倍賞千恵子が、4月にイタリアで開催される第25回ウディネ・ファーイースト映画祭でゴールデン・マルベリー賞(生涯功労賞)を受賞することになった。2022年(第24回)の北野武監督に続く快挙となった...
時代や歴史を映し出す鏡のひとつとされ、さまざまな流行を生み出しているファッション。日々変化を求められる厳しい業界としても知られていますが、新たに誕生したのは、自らのスタイルを貫き続けているデザイナーの姿に迫った話題のドキュメンタリーです。『うつろいの時をまとう』【映画、ときどき私】 vol. 5632005年に、服飾ブランド『matohu』を立ち上げたデザイナーの堀畑裕之と関口真希子。コム デ ギャルソンやヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積んできた彼らは、着物の着心地や着方の自由さから着想を得た“長着”という独自のアイテムを考案していた。2020年1月、matohuは8年間にわたるコレクションをまとめた展覧会「日本の眼」を開催。2010年から2018年までの各シーズンで、日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマにしたコレクションを発表してきた。激しい議論を繰り返しながら、妥協することなくデザインを完成させていく堀畑と関口。いよいよ、ファッションショーの日を迎えることに…。第41回モントリオール国際芸術映画祭のオフィシャルセレクション作品に選出されるなど、海外でも注目を集めている本作。そこで、見どころについてこちらの方にお話をうかがってきました。三宅流監督これまでにさまざまなドキュメンタリー映画を手がけ、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを追求し続けて
...moreきた三宅監督。今回は、matohuの魅力やファッション業界の裏にある苦労、そして映画にかける思いなどについて語っていただきました。―matohuのおふたりと出会ったのは、2015年に発表した『躍る旅人−能楽師・津村禮次郎の肖像』の制作時ということですが、最初の印象はいかがでしたか?監督 はじめは、驚きが大きかったと思います。能のような伝統的な古典の世界に現代のファッションデザイナーが作った衣装が一緒にスタイリングされることはほとんどありませんから。なので、「こういう人たちがいるんだな」ということと、彼らが創り出す服が能の衣装に負けていない強さに対して純粋な驚きがありました。―そこから映画にしたいと思ったのは、なぜでしょうか。監督 最近は、ファッションのドキュメンタリーもけっこう作られていますが、そういう作品は人物にフォーカスしているものが多いように感じていました。ただ、僕としては、彼らのことを知るうえで、まず彼らがどんなことを思考しているのかを紐解きたいなと思いました。 そこで、彼らが取り組んでいた「日本の眼」というテーマやホームページなどを調べ始めたところ、たくさんの言葉によって非常に緻密な言語空間が作られていることに気がつきました。そのなかには彼らの思いだけでなく、日本にある古くからの美意識やいま生きている私たちが新たに何をできるかというステートメントも込められていたので、彼らの言語が持つ世界観に関心を抱くようになっていったのです。活字を映像にする過程には、無限の可能性がある―なるほど。確かに、劇中でも印象的な言葉が多く見られました。監督 しかも、活字を映像にしていく過程には、無限の可能性もありますからね。いろんなイメージを搔き立てられましたし、それをできるのが映画の魅力でもあるので、そういった部分を見せたいなと思いました。あと、彼らは自分たちをある種の媒体ととらえているところがあるので、彼ら自身を映してはいますが、その先にある大きなものを映画で描きたいと思って作りました。―ただ、実際にカメラを回し始めてからは、いろんな難しさを感じることも多かったとか。監督 そもそも僕はファッションとは畑違いのところにいたので、わからないことがたくさんありました。たとえば、陶芸だったら同じ1年でも徐々に1つの作品ができあがっていくので、わかりやすいですよね?でも、ファッションの場合、コレクションごとに同時進行で何着も作っていて、撮影に行くたびに違うことをしているので、点と点が線としてつながらない。そういったこともあって捉えるのが難しかったというか、どういうふうに映画にすればいいのかという答えがすぐには見えませんでした。―そこで何か突破口になったような出来事があったのでしょうか。監督 シーズンの制作過程とファッションショー当日の映像だけでも、それなりのものにはなったかもしれません。でも、それではドキュメンタリーとしてしっかりとしたものにできないと感じていたんです。そんなときに彼らの考えが可視化されている展覧会を目の前にして、どうしたらいいかわからなかったことも見えてきたので、そこから再解釈と再構築をしていきました。ファッション業界では、びっくりすることもあった―ちなみに、撮影を進めるなかで、matohuのおふたりから映画に関して要望を受けるようなこともありましたか?監督 そういったことは、特にありませんでした。たとえば、本編にもあるちょっとケンカのように論争を繰り広げているシーン。そのときは「撮ってもいいのかな?」と気にしつつも、「目の前で起きている以上は撮ろう」と思って撮影を続けました。途中で行った試写のときに、「あのシーンは見せないでください」と言われるのかなと構えていましたが、彼らにとっては普通のことで、隠すようなことではなかったようです。むしろ、「普段はもっと激しいですよ」と言っていたくらいでした(笑)。―だからこそ、制作過程の臨場感も伝わってきましたが、監督にとって印象に残っているシーンといえば?監督 彼らが言葉を構築しているところは、撮れてよかったなと感じた部分です。なかでも手で布を触りながらものづくりをしている最中にもれ出てきた言葉は、インタビューのときに出てくる言葉とは違う手触り感みたいなものがありました。そこは映画でも軸になっているところだと感じています。―今回、ファッション業界に入り込んでみて、驚いたことなどがあれば教えてください。監督 コレクションは半年に1回のペースですが、その期間にこんなにもたくさんのことをしないといけないのかと思いました。しかも、あんなに演出やスタイリングにも手間暇かけて作っているのに、披露するファッションショーの時間がたった15分ほど。初めて見たときはあまりにも短くてびっくりしました(笑)。でも、同時にこのなかで全部を表現しなければいけないのは、非常に難しいことだなと。実際、彼らも自分たちの考えを伝えきれないと感じていたようなので、自分たちのやり方でやっていこうと考えたのだと思います。言語化することの大切さを教えてもらった―スピード感や流行を意識しているデザイナーが多いなか、時代に流されることのない服作りを続ける彼らはファッション業界においてどんな存在だと思われましたか?監督 これは彼ら自身も言っていることですが、流行やモードに対するある種のアンチテーゼとなっているのではないでしょうか。表面的なものづくりをすることなく、時間をかけて取り組んでいますからね。ただおもしろいのは、じっくりと時間をかけているのにファッションのフォーマットを無視せずに毎シーズン新しいコレクションを出しているところです。そういう姿から「本当のものづくりに大切なものは何か」というのを業界に問いかけているようにも見えました。―監督自身も、同じアーティストとしてインスピレーションを受けた部分もあったのではないかなと。監督 ファッションの世界というのは、センスやトレンドのように感覚を中心にものづくりをしているイメージがありましたが、1つ1つ丁寧に言葉にしているのがmatohuの2人。僕は仕事や生活をするうえで、なんとなく流してしまうこともありましたが、彼らを見て言語化することの大事さを改めて知りました。特に、日本だと「背中を見て学べ」とか「技は盗んで覚えろ」みたいに言葉にしないことを美徳とするところがありますよね。でも、そこで言葉にすると立ち止まれたり、見えていなかったものが見えたりするのだと思います。特に、曖昧なところは詰めが甘いところでもあったりするので。そこから逃げずにやっていくことの大切さと、相手に何かを伝えるときに言語化することを怠ってはいけないという気づきを彼らから得ることができました。伝統とは、革新の連続である―確かにそうですね。そして、おふたりの言葉からは日本語の持つ美しさや豊かさも、再認識させられました。監督 しかも、彼らの言葉には、重みと軽み(かろみ)がありますよね。重さがあっても、眉間にシワが寄りそうな難しい言葉ではなく、軽やかさもあるので、それも大事だと思っています。これはものづくりにおいても言えることですが、いい作品に説得力や美しさを与えるため悩みは付き物です。ただ...
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「大阪松竹座」(大阪市中央区)の開場100周年を記念した『道頓堀 松竹座 映画祭』が5月2〜8日にかけて開催される。かつて映画館として名を馳せた会場で、洋画と邦画問わずに往年の名作が上映される。 1993年の新築再開場以 […]
新潟市で開催中の「第1回新潟国際アニメーション映画祭」で、「アニメーションと女性」と題したシンポジウムが開催され、「ファインディング・ニモ」「レゴ(R) ムービー2」などのプロデュースや米アニメ...