石破茂首相が初の所信表明演説に臨んだ。自民党総裁選の公約をベースに地方創生再起動、防災庁設置などを打ち出した。 だが派閥裏金事件の実態解明、再発防止の具体策は語らない。「問題を指摘された議員一人一人と向き合い反省を求める」と言ったが、9日に衆院解散となれば政界は一気に選挙態勢だ。「裏金議員」を党公認候補とすることへの世論の批判が時間切れで雲散するのを待つ意図さえ感じる。 前向きだった選択的夫婦別姓、富裕層への課税強化などにも触れなかった。内政、外交は岸田政権をほぼ踏襲。
自民党総裁選挙は決選投票を制した石破茂氏の当選で幕を閉じ、1日には早くも石破内閣が発足しました。そんな石破氏が首相となる前から、彼の「語り」に注目していたのが、生きづらさを抱える人たちの支援に取り組むジャーナリストの引地達也さんです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、そんな「自らの言葉」で話し続けてきた石破首相の語りを「イシバナシ」と名付けた引地さんが、首相となった後も変わらず石破氏が「自分の言葉」で語ることを勧めています。
石破茂首相の「イシバナシ」が示す宮沢賢治「雨ニモ負ケズ」の世界観
9人が立候補した自民党総裁選挙は石破茂元幹事長が決選投票を制し、自民党総裁となり、国会を経て内閣総理大臣に就任した。
この欄で、その話しぶりを「イシバナシ」と書き、かつての私が体験した取材や石破氏との交流から得た感覚を伝えた。
コミュニケーションの間合いや声のトーンを変えて、聴き手と語り手を演出し、ミクロな描写をやがてマクロな国家観へと導く手法は落語にも似て聞きやすく、人を惹きつける魅力がある。
この弁舌のうまさに私も聞くたびに納得させられたが、いよいよその弁舌はこの国の行方を左右するところまできてしまった。
自民党、政権与党を率いる立場と、物事を客観視するスタイルは両立するのだろうか、と不安にもなる。
決選投票前の5分間の演説で要約された思いを持続させられるか、ここから
...moreが正念場なのだろう。
「イシバナシ」の語りとは、テレビでは司会者の質問に対し、ちょっと間を置き、自分のペースを保ち、「それはね」という雰囲気で語りだす。
終始、語りはゆっくりだから、聞いているほうにもストレスがかからない。
最近のコメントには年齢を重ねたことによる、「丸み」も帯びてきた。
決選投票前の5分間演説にはそのエッセンスが詰め込まれていた。
最初の時節の句はよどみなく、その後に切り出したのが謝罪だ。
これまで人間関係の希薄さ等、「人徳」のような課題が指摘されてきたが、この点を意識しての発言だろう。
「多くの足らざるところがあり、多くの方々の気持ちを傷つけたり、いろんな嫌な思いをされた方が多かったかと思います。自らの至らぬ点を心からお詫びを申し上げます」
ある報道はこの部分を聞いて投票を決した人もいた、と書く。
この点は、おそらく本質的に「何が悪かった」のか理解しているとは思えず(私はそれでよいと思っているのだが)、少し無理があるような気もしないでもない。
演説の目線でいけば、地元の鳥取の夏から始めたのは、演説をぐっと庶民に近づける効果があったと思われる。
「立候補への決意を表明しましたときに、私は育ちました地元の神社の前で出馬表明をいたしました。暑い日でした。
もう今から60年も前のことになります。夏休みでした。そこで夏祭りがありました。今ほど豊かではなかったけれど、そこには大勢の人の笑顔がありました。今ほど豊かではなかったかもしれないけれど、大勢の人が幸せそうでした。もう一度そういう日本を取り戻したいと思っています」
かつてにぎわっていた地方の夏祭りを想起させるこのフレーズは、国民の一定の年齢層には響くワードが散りばめられ、その情景から「日本」を語れば、おのずと感情的になってくる。
この後、お互いに悪口を言わないようにしようと呼びかけるのは、もはや宮沢賢治が示す世界観に近づいてくる。
「お互いが悪口を言い合ったり、足を引っ張ったりするのではなく、ともに助け合い、悲しい思いでいる人、苦しい思いでいる人、そういう人たちを助け合うような、そういう日本にしてまいりたいと思っております」
最後の5分間のスピーチで語った「夏まつり」「幸せ」「にぎわい」「悪口」。
誰もが親近感のわく言葉の数々に思いを込めたことで、この「落語」も完成したように思う。
しかし前回の本欄で「無派閥で傍流にいる発言者として、メディアとしては頼もしい存在」と表現した石破氏は今や首相。
就任の会見では用意した原稿を読み上げる格好になり、その弁舌は鳴りを潜めた。
質疑への応答では、自分の言葉で語る場面で、「イシバナシ」の一端をのぞかせたが、やはり安全運転に終始し、面白いものにはならなかった。
石破首相にはこれまで通り語り続けてほしい。
自分の言葉で語りを続けることは、政治への関心が高まることにつながると思うのだが、どうだろうか。
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image by: 石破茂 - Home | Facebook
MAG2 NEWS
日本の第102代首相に就任した石破茂首相が27日、自民党総裁選挙で勝利した直後に金融市場で浮上した「利上げ=円高転換」の憂慮を払拭することに成功した。円は1カ月ぶりの円安水準になった。
2日(現
毎日新聞が3日に実施した世論調査で、43%の人が、自民党総裁選の決選投票で石破茂首相(総裁)に敗れた高市早苗前経済安全保障担当相の今後の政治活動に「期待する」と答えた。自民支持層では57%が支持しており、根強い人気を示した格好だ。石破政権と距離を置く高市氏の今後の動向に注目が集まる。
石破茂内閣の発足に伴い、首相官邸の陣容が固まった。岸田文雄前内閣からの留任組を軸とした上で、9月の自民党総裁選を陣営で支えた側近議員と、防衛省出身者ら安全保障政策に精通する関係者を配置し、独自色をにじませた。