9月7日の記者会見での「性加害問題の火消し」に完全に失敗し、社名変更も含めた二度目の会見設定に動いているとされるジャニーズ事務所。そもそもなぜこの問題は、告発者が相次いだにも関わらず事件化されることがなかったのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、その裏事情を深掘り。同事務所と中曽根康弘元首相のただならぬ関係を白日の下に晒しています。
プロフィール:伊東 森(いとう・しん) ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。
裏に中曽根康弘と音事協の存在。ジャニー喜多川の性加害問題で警察が「動けなかった」訳
ジャニーズ喜多川氏による一連の性加害問題を受けた開かれたジャニーズ事務所の記者会見からもうすぐ2週間。その後、大手企業を中心に同事務所との広告契約を打ち切る動
...moreきが波及した。
他方、食品メーカー「ネスレ日本」の元代表取締約社長CEOでビジネスプロデューサーである高岡浩三氏のFacebookへの投稿が波紋を呼んでいる。高岡氏は、
「正直言って、いったい何をこんなに騒いでいるのだろうか?という感覚でジャニーズ問題を見ている」
とし、
「クライアントサイドにいた私でさえ、ジャニー喜多川氏が元々性癖があってジャニーズ事務所を開設したという噂は、かれこれ20年以上前から噂として知っていた。メディア関係者も絶対私以上に知っていたはず。なぜなら、私が知ったのは業界関係者とメディアだからだ」
と投稿。さらに、
「私は、ネスレのガバナンスとコンプライアンス規定の観点から、キットカットと言えども一度もジャニーズのタレントをCMや販促に起用しなかった。私からすると、今回のジャニーズ問題はBIGモーター社と損保ジャパンの癒着問題と重なって見える」
と続けた。
筆者である私が喜多川氏についての問題を知ったのは、中学1年生(1996年)のときに遡る。父が購読していた、「噂の眞相」という月刊誌を興味津々に盗み読みしていたときだった。
当時、SMAPの森且行の脱退をめぐるジャニーズ事務所との攻防の“裏側”が「噂の眞相」に掲載されていたが、その際に喜多川氏自身が抱える問題も併記されていた。
「噂の眞相」は、その時期には、月刊誌総合雑誌で「文藝春秋」に次ぐ規模だったといはいえ、販路が限られ、今ほど問題は“拡散”しなかった。
ただ、「噂の眞相」は2004年に休刊したために、また当時のインターネットが未発達だったために、誌面内容がネット上でアーカイブされてこなかった。
そのため、とくにZ世代(1990年代後半から2010年生まれ)には、喜多川氏についての一連の性加害問題など知る由もなかったのだろう。
目次
訪米した美空ひばりの通訳も。ジャニー喜多川の正体
なぜ警察は性加害問題を事件化できなかったのか
裏に中曽根元首相の影。単なる芸能界の問題ではないジャニー喜多川の性加害
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ初月無料で読む
訪米した美空ひばりの通訳も。ジャニー喜多川の正体
喜多川氏は布教のためのアメリカに移住した真言宗米国別院の僧侶である喜多川諦道氏の次男として、1931年10月23日、アメリカ・ロサンゼルスで生まれる(*1)。2年後の1933年に日本に来日。
戦時中には和歌山大空襲を経験した。幼少期の喜多川氏を社会学者の橋爪大三郎氏は、
「2歳でアメリカから日本に来たことを考えると、幼少期は英語もほとんどしゃべれず、排日移民法の差別の記憶はおろか、アメリカの記憶も全然なかったはず。
それでも、アメリカにいたことが同級生にバレればイジめられてしまうような時代ですから、苦労したんじゃないでしょうか。
終戦後の1947年には再びロサンゼルスのハイスクールに戻ったそうですが、そこでは日本人としてイジめられ、英語も必死に覚えないといけなかったでしょうから、こちらでも大変に苦労したと思います」(*2)
と分析する。
その喜多川氏は、1950年に訪米した美空ひばりや服部良一らの通訳を務めることになる。その経験が日本で芸能事務所開設を目指すきっかけにもなったという。
1952年に再び来日した喜多川氏は、駐日アメリカ合衆国大使館に陸軍犯罪捜査局の情報員(通訳の助手)として勤務。朝鮮戦争に従軍して戦災孤児に英語を教え、帰国後はアメリカ合衆国大使館の職員として働いた。
「戦後すぐの日本のショービジネスは米軍基地にありました。米軍の将校や兵士を相手にショーをすれば、一晩で当時のサラリーマンの月給2カ月分が稼げたのです。
美空ひばりさんや江利チエミさんも基地で歌っていたし、それをオーガナイズする人も多かった。
若いので初めは通訳などいいように使われていたかもしれませんが、ジャニー氏は基地に自由に出入りできたので、その時代に多くのコネクションを築いたのではないでしょうか」(橋爪氏)(*3)
なぜ警察は性加害問題を事件化できなかったのか
当時、喜多川氏が住んでいたのは、「ワシントン・ハイツ」と呼ばれた場所。現在の代々木公園一帯にあった、米軍住宅地である。
ここで、少年野球チーム「ジャニーズ少年野球団」を結成したその4人の少年(のちのジャニーズ)と62年に設立したのが、今のジャニーズ事務所だ。
とはいえ、喜多川の問題は、裁判で事実と認定され、国会でも議論された。しかし、なぜ警察も動けなかったのか。いや動けなかったのだ。
筆者が「ジャニーズ帝国崩壊」(鹿砦社)を出版した際に、ジャニーズ事務所に所属していた数名の被害者に取材している。そのうちの一人の元タレントは、ジャニー氏から受けた性被害のすべてを母親に打ち明けて、警視庁の所轄署に被害届を出しているが、受理されることはなかった。
当時、その少年は、「警察の方は『まさか、天下のジャニーズの社長がそんなことするわけがない』と相手にしてくれなかった」と語っている。もう一人の被害者少年には筆者が「所轄の警察の生活安全課に相談するように」とアドバイスしたが、警察からまったく相手にされなかったという。
1997年発売の前述の著書はジャニー氏の性加害問題だけでなく、芸能界と暴力団の交際についても触れている。そのことから出版後、知人を介して警視庁捜査4課の刑事を紹介されたことがあった。
筆者はその後まもなくから2011年までの間で、担当刑事を変えて3回に渡って芸能界と暴力団の関係をレクチャーしたことがあった。その結果、ジャニー氏の性加害について関心を持ち、事件化したいと意気込んだ刑事もいたが、それが実現することはなかった。
その理由について、芸能界の業界団体である音事協(音楽事業者協会)初代会長で芸能界とパイプがある故・中曽根康弘元首相の存在を挙げる刑事もいた。(*4)
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ初月無料で読む
裏に中曽根元首相の影。単なる芸能界の問題ではないジャニー喜多川の性加害
今回の問題については、喜多川氏の行為に焦点が当てられるが、“ジャニーズ問題”を語るうえではむしろ喜多川氏の姉であるメリー氏にも注目をしなければならない。
なぜなら、業界内で事務所の実質的な社長は喜多川氏ではなく、メリー氏であるとみられたからだ。
「ジャニーさんはどんなタレントが売れるか、といった現場的な嗅覚は凄い。でも、経営者として事務所を運営していたのはメリーさんです。
ジャニーズ事務所と、その所属タレントと仕事をせざるを得ないテレビマンにとって、メリーさんの意向は『絶対』です。あの人が赤だと言えば、黒いものも赤になる。
誰も、面と向かって異など唱えられない。正真正銘の『女帝』なのです」(民放キー局ディレクター)。(*5)
そしてメリー氏は、中曽根康弘元総理と親交があり、橋本龍太郎元総理とも、住んでいたマンションが同じだったという縁で、自民党ともつながりがあった。
とくに、中曽根の影響力は甚大だった。というのも、日本の芸能界は戦後、自らの地位向上を目的とし、政権与党である自民党と接近し、庇護を受けることで、政治力を付けていった経緯がある(...
一般社団法人日本マイスター検定協会は、自動車好きコミュニティ「カーデイズ」の会員に対し、自動車保険に関するアンケートを実施し、集計結果を2023年9月18日に公開しました。以下は、アンケート結果の概要です。■保険料の安さ1位:ソニー損害保険2位:三井ダイレクト損保3位:アクサ損害保険■サポート満足度1位:ソニー損害保険2位:アクサ損害保険3位:三井ダイレクト損保■総合満足度1位:三井ダイレクト損保2位:ソニー損害保険3位:SBI損保アンケートの詳細は、以下記事にまとめています。https://car-days.fun/blog/column/insurance/35132アンケート結果を踏まえた自動車保険のおすすめランキングはこちらhttps://car-days.fun/blog/column/insurance/15089■アンケート実施概要調査実施期間:2023年9月調査方法:インターネット調査対象:カーデイズに会員登録しているユーザー 約2万人※自動車保険は等級、年齢、車種などによって個人差があります。※あくまでもアンケートに回答した方の評価であり、保険料が必ず安いことを保証するものではありません。実際の保険料は保険会社にお問い合わせください配信元企業:一般社団法人日本マイスター検定協会プレスリリース詳細へドリームニューストップへ
これまでに少なくない被害者が声を上げ続けてきたものの、イギリスの公共放送局BBCが取り上げるまで無視され続けてきた、ジャニー喜多川氏による少年たちへの性加害。日本のメディアを動かした形となったBBCの報道ですが、同局が喜多川氏を告発した裏にはある事件に対する「深い反省」がありました。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、BBCで長らく放送されていた番組の名物司会者による常習的な性的虐待を取り上げ解説。同局がその犯行を把握していながら追求できなかった事実を紹介しています。
プロフィール:伊東 森(いとう・しん) ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。
英BBCが黙認。500人以上に性的虐待加えた「イギリスのジャニー喜多川」
ジャニーズ事務所創業者で元社長のジャニー喜
...more多川氏(2019年死去)による性加害で、事務所は7日、東京都内で記者会見を開き、社長を務めていた藤島ジュリー景子氏が、喜多川氏による性加害を事実と認め、「心からお詫び申し上げます」と謝罪した。
藤島氏は5日付で社長を引責辞任。今後は代表取締役にとどまり、被害者への補償に当たる。後任の社長には、東山紀之氏(56)が就く。
会見へは、藤島ジュリー景子氏と新社長となる東山紀之と顧問弁護士の木目田裕氏と、ジャニーズJr.のプロデュースを手掛ける「株式会社ジャニーズアイランド」社長の井ノ原快彦(47)が同席。
この問題で、事務所が記者会見を開くのは初めて。
「ジャニーズ事務所」という社名は現時点では維持し、10月1日に会社組織の新体制を発表する。新しい社長となる東山氏は、
「今後の人生を懸けて取り組む」(*1)
とし、年内で芸能活動を引退するとした。東山氏は、喜多川氏とその姉の藤島メリー泰子氏(2021年死去)について、
「絶対的な存在」(*2)
とし、
「(事務所内の)風通しが悪かった」(*3)
と事務所の体質を語る。
一方、藤島前社長は後任の社長については、外部からの起用を検討したうえで、
「タレントの気持ちが分かる人の方が溝をつくらないと思った」(*4)
と説明する。
東山氏は、自身は被害を受けたことがないとしつつも、
「うわさは聞いていたが、直接被害を相談されたことはなかった。自ら行動はできなかった」(*5)
と述べる。
事務所は13日、被害者の救済について、元裁判官の弁護士3人による委員会を設置し、補償金額の判断について一任するとしてうえで、被害の時期などを理由に補償を拒むことはしないなどとする被害の補償策や、再発防止の取り組みを発表。
さらに、今後1年間は所属タレントの出演料はすべてタレントに支払い、事務所としての報酬は受け取らないとした。
目次
性加害を知りながらジャニタレ起用を続けた日本企業の人権軽視
姉のメリー喜多川が周囲に語っていたこと
人気司会者の性加害を追求できなかったBBCの深い反省
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ初月無料で読む
性加害を知りながらジャニタレ起用を続けた日本企業の人権軽視
問題を受け、大手企業の間ではジャニーズ事務所の所属タレントの広告への起用を見直す動きも広がる。他方、今回の問題はタレント自身の不祥事とは異なるとして悩む企業も多く、対応は分かれた。
ジャニーズ事務所所属タレントの起用をめぐる主な企業の対応(*6)
■起用せず
アサヒグループHD:岡田准一 生田斗真
キリンHD:目黒蓮 重岡大毅
東京海上日動火災保険:相葉雅紀
■検討中・未定
明治:相葉雅紀
コーセー:目黒蓮
■当面継続
花王:Aぇ!group
不二家:Snow Man
住友金属鉱山:生田斗真
このうち、サントリーホールディングス(HD)は11日、事務所に対し、被害者の救済策や再発防止策を説明するよう、書面で申し入れた。サントリーは、
「納得いく説明があるまでは、新たな契約を結ばない」(*7)
とする。
東京海上日動火災保険は、広告出演などに関する契約を更新しないことを決めた。今年12月の期限を待たずに契約を解除することも検討。同社は、
「いかなる形でのハラスメントも容認できない」(*8)
とする。
日産自動車も、当面は販促物で新たに起用しない。また、ジャニーズの調査報告書と記者会見の内容が日産の「人権尊重に関する基本方針」に反しており「非常に遺憾だ」とコメントした(*9)。
とはいえ、海外のエンターテインメント業界では、人気タレントとCMタレントとの棲み分けがはっきりとし、万が一のリスクを備え、人気タレントはよほどのことがないかぎり大手企業のCMには出演しない。
また、そもそもジャニー喜多川氏の性加害問題など、“もう半世紀も前”からあったと分かりきっていた話。そのことを知ったうえで事務所のタレントを広告に起用する企業もある意味では“同罪”であり、日本企業の“人権軽視”の姿勢が目に余る。
姉のメリー喜多川が周囲に語っていたこと
今回の問題をめぐっては、「パラフィリア」という言葉も取り上げられた。性加害問題について行われた「再発防止特別チーム」の会見時に配布された「調査報告書」では、「本事案の原因」として、以下の4点を挙げている。
ジャニー氏の性嗜好異常
メリー氏による放置と隠蔽
ジャニーズ事務所の不作為
被害の潜在化を招いた関係性における権力構造
一方、上記の1番目には、喜多川氏の「性嗜好異常」を挙げているのだが、「報告書」にはこうある。
(喜多川氏が)20歳頃から80歳代半ばまでの間、性加害が間断なく頻繁かつ常習的に繰り返された事実は、ジャニー氏に顕著な性嗜好異常(パラフィリア)が存在していたことを強く裏付けるものである
もっぱら未熟な思春期少年を性愛対象としたジャニー氏の性的関心と同意なき性行為の強要が長年続いたことは、被害者の年齢層(中心は13~15歳)がいわゆる小児性愛(13歳以下)に比べ定義上は若干高くなるものの、まさに性嗜好異常の一型とみなすことができるものである
この「性嗜好異常(パラフィリア)」とは、アメリカ精神医学会が作成した診断基準の「DSM-3」で採択された用語で、パラ(=偏った)+フィリア(=愛好の病)という意味。
「異常性欲」や「性倒錯」に代わって使用されることが多い言葉だ。
その特徴は、性的興奮を招く強烈な空想、強い性的衝動、小児もしくは同意しない人を相手とする性的行動の反復が少なくとも6カ月以上継続することなどであり、露出症やフェティシズム、性的サディズムや性的マゾヒズム、窃視症や小児性愛(ペドフィリア)など多岐にわたる(*10)。
喜多川氏の場合、そのうちの典型的な“小児性愛”ということになる。そして、「報告書」では、その喜多川氏の行為について、姉のメリー喜多川氏が周囲に「病気だから」と言っていたことも明らかにされている。
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ初月無料で読む
人気司会者の性加害を追求できなかったBBCの深い反省
喜多川氏の一連の性加害問題は、今年の3月イギリスの公共放送BBCが最初に報道、改めて、問題提起された形となった。
一方、BBCがこの問題を報道した背景には、イギリス国内にてBBCと深いつながりをもつ人物が喜多川氏と同様の事件を犯し、しかしBBCがそれを把握していながら追及できなった深い反省がある。
その人物の名前は故ジミー・サビル。イギリスでは知らぬ人がいない人物である。その墓石には、「慈善家、司会者、DJ…」などという輝かしい肩書が刻まれている。
サビル氏は、BBCにおいて40年以上放送された長寿音楽番組や少年少女の願いをかなえる高視聴率番組で司会を務めていた。しかし、その裏では、未成年者への性的虐待や強姦を日常的に繰り返しており、その被害者は500人以上にのぼる。
事件の全容は、ネットフリックスにて、
『ジミー・サビル:人気司会者の別の顔』
とのタイトルで配信されている。
「キリストとサンタクロースを掛け合わせた存在だった」(*11)
このように語られたサビル氏は、奇抜なファッションと言動が注目を集め、芸能活動以...