日本の天才チンパンジーとして知られた「アイ」が亡くなったと報じられました。
アイは、英語のアルファベットだけでなく、100字を超える漢字を見分け、数字や色まで理解したことで「天才」と呼ばれたチンパンジーです。
京都大学ヒト行動進化研究センターによると、アイは2026年1月9日、老衰と臓器不全により49歳で死亡し、最期は職員に見守られていたといいます。
研究に自ら進んで関わった個体として、霊長類の心を探る研究史に大きな足跡を残しました。
目次
天才チンパンジーはどう生まれたかアイが示した「心」のかたち
天才チンパンジーはどう生まれたか
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アイは1976年、西アフリカのギニア森林地帯で生まれ、1977年に京都大学の研究施設に来ました。
のちに「アイ・プロジェクト」と呼ばれる研究プログラムの中心となり、コンピューター画面と専用キーボードを使った課題を通して、知覚・学習・記憶といった認知能力が調べられました。
研究者が注目したのは、単なる訓練の成果にとどまらず、アイが記号を「意味のあるもの」として扱うように見えた点です。
赤・緑・青の識別といった基本的な課題から始まり、アラビア数字が数量を表すことを学び、さらにアルファベットの大文字26文字を区別できるようになったと報告されています。
また、0から9までの数字や11種類の色を識別できたともされて...moreいます。
アイが示した「心」のかたち
アイの能力を象徴する逸話はいくつもあります。
例えば、画面に「ピンク」を意味する漢字と色のついた図形が提示されると、正しくピンクの図形を選んだといいます。
また、リンゴを見せられた際には、画面上で長方形・円・点を選んで「仮想のリンゴ」を描いたという報告もあります。
記号を単に暗記して押し分けるだけでなく、見たものを別の形で表現するような振る舞いが観察されたことになります。
さらに、1989年10月3日には施設を脱走し、鍵を使って南京錠を開けたとみられる出来事も伝えられています。
こうした行動は、身体能力の高さだけでなく、状況を理解して手段を選ぶ柔軟さを想像させます。
研究から離れている時間には、絵を描いたり色を塗ったりするのを好み、2017年のアイ・プロジェクト40周年では、アイの絵をもとにしたスカーフが霊長類学者ジェーン・グドール氏に贈られたとも報じられています。
人間の心を映す「鏡」として
京都大学ヒト行動進化研究センターは、アイの研究が「チンパンジーの心を理解するための実験的枠組み」を築き、人間の心の進化を考える土台になったとしています。
好奇心が強く、研究に積極的に参加したというアイの姿は、私たちが「知る」「覚える」「意味を結びつける」とき、脳内で何が起きているのかを考える上で、今後も貴重な手がかりであり続けるはずです。
全ての画像を見る参考文献‘Genius’ Chimpanzee Who Could Read Chinese And English Dies Aged 49https://www.sciencealert.com/genius-chimpanzee-who-could-read-chinese-and-english-dies-aged-49Genius Chimpanzee Ai Dies at Age 49, Primate Known for Enthusiastic Role in Research on Learning, Memoryhttps://japannews.yomiuri.co.jp/society/general-news/20260111-303426/ライター千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。編集者ナゾロジー 編集部