ホワイトハウスの大統領執務室で繰り広げられた、米ウ両国の大統領による激しい口論。2国間の「交渉決裂」の模様は全世界に驚きを持って伝えられましたが、識者はこの展開をどう見ているのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「トランプ氏には人権も自由主義もない」とした上で、各国が彼との交渉に対応する方法を検討。さらに米ロの接近で苦しい立場に置かれることが予想される日本が、今後の国際社会においてどう振る舞うべきかについても考察しています。※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプとゼレンスキーの交渉失敗
計算ずくか衝動か。ゼレンスキーとの交渉を決裂させたトランプの行き着く先
トランプ氏は、世界にディールを仕掛けている。経済合理性に基づいた取引に世界は戸惑っている。トランプ氏はゼレンスキー大統領の求める安全保障なしで、レアアースを得ようとしたが、失敗した。トランプ氏には、人権も自由主義もない。トランプ氏との交渉に対応する方法を検討しよう。
NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、2024年12月4日45,014ドルの史上最高値更新、2025年2月21日は43,428ドルで、24日は33ドル高の43,461ドル、25日は159ドル高の43,621ドル、26日は188ドル安の43
...more,433ドル、27日は193ドル安の43,239ドル、28日は601ドル高の43,840ドル。
先週、株価は400ドルの上昇でした。いろいろな国に対して、関税を武器に外交取引を仕掛けている。この動きに市場は警戒し始めている。しかし、1月米PCEデフレーターが2.5%と安定していたことで、米長期金利の低下になり、28日は2日連続で下落した値ごろ感のある銘柄が買い戻された。
また、ゼレンスキー大統領との決裂も、トランプ氏は和平を強要することが示唆されるとして、買いになったという。本当に!
どちらにしても、ホワイトハウスからの発言が多く、それに市場が振り回されている状態のために、「全般的に不透明だとしか言いようがない」ともいう。
その証拠に、F&Gインデックスは、強い恐怖の20になっている。株価指数は大きく下落していないのに、恐怖度は高い状態である。
現状は、関税でインフレになる可能性もあり、また政府職員の大量解雇もあり、景気後退の可能性もあるし、スタグフレーションになる可能性もあるが、関税より、米国内企業の業績がよくなると見る向きもある。
2月雇用統計が出る3月7日は要注意であるが、それまでは市場の見方が揺れ動くことになりそうだ。
しかし、トランプ氏は、ソブリンファンドを立ち上げると表明し、株もビットコインも債権も買うという。株暴落局面で株を買うようである。ベッセント財務長官は、「バイデン政権の4年間の過剰支出の二日酔いが表れる。そして、6~12カ月でトランプ経済になる」と述べている。暴落時に買うことだ。
エヌビディアの決算は良かったが、利益率の伸びが縮小したことで、下落した。ハイテク・バブルの終焉になった可能性もある。
関税に関しては、3月4日から、カナダとメキシコに25%関税を施行し、中国には10%の追加関税になる。
3月12日には、鉄鋼とアルミ製品に25%の追加関税になる。そして、4月2日から全貿易国への相互関税を施行という。
しかし、貿易協定を締結すれば、英国には関税をかけないともトランプ氏は言う。
ロシアをも道具に使うかのようなトランプのディール
トランプ氏は、米国の得られる利益を大きくすることを考え、同盟国とか敵対国とかということを、あまり考えないようだ。
米国の国債の利払いが1兆ドルにもなり、他国から得られる米国の利益を最大化と、政府の支出を削減するしか米国の国家としての持続性が確保できないから、他国からの利潤を最大限にしようとしている。
この1つが、7.5億円のゴールドカードで永住権を買える高額商品を作り、税外収入を増そうとしている。
そして、米国に依存している国からの利得は、今まで無償で米国が与えていた利益に対する報酬という形にでき、利得を得やすい。
一方、敵対国は、米国から利益を得ていないことで、簡単には報酬を得られない。報酬を得ようとすると、米国も利得を与える必要がある。
このようなことで、同盟国には厳しく見えて、敵対国に優しく見えることになっている。
依存国からの多大な報酬を得るには、依存国に致命傷になりそうなことを言い、米国の与えていた利益に対する価値を上げる。ウクライナは現在一番、米国からの支援が必要であり、これでいかに高い報酬を得るのかというディールを行っている。
ロシア寄りの立場にして、大きなプレッシャーをゼレンスキー大統領に与えて、思い通りの結果したいようである。ロシアをディールの道具に使っているようにも見える。
ということでわかるが、依存している国をトランプ氏は狙っている。おそらく、次は台湾である。中国の台湾武力統一を認めるような立場にして、半導体産業を米国に移せというディールを行うとみる。
気兼ねなく台湾を取りにいくことが可能になる中国
中国に高関税などを掛けても、中国はそれ以上の関税や非関税障壁やグローバルサウス全体に対米貿易を阻害するような施策を打つことになる。敵対国は、すでに制裁がされていたり、米国の大統領にトランプ氏になるとの準備をして、米国への貿易を減らしていたりで、ディールの成功は難しい。
そして、米国は対中関税をさらに10%ト引き上げるとし、平均関税率は20%弱から40%弱に上昇することになる。しかし、中国は交渉を持ちかけるが、報復関税などで対抗する政策を打つ。
しかし、この中国への関税は、コモディティ製品価格の上昇になる。また、中国企業はASEAN諸国での生産にシフトしている。
中国は、米国からの貿易もなくなり、米国に気兼ねなく、台湾を取り西太平洋に出ていくことができるようになる。米国との対決を覚悟することができる。
米国はロシアを味方にして、中国包囲網を作るしかないことになる。西太平洋や豪州、ニュージーランドを守るために、米国だけでは、中国に負ける可能性があるからだ。勿論、日本も必要である。
しかし、トランプ氏は、戦争を起こすことは望まない。米国の今の財政で戦費が出せないので、中国とのディールを行うことになるが、良い結果にはならない。
米国の没落が確定するし、台湾も見殺しだ。日本と欧州でどうできるかだ。難しいことになる。
痛い目を見ることになる米国から無償で利得を得ていた国
敵対国の米国への報酬は少ないので、日本や欧州や台湾などの米国への依存がある国から報酬を得るほうが簡単である。
ということで、ディールの基本であるトントンの取引条件の外交交渉が必要である。米国から無償で利得を得ていた国は、痛い目を見ることになる。
しかし、すべての国に関税を掛ける方向なら、これは、国内の税収の落ちを関税の収入で埋め合わせる方向であり、これは取引ではないので、世界全体で対米貿易同盟を作り、米国以外の国では関税戦争にならないようにする必要がある。
世界全体での貿易戦争は、世界全体の経済規模を落とすことになるので、それを阻止する必要がある。早く、米国一国除外経済圏を作り、自由貿易を守ることだ。日本は資源や食糧を輸入する必要にあり、当分自由貿易が必要だからだ。
このため、日欧が連携して、世界全体での貿易戦争になることを防ぐ必要がある。そして、日本の企業が世界に出ていくことで、貿易戦争を防ぐことになるとも思う。
ここに来て悪化し始めた中ロの関係。ウクライナ戦争の推移
トランプ大統領とゼレンスキー大統領が2月28日にホワイトハウスで会談したが、ゼレンスキー大統領が米国のロシアに対する外交姿勢を疑問視する発言したことで、鉱物資源の権益をめぐって合意文書への署名には至らなかった。
この影響は大きい。ウクライナへの米国からの軍事支援が無くなり、欧州からの援助だけになるし、米衛星からの情報やシギント等も無くなると、軍事的な影響は大きくなる。
ドイツの首相候補メルツ氏は、長距離巡航ミサイル「タリウス」の供与を表明したが、徐々に米国兵器からドイツ兵器に置き換える必要になる。しかし、米国のような備蓄がないので、潤沢にウ軍に提供できるかが試されることになる。
トランプ氏は、「取引するか、われわれは撤退するかだ」と述べたので、ウクライナや欧州から撤退になる。ロシアとの停戦仲介もなくなり、公然とロシア側に立つことになる。
米国は、ロシアと同じよ...