2023年12月1日
株式会社小学館https://www.shogakukan.co.jp/
一般の方々から寄せられた総数1,773本の投稿から選出!
国語辞典『大辞泉』が選んだ「新語大賞2023」を発表!
寄せられた新語のいくつかは『デジタル大辞泉』に採録します。
特別選考委員として明治大学の田中牧郎教授にご参加いただきました。
株式会社 小学館の国語辞典『大辞泉』編集部は、明治大学国際日本学部の田中牧郎教授(大辞泉編集協力者)をお招きし、一般の方々より寄せられた1,773本の投稿の中から「大辞泉が選ぶ新語大賞2023」を選定したことをお知らせいたします。
■ 「大辞泉が選ぶ新語大賞 2023」はこの言葉に決定いたしました!
大賞 =【生成AI】
あらかじめ学習したデータをもとに、画像・文章・音楽・デザインなどを新たに作成する人工知能の総称。
拡散モデルやGANなどの機械学習の手法により、文章からイラストを作成する画像生成AIや、人間と対話しているかのような自然な言葉遣いで文章を生成する対話型AIなどが開発されている。
※大辞泉の語釈(4月立項)
次点=【闇バイト】
強盗や詐欺などの犯罪の一部分をアルバイトとして代行すること。
※のんちゃんまんさん投稿の語釈
次点=【蛙化現象】
心理
...more学で、好意をもつ相手が、自分に好意をもち始めると、相手に嫌悪を感じる状態。
嫌われるかもしれないという不安から起こる自己防衛とみられている。
※大辞泉の語釈(10月立項)
◆投稿数ベスト10は以下の通りです。
第1位 【アレ】
第2位 【蛙化現象】
第3位 【増税メガネ】
第4位 【ChatGPT】
第5位 【闇バイト】
第6位 【処理水】
第7位 【タイムパフォーマンス】
第8位 【生成AI】
第9位 【ペッパーミル】
第10位 【かわちい】
※【インボイス制度】も上位でしたが、昨年も投稿数ベスト10入りしていたので除外しました。
◆詳しくは新語大賞発表ページ http://www.daijisen.jp/shingo/ をご参照ください!
■ 特別選考委員・田中牧郎教授による選評
◆総論◆ コミカルだけど真剣な“政権批判”新語が象徴する、庶民の気持ち――
コロナの話題が減り、戦争は各地で続いていますが、日本人にとっては物価上昇が最大の悩みの種となった1年でした。それを反映して【ステルス増税】が6月の、【増税メガネ】が10月の月間賞となりました。とくに後者は、国会の場で岸田総理も苦笑いしつつ、強く否定できなかった言葉。これまでの総理もルーピー(鳩山由紀夫氏)、イラ菅(菅直人氏)など悪口は言われるものでしたが、ときの野党支持層が主な発信元でした。しかし今回のは自民党支持層からも聞かれます。コミカルな響きではありますが、おカネのうらみが左右を問わず蓄積しているとみるべきでしょう。投稿数トップの【アレ】は単なる指示代名詞ですが、阪神・岡田監督が「優勝」の意味で、かつ、選手の気負いを避けて発した言葉です。遠回しな表現はときに批判を受けるものですが、これは上手な使い方ですね。野球関連では【ペッパーミル】もキャンペーン序盤に多くご投稿いただきました。しかし、今となっては懐かしささえ感じてしまいます。来年も、矢継ぎ早に言葉が生まれていくことでしょう。
◆大賞◆ 【生成AI】は一過性の言葉かもしれません。その根拠は――
【生成AI】の光と影、希望と危険性を語るのは専門家にお任せし、ここでは、新語としての側面に着目します。学習済みデータから答えを選ぶ従来のAIと異なり、無から有を生み出す【生成AI】は革新的な技術です。しかし、それにしては「生成」という言葉がくっついただけで、新語として地味に感じませんか? 「生成」は英語のgenerative(何かを生み出せる)の直訳なわけですが、私は、いずれこれが取れて、こちらを単に「AI」と呼ぶようになると思います。たとえば、現在「車」といえば自動車を指します。しかし、大正時代までは「お車を呼びますね」と言われれば、やって来たのは人力車でした。その後、新顔のガソリン車に「自動」と付けて造語したわけですが、すぐに「車」の呼称は自動車に取って代わられました。これと同じことが【生成AI】に起こる気がしてなりません。さて、どうなるか? 皆さまも注目しておいてください。
◆次点◆ 言葉の「安心感」がもたらす不幸? バイトではない【闇バイト】――
キャンペーンにいただいた【闇バイト】の投稿は31件。そして、その多くが「違法なアルバイト」といった語釈でした。しかし、これは本当にアルバイトなのでしょうか? アルバイトに明確な定義はありませんが、パートタイム雇用とともに一定の法的保護の対象となっています。このため、SNSなどで【闇バイト】に誘われると「闇」とは言うものの「バイトなのだ」という気軽さと安心感から、犯罪に手を染めてしまった人がいるような気がします。言葉には、ものごとを正しく伝える本来の力だけでなく、逆に、本質をオブラートに包んでしまう力もあります。「パパ活」「やんちゃ」「いじる」などが代表的なオブラート表現ですが、【闇バイト】にもそれと同様な効果があるのでしょう。最初から「殺人にまで至る可能性がある仕事だ」と明かしてしまっては、わずかな報酬で引き受けるわけがありませんよね。
◆次点◆ 生まれたての【蛙化現象】にふたつの意味。上書きが起こる?――
グリム童話『かえるの王様』が元となった言葉です。しかし、上掲の『大辞泉』の語釈を読んで「あれ?」と思う方もいるかもしれません。「交際相手の些細な行動がきかっけで、嫌いになること」と、特に若い方はとらえているのではないでしょうか。この言葉が現れたのは2000年代はじめですが、近年、いわゆる誤解釈が広まったことで注目されました。新しい言葉なので、意味の上書きは容易に起こりえます。新解釈が定着すれば『大辞泉』にも加筆が必要になるかもしれません。
田中牧郎(たなか・まきろう/明治大学国際日本学部教授)
1962年・島根県生まれ。東北大学文学部・卒業。東北大学大学院文学研究科・修士課程修了。東京工業大学大学院社会理工学研究科・博士課程修了。明治大学国際日本学部・教授。国立国語研究所・運営会議委員。日本語学会・理事。主な著書に『図解 日本の語彙』(三省堂/共著)。『近代書き言葉はこうしてできた』(岩波書店)。『コーパスと日本語史研究』(ひつじ書房/共著)ほか。
大江和弘(おおえ・かずひろ/『大辞泉』編集長)
1971年・山形県生まれ。新聞社勤務を経て小学館入社。『女性セブン』『ビッグコミックスピリッツ』編集部などを経て、国語辞典編集部に。以降、主に『大辞泉』を担当。直近の編集書籍は『小学生のミカタ おもしろ方言47都道府県まるわかり!』。
■「大辞泉が選ぶ新語大賞 2023」とは
「大辞泉が選ぶ新語大賞」は、『大辞泉』編集部が2016年から毎年開催している恒例企画。新しい言葉(新語)や今までにない新たな言葉の使い方(新語義)を一般から募集するオンライン参加型キャンペーンです。
8回目となる今年も、5月18日「ことばの日」から11月15日までの約半年間、一般の皆様からの投稿を大募集いたします。投稿いただいた中から、編集部が毎月「月間賞」となる新語を発表。さらに12月にはその中から「大辞泉が選ぶ新語大賞」を選定し発表いたします。
それらの新語は『大辞泉』デジタル版に採録し、アプリや電子辞書、「goo辞書」をはじめとする各種ポータルサイトの公式辞書に実際に掲載、実用化されるという画期的な企画です。
キャンペーン参加賞品として、期間中毎月30名様に抽選でアマゾンギフト券500円分をプレゼント(合計180名様)。また新語大賞に選ばれた言葉の投稿者からは、抽選で1名様にアマゾンギフト券1万円分をプレゼントいたします。
https://daijisen.jp/shingo/
※投稿された新語・新語義がそのまま収録されるのでは...