パレスチナ自治区ガザ地区で毎日新聞の助手を務めるアシュラフさんの自宅は、停戦合意の前日にイスラエル軍の砲撃を受け、がれきの山となりました。合意からまもなく1カ月。人質解放で喜びにわくイスラエルに対し、イスラエル軍撤退の見通しが立たないままのガザでは、いまも戦闘再開への不安が渦巻いています。
パレスチナのイスラム組織ハマス幹部は3日、自治区ガザでイスラエル軍の攻撃による死傷者が連日出ているとして「停戦合意違反だ」と反発した。イスラエル軍はハマスの拠点排除を掲げ、支配地域周辺で砲撃や空爆などを実施している。ハマス系列メディアによると、3日には北部ガザ市で結婚式の最中に銃撃があり、少女3人
唯一の被爆国である日本への訪問直後、突如として「核実験の即時再開」を命じたトランプ大統領。にわかに信じがたいこのニュースは、大きな驚きを持って世界中を駆け巡りました。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、トランプ氏の「衝撃発言」の真意を多角的に分析。その上で、トランプ流外交の危うさを強く指摘しています。※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:気まぐれか?外交交渉戦略か?-トランプ大統領の外交姿勢と国際情勢の行方-強まる混乱の渦と危機の足音
トランプ発言を交渉のカードとして用いるつもりのロシア
とはいえ、当の中国も核兵器の生産に使われる高濃縮ウランやプルトニウムといった核分裂性物質の生産を禁止することを目的とした【核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT、カットオフ条約)】の詳細な内容を決めるための交渉の開始に賛同しておらず(一応、公の場合には交渉の早期開始に前向きな発言をしていますが、行動に結びついていません)、今でも不透明な形での核戦力の急速な増強が進められていると思われ、それが核軍縮に向けた国際的な動きを逆行させるきっかけになっているものと考えます。
ゆえに、中国の非難は果たしてアメリカの突然の核実験再開に向いているのか、それとも米中関係の緊張を
...moreアピールするだけなのかは読み切れないところなのですが、2026年にはアジア太平洋地域における軍事バランスにおいて、中国の軍事力がアメリカのそれを上回ることがほぼ確実と言われている中、その成否を占う“核兵器のプレゼンスを通しての優位性”に影響を与えかねないことに対して懸念を表明しているのではないかと見ています。
ただ、トランプ大統領による突然の宣言は、確実に国際情勢の安定を根本から揺るがすものであり、ただでさえ不安定極まりない状況に大きな衝撃を与え、核保有国同士の緊張の高まりを再び意識させる事態に発展しています。
その典型例がロシアの反応です。プーチン大統領とロシアは、トランプ大統領の突然の発言の真意は計りかねているようですが、中国とはまた違った形でアメリカ政府に対して警告を発しています。
プーチン大統領の談話として「アメリカによる核実験の即時再開宣言については、国際的な平和と安定を根本から覆す信じがたいことであると考えるが、もしアメリカが本気なのであれば、ロシアもそれに対応する必要があることを明確に示す」という内容が語られ、トランプ大統領の発言の真意と中身について探りを入れる構えを見せていますが、米ロ間の新START(新戦略兵器削減条約)の期限が来年2月に迫るタイミングでこのような話が出てきたことによって「アメリカはロシアと核で再度対峙するつもりか?」との疑念が強まったと言われていますが、もちろんロシアはこれを上手に交渉のカードとして用いるつもりのようです。
ロシアと言えば、ウクライナへの侵攻から3年半以上が経ちますが、戦況の節目で核兵器使用の脅威を交渉カードとして提示し、欧州各国とアメリカがフルにウクライナにコミットすることを思いとどまらせる戦略を続けていますが、そこにロシアによる核実験の即時再開の“可能性”という対抗カードを加えることでウクライナはもちろん、その背後にいるNATO諸国に対して、さらなるプレッシャーをかけることができる状況を獲得したとも言えます。
ただ、自国の勢力圏においてカギとなる国と位置付けるカザフスタンをあまり刺激して、欧米側に傾かないための配慮は欠かさず、アメリカに対抗して核実験の即時再開を考慮すると発言した後すぐにトカエフ大統領に「ロシアはカザフスタンのセミパラチンスク実験場で行った旧ソ連の核実験の悲劇と責任を決して忘れてはおらず、あのような実験を再開する意図はない」と伝え、カザフスタンの非難と懸念の矛先をロシアではなく、アメリカに向けさせるための策もしっかりと練っているようです。
フォーカスを変えると浮かび上がってくる「別のシナリオ」
サウジアラビアを激怒させたイスラエル財務相の侮辱的な発言
エジプトのシシ大統領は、先のトランプ和平のco-signerであるものの、公然とイスラエルを非難し、「イスラエルはガザの人たちに対して、恐怖と飢餓を武器に用いてさらなる絶望を生み出すことを選んだ。決して看過できない蛮行である」と怒りを面に出していますし、エジプトとガザの境にあり、ガザ向けの人道支援の窓口となるラファ検問所を、エジプト政府に諮ることなく、イスラエル政府が一方的に閉鎖し、支配している事態に強い懸念と怒りを表明する事態になっています。
その証にラファのエジプト側と、イスラエルとの和平合意にあるシナイ半島の非武装化地域のすぐ外側にエジプト軍を展開し、自ずと緊張が高まっています。
サウジアラビア王国については、さらに深刻で、アメリカもイスラエルも、アラブの雄であるサウジアラビア王国をアブラハム合意で取り込み、地域におけるイスラエルの存在を非常にデリケートなバランスで守るための存在にしようと躍起になっているのですが、それを閣内にいる極右のスモトリッチ財務相の「サウジアラビアがイスラエルとの関係正常化と引き換えにパレスチナ国家の樹立を求めるなら、お断りだ。…サウジの砂漠でラクダに乗り続けるがいい。われわれは経済、社会、国家、そしてわれわれが知っている偉大で素晴らしいことすべてをもって真に発展し続ける」というサウジアラビア王国を完全に侮辱し、非難し、挑発するような発言によって、アメリカとイスラエルが仕組んだ狙いは崩れ去ろうとしています。
実際にこの発言はイスラエル国内でも激しい非難に晒され、圧力に直面してスモトリッチ財務相も次の日には謝罪し、ネタニエフ首相もサウジアラビア王国に対して謝罪したものの、関係は修復不可能と思われ、サウジアラビア王国は他のアラブ諸国と共に緊急会合を開催し、「イスラエルは戦いの手を緩める気は毛頭なく、ハマス掃討を理由にガザを壊滅させ、その血に染まった手はヨルダン川西岸におよび、ヨルダンを刺激し、いずれは我々とアラブの民に牙をむくことになるだろう。団結してイスラエルの企みを挫き、イスラエルを打倒することが必要なのだということを、私たちに認識させたと激しく非難し、再度、イスラエルが決して受け入れられない“パレスチナ国家の樹立”を、今後の和平合意の内容およびイスラエルとの緊張緩和の条件として付きつけつつ、アラブ諸国およびトルコ、イランなどとCoalition of the willing(同志国同盟)を構成して、イスラエルとの武力対立にも本気で備えだしたとの報告が入ってきています。
その背後にはロシアと中国が控えていますが、あくまでも後方支援に留まり、表向きの核の傘はパキスタンが提供する形で、広域アジアを巻き込んだ危ない状況が再び表出し始めたように見えます。
アラブとその仲間たちはイスラエルへの反発と警戒を強め、アメリカに抗議の意を示し、ロシアは新生シリアのシャリア大統領とプーチン大統領の会談を設定して、ロシア軍のプレゼンスを再びシリアに置くことに対する同意を取り付け、イスラエルに対する軍事的な壁を築く動きに出て、アメリカ主導で進む中東和平プロセスに待ったをかけ、ロシア流のアラブへの支援の形を作り出すという動きにでて、当該地域における対米圧力も高めています。
米政権内の人間との対話で見えてきた「案件間の優先順位」
ロシアとしては、中東における緊張を高めることで、戦況が停滞しているロシア・ウクライナ案件からアメリカの注意力とエネルギーを逸らせ、ウクライナに対して決定打をあえて打たずに戦争をさらに長期化させ、ウクライナの内側からの崩壊を加速させるべく、ハード面ではインフラ施設への徹底的な破壊攻撃と、touch and goのドローンによる攻撃とNATO諸国への領空侵犯、キーウと地方都市の分裂の拡大と反ゼレンスキー勢力のウクライナ国内における結集といった工作を進める算段だと思われます。
最新の分析では(とはいえ、以前から分かり切っていることですが)、軍事的にはロシアはウクライナを破壊するだけの十分な優位性と能力を持っていますが、そのためには核兵器の使用が必要とされ、仮に放射能汚染を引き起こした場合には、ウクライナを打倒し、ロシアの影響圏に組み入れても居住することはできないという現実と、いかなる形でも核兵器の使用は、第2次世界大戦後(広島と長崎にアメリカが原爆を投下して以降)、非常にデリケートなバランスで保たれてきた体制を根本から...
イスラエルは、イスラム組織ハマスが停戦合意に違反したとしてガザ地区の各地で空爆を行い、ロイター通信は少なくとも26人が死亡したと伝えています。アメリカのトランプ大統領は「停戦を脅かすものではない」と強調していますが、不安定な情勢が続いています。
英ロックバンド、レディオヘッドのボーカル、トム・ヨークは、2017年に同バンドがイスラエル・テルアビブで公演したことで批判されたことを受けて、今後はイスラエルで公演しない考えを明らかにした。
イスラエルとイスラム組織ハマスとの間で停戦合意が成立する前に行われた英紙サンデー・タイムズのインタビューで、ヨークは、イスラエルで公演を行うことは「絶対にない」と述べた。
ヨークは、「(イスラエルの)ネタ...