」は、もともと書きたい歌詞のテーマとしてあったんです。自分の中にある劣等感と戦っている葛藤みたいなものを描いていて、劣等感を抱きながらも自分が作られていく、戦っていく思いを込めた楽曲です。アレンジは(ボカロPやアレンジャーとして活動中の)100回嘔吐さんにお願いしたので、ギターロックとは違うテイストでのロックを表現できました。――もうひとつの新曲「Bring it on」はどのようなイメージで作っていかれたのですか。「劣等感」が“陰”の部分が強かったぶん、その反動もあってか、真逆の曲が書きたくなって。ツアーも決まっていたので、ツアーに向けて「やってやるぞ!」という気持ちも活かして“陽”なイメージで作りました。自分ならライブだったり、聴いてくださる方にとってはこれから挑んでいく何かだったり、そういったものに対して無敵にさせてくれるような強い曲になっています。――「Bring it on」のミュージックビデオもカッコいいですが、ライブでのパフォーマンスのことも考えながら作ったんですか。比較的、普段の自分のライブスタイルに近い形でミュージックビデオの撮影をさせていただきました。あとは、自分が楽屋で準備している状態から、ステージに上がっていくようなストーリーや背景をそのまま映像として出させていただきましたね。――あらためてアルバムタイトルの意味も教えてください。別人格ぐらいの楽曲ができたなと思うくらい、この新曲2曲だけでもすごく対照的なんです。ほかの収録曲に関しても、そのときどきで歌いたいことや考えも全然違う自分がいて、でもどれも全部あわせて自分ができているな、と。矛盾しているけれど両立してつながっているという意味を込めて、『&』というタイトルになりました。――1曲目「ドラマチックに乾杯」は、東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『その女、ジルバ』(2021年)主題歌の軽快でラテンな楽曲ですね。ドラマ主題歌のお話をいただいて、台本を読ませていただいてから、曲を書かせていただきました。主人公が自分とも重なるところがあって、うまくいかないときも、ちょっとした人との出会いや自分が輝けるような場所との出会いによって、そういう小さなきっかけの連続で人生が変わっていくということが、すごくわかる気がして。そこを書きたいなと思ったので書かせてもらいながら、台本の中で印象的だった場面をイメージしながら歌詞にさせていただきました。――主題歌などのタイアップ曲とそうではない曲では作り方も違いますが、意識するところも違う点はあるのでしょうか。タイアップ曲は、たとえばドラマなら観ていると感情移入はするので、まったく自分の思いではないわけでもないんです。なので、自分の思いと誰かの思いを背負って曲作りをしているという、特別感があります。ある意味、自分の思いをそのまま歌にするのは自分勝手でもいいんですが、タイアップ曲だとそうじゃない側面もありますね。歌うときも、自分の思いだけを込めてというよりも、そのドラマを観てくださっている方に思いを馳せながら歌っています。――4曲目「ぼくはおもちゃ」は、NHK『みんなのうた』のために、山本さんが作詞作曲された曲ですね。『みんなのうた』ということで、番組を観てくださる方も、親御さんから小さなお子さんまで年齢層が幅広いなと。お子さんの耳にも残るようなサウンドにしたいなと思って、おもちゃの音を入れたり、身近な音を入れたりしているんですが、歌詞は少し大人も考えさせられるような内容にしたくて。歌をリアルタイムで聴いてくれていた子が大人になったときに、「こういう歌詞だったんだ」とあらためて考えてくれるような曲になったらいいなと思って、子どもらしさと大人っぽさを混ぜ合わせた楽曲にしました。――7曲目「あいまって。」は、大人っぽくアンニュイな印象です。どちらかというと山本さんはロックな楽曲のイメージがありますが、この曲でまた違った表情を見せています。この曲は、作詞作曲ともに(プロデューサーでシンガーの)yonkeyさんと共作させていただいて、アレンジもしていただいて。歌詞は、本当に会話の延長という感じなんです。「こういう歌詞にしたい」「こんな単語を使いたい」というように、その場でラリーをして、そのままプロットを立てて、自然と楽曲ができていきました。歌についても、この曲自体がyonkeyさんの成分がけっこう強めの楽曲なので、言っていただいたような自分のロックな成分をほぼ消すぐらいの感覚で、レコーディングもやらせていただいて。ビブラートは全部なしでとか、こぶしもなしでとか、そういうふうにディレクションをしていただいたので、この曲に合わせた歌唱をしています。――多彩な楽曲が収録されていますが、とくに7曲目以降、曲調やニュアンスなど、山本さんの多様な表情がうかがえる曲順になっているように感じました。9曲目「ラメント」もまったく雰囲気の違う楽曲です。とくに「ラメント」はアルバムの中でもちょっとジャンルが違うような楽曲なので、アルバムを通して、この曲はキーになるなとは思っていて。それを考えたうえで、この位置になった感じですね。 ――聴き手にはどんな風にアルバムを聴いてほしいでしょうか。喜怒哀楽が詰まっているアルバムなので、いろいろなシチュエーションに寄り添える曲が集まっています。たとえば、やる気になりたいときは「Bring it on」を聴いてほしいですし、ちょっとまだ進むほどの気力はないけどもう少ししたら頑張りたいなというときは「愛なんていらない」とか「あいまって。」を、ゆっくり始めようかというときは「ゼロ ユニバース」をおすすめしたいですし。そういうタイミングごとにきっと力になれる曲があるんじゃないかなと思うので、いろんなシチュエーションで聴いていただきたいです。――アルバムのジャケ写は、山本さんが合わせ鏡のようになっていますね。アルバムのコンセプトとしてもあったんですが、どれも違うけれど自分という意味を込めての多様性や二面性を、衣装の違いや目線の有り無しで違いを出して、このジャケ写でもそれを表現しています。――6月からは「SAYAKA YAMAMOTO LIVE TOUR 2023 -&-」と題した全国ツアーを開催されますね。はい、1年半ぶりの全国ツアーでライブハウスをまわります。よりみなさんと距離が近いうえに、いま声出しも解禁されてきているので、ようやく本来のライブの形ができるかなと。さらに、今回はバンドでのライブ構成にしているので、バンドのライブに来た感じで楽しみにしていただきたいなと思っています。――アルバムはコロナ禍やお休みの期間を挟んで制作をされましたが、これまで...