ラスべガスに建てられた巨大な球体「MSGスフィア(MSG Sphere)」は、世界最大の球体LEDスクリーンであり、今後おそらく世界最大の広告機会を生み出すだろう。23億ドル(約3412億円)で建てられた同LEDスクリーンは、1200万個のLEDライトで構成されており、ホッケーのパックのような形をしている。
スクリーンはプログラムによってコンテンツが投影させられる。最近では、NBAがMSGスフィアを広告に起用し、スクリーンにはバスケットボールの柄が投影され、巨大なバスケットボールとなった。
競争の激しい広告市場でなんとか目立とうとする広告主のため、屋外広告はユニークな形での発展を見せている。MSGスフィアはその最新の例だ。ブランドたちは、バージニア州のハンプトン地区における空中バナーからMSGスフィアまで、すべてを活用している。
進化する屋外広告
今日の厳しい経済環境のなかでも、屋外広告の収入は増加し続けており、全米屋外広告協会によると、今年は18億2000万ドル(約2700億円)を記録しているという。広告主たちは現在の広告業界の状況で、飽和したデジタル市場、インフレ、オンライン広告の上昇するコストに制約されながら、差別化する方法を探し続けている。そのため、より創造的なアプローチでの屋外広告の活用が今後増えるだろう、と広告主たちは言う。
「すべてのビジネスは最終的にある種、広告ビジ...moreネスになる」と、飲料ブランドのリセス(Recess)の創設者でCEOのベン・ウィッテ氏は言う。「伝統的なビルボードやワイルドポスティング(壁や建造物にポスターを貼る広告手法)のようなものを超えて、屋外広告クリエイティブのためのもっと面白い場所が出てくるだろう」。
現在、静止ビルボードのCPMは8ドル(約1186円)から12ドル(約1780円)の範囲であり、たとえば空中バナーのような先進的な屋外広告チャネルの場合、広告主が支払うCPMは5ドル(約741円)から6ドル(約890円)の範囲となると、クワン・メディア・グループ(Quan Media Group)のCEO、ブライアン・ラッパポート氏は言う。
アーンドメディアの拡大を誘う
リセスの屋外広告予算は、現在その総予算の10%未満であり、ウィッテ氏によると昨年から変わっていないという。しかし、その数字は来年、同社が小売事業を拡大するにつれて増加すると予想される。
ほかのeコマースおよびD2Cのブランドと同様、リセスは新しいロケーションへ小売事業を拡大する時期に合わせてブランド認知度を向上させるため、典型的なビルボード以外の屋外広告に熱心だ。しかし、「それはアーンドメディアの増加のためでもある」と、ウィッテ氏は言い、「屋外広告がクリエイティブであれば、マスコミ報道やソーシャルメディアのユーザー投稿を通じて、アーンドメディアが増加する可能性が高まる」と付け加える。
たとえば昨年、スナックおよびウェルネスブランドのベリウェリ(BelliWelli)は、「モテる女はIBS(過敏性腸症候群)と付き合ってる(Hot Girls Have IBS)」というビルボードキャンペーンがバイラルになった後、その屋外広告支出をさらに本格化させた。
また、D2Cのクッキーブランドであるデュー(Deux)は、昨夏の「生が好きならクラクションを鳴らせ(Honk If You Like It Raw)」の屋外ビルボードキャンペーンで同様の戦略を行った。
さらに興味深い例では、大手ブランドのメイベリン・ニューヨーク(Maybelline New York)が今年初めにローンチした「ファルシーズ・シュール・マスカラ(Falsies Surreal Mascara)」のために行った、「フェイクの」屋外広告キャンペーンがある。同ブランドはニューヨーク市内をマスカラのチューブの形をしたバスが走り抜ける動画をソーシャルメディアで展開。動画では実際に屋外広告としてこのバスが走っているように見えるが、実際にはCGで制作されたものであり、ソーシャルメディア上でのアートインスタレーションとして紹介されていた。
映画「バービー」の公開前にも、屋外広告に関して同様の話題があった。ドバイで巨大なバービー人形のホログラムが展示されたのだ。前述のメイベリンと同様に、これは実際にホログラムが投影されたのではなく、そう見えるように制作された動画となっている。AP通信(Associated Press)によると、この取り組みはアラブ首長国連邦に拠点を置く広告会社のアイスタジオ(Eye Studio)によって制作され、マテル(Mattel)やワーナーブラザーズ(Warner Bros)とは関連していないとのことだ。
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広告業界のニューノーマルは、観測筋が当初に思っていたよりは、オールドノーマルに近いようだ。
最初のころのパニックとは裏腹に、いまのところ広告不況は起きていない。むしろ、広告費は、まるで過去3年間の大混乱などなかったかのように、2010年代の一桁半ばの水準に戻りつつあるような感さえある。
成長率は4~5%の範囲で安定予測
ニュースレター「マディソン・アンド・ウォール(Madison and Wall)」の執筆者であるメディアアナリストのブライアン・ウィーザー氏によれば、米国内における今年の広告費は3600億ドル(約52兆7700億円)に到達し、前年から5%の増加となることが見込まれているという。同氏の調査は徹底している。約80の企業を分析して、その公的文書を確認するだけでなく、米国政府のデータの海にも飛び込んで、この数字を出している。
市場は、その比較対象が過酷そのものだった各四半期を一周した。こうしたことを踏まえて同氏は、今後の状況はポストコロナのノーマルに落ち着くのではと予測している。さらに細かく分析すると、今年の第3四半期に6%、第4四半期に8%の成長を記録したのちは(昨年の第3、第4四半期の成長率は、それぞれ3.5%、0.1%というパッとしない数字だった)、政治広告の影響を除外すると、成長率は4~5%の範囲で安定すると、ウィーザー氏は予測している。
この回復効果のかな...moreりの部分は、この1年間に相当量の投機的資金が市場から出ていったという事実に起因すると考えることができる。特に顕著なのが、暗号通貨やD2C(direct-to-consumer)モデルなどのセクターで、これらはこの異常ともいえる時期にその全盛期を迎えていた。
その一方で、消費財(CPG)メーカーなどの広告主の支出も増加している。こうした企業は、物価上昇の重荷を消費者に背負わせるという戦略的決断を下し、追加収入を再投資して、さらなる個人消費を刺激した。すべてをつなぎ合わせると、明らかなのは、確実に変わったものがある一方で、驚くほど変わらないままのものもあるという事実だ。
広告とはゴムバンドのようなもの
「多額のあぶく銭が蒸発したのち、広告市場は前年比で見ると弱気に傾いていたが、このことは驚くに値しない」と、ウィーザー氏は語る。「もしコロナ禍がなかったら、そこにいたであろう地点のはるか上に、我々はいる。それは新たな資金が大量に流れ込んできたからであり、インフレも追い風になっている」。
ウィーザー氏の分析がそうであるように、簡単にいえば、広告とはゴムバンドのようなものと考えるといい。さまざまな方向に引っぱられれば引っぱられるほど(パンデミックや戦争、高金利への対処がそうだ)、それだけ元の位置に跳ね戻ろうとするのだ。
広告費の見通しに関するここ最近のアップデートが、この見方の正しさを裏付けているといっていいだろう。
メタ(Meta)が第3四半期の広告売上の成長率を10%台後半と予測する一方、今年のデジタル広告費の成長率は1桁台後半かそれ以上を記録することが見込まれている。この見通しは、グループエム(GroupM)とマグナ(Magna)がそれぞれ6月に出した、約8%という予測を若干上回っている。広告業界がスピードアップしていないのは明らかだが、かといってスピードダウンもしていない。見通しを修正すると、こうなるだろう。インフレの後押しはあるものの、支出はほぼコロナ禍前の水準で行われている。
市場は古き良き時代に完全に戻ると、断言することはできない。いまもそこにはいくつもの課題が転がっている。ストリーミングサービスは収益性を見いだそうと必死になっており、広告によって支えられるジャーナリズムの苦闘はいまなお続いている。しかし、すべてとは言わないが、こうした変化の大半は、観測筋の多くが当初に予測していた猛烈な勢いでは起きていない。この点を認めることが重要だろう。
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