宇宙開発競争が激化していた1972年、金星探査を目指し打ち上げられたソビエト連邦の宇宙探査機「コスモス482号」。しかし、打ち上げ直後のロケットの不具合により、地球周回軌道からの離脱は失敗。計画は頓挫し、その後、半世紀以上もの間、宇宙の闇に忘れ去られていた。そして今、この宇宙探査機が2025年5月、地球に落下するという危機を迎えている。金星行きから地球落下へ……53年の軌跡「Newsweek」が報じたところによると、コスモス482号の落下は、ありふれた宇宙ゴミの落下とはわけが違うようだ。それというのも、金星の大気圏突入にも耐えるよう設計された頑強なカプセルは、直径約1メートル、重量約500kg。地球大気圏への再突入でも燃え尽きずに地上に到達する可能性が高いというのだから、楽観視してはいられない。想定される落下速度は最大250km/h、小規模な隕石の衝突に匹敵する威力だ。ちなみに、地球落下は5月9日から10日ごろと予測されている。どこに落ちる?落下地点の予測は困難さらに厄介なことに、正確な落下地点の予測は非常に困難であるらしい。同誌によれば、地球の大気圏上層部の変動、特に太陽活動の影響を受けやすいため、落下地点の特定は難しいという。現在のところ、北緯52度から南緯52度の間という広大な範囲が想定されている。これはヨーロッパ、アジア、ロシア、カナダなど、地球
...more上の多くの居住地域を含む。2019年からこの宇宙探査機を注視している、蘭デルフト工科大学のMarco Langbroek氏は、「リスクはゼロではない。しかし、それほど大きくもない。毎年発生する隕石の落下と同程度のリスクだ」とNewsweekの取材に対しコメント。それでも、人口密集地域への落下となれば、甚大な被害は免れないだろう。宇宙ゴミ問題、そして……持続可能な宇宙開発への道筋コスモス482号の落下は、過去の宇宙開発の負の遺産が、現代社会に影響を及ぼすという現実を、あらためて私たちに突きつける。現在、新たな局面を迎えた宇宙開発。民間企業の参入により、宇宙旅行や資源開発など、宇宙利用の可能性は大きく広がりを見せている。しかし、それと同時に、宇宙ゴミ問題の深刻さも増している点も見過ごせない。地球周回軌道上には、機能停止した人工衛星やロケットの残骸など、数えきれないほどの宇宙ゴミが漂っているという現実。これらは運用中の人工衛星や国際宇宙ステーションに衝突する危険性があり、宇宙開発の大きな障害となっている。宇宙ゴミ問題への対策は、もはや待ったなし。国際的なルール作り、宇宙ゴミ除去技術の開発など、さまざまな取り組みが求められる今、はるか大気圏の彼方への憧憬だけでなく、目の前の危機に対してのアプローチも不可欠だろう。Reference: Soviet Spacecraft Set To Crash Into Earth in MayTop image: © iStock.com / ronib1979