【音楽通信】第110回目に登場するのは、オリジナリティあふれる世界観で魅了する、新体制となった音楽ユニット・水曜日のカンパネラから、20歳の二代目ボーカリスト、詩羽(うたは)さん!母や軽音楽部の影響でさまざまな音楽を聴く二代目主演・歌唱担当の詩羽。2001年8月9日、東京都生まれ。【音楽通信】vol.1102013 年より始動した音楽ユニット、水曜日のカンパネラ。昔話や偉人などをテーマにしたウィットに富んだ楽曲が持つ世界観は、オリジナリティ抜群で聴き手を虜にしてしまうものばかり。2021年9月に初代主演・歌唱担当のコムアイさんが脱退し、高校卒業後フリーモデルとして活動していた大学生の詩羽さんが、二代目主演・歌唱担当として加入しました。そんな水曜日のカンパネラが、2022年5月25日に、新体制後初となるEP『ネオン』を配信リリースされるということで、詩羽さんにお話をうかがいました。――小さい頃に音楽に触れたきっかけから教えてください。母は音楽が好きで、以前CDショップで働いていたこともあって、ショップでたくさんのCDを借りてきたり、ポップスを聴いたりしていました。小さい頃は、家でYUKIさん、椎名林檎さん、東京事変などの女性ボーカルの曲や、くるり、キリンジといった男性ボーカルの曲が日常的に流れていました。昔から母は自分で歌を作って歌っていて(笑)、いまでもときどき自己流の“ママソング...more”を歌い続けていますが、母のおかげで自然と音楽が身近な環境に育ちましたね。――音楽好きなお母さまということで、詩羽さんは楽器に触れることはありましたか。高校生のときに3年間、軽音楽部でギターとボーカルを担当していました。当時、弾き語りの魅力に惹かれて、最初はアコースティックギターでひとりで弾き語りをしていて。次に、軽音楽部でバンドをやろうと思い、エレキギターも始めてみました。――もともと音楽で表現したい気持ちがあったのですか。それはなかったですね。その高校に入った理由のひとつは、わたしと年齢があまり変わらないぐらいの女性が弾き語りの路上ライブをしていて、ギターも上手で歌声もすごく素敵で、影響を受けたんです。だから、その先輩と同じ高校、軽音楽部に入りました。いまその先輩は「Day and Night」という2人組の音楽ユニットをしていて、テレビで開催されていたTikTok弾き語りシンガーのオーディションで優勝してドラマ主題歌を勝ち取っていたので、すごいなと思いますね。わたしは高校生の頃から、邦楽のロックをいろいろと聴くようになりました。高校を卒業してバンドをやめてからは、女性シンガーソングライターのカネコアヤノさんの曲をよく聴いています。――では、詩羽さんご自身で歌手になりたいと思ったことはなかったんですね。はい。水曜日のカンパネラとしての活動を始める前は、フリーランスモデルとして自己表現を模索していましたが、歌は自分の楽しい表現のひとつとして趣味でやろうと思っていたぐらいで、歌手になりたいとは思ったことがなかったんです。――そんななか昨年9月に、知人の方の紹介で面談を受けて、水曜日のカンパネラに加入されました。19歳のときにお話があって、正式に加入を発表するときには、20歳になっていましたね。水曜日のカンパネラのことは、中学生のときに「桃太郎」や「一休さん」などの曲が流行っていたのでもちろん知っていて。「加入しますか?」というお話があった日に、すぐ「やります!」とお返事をしました。でも、家に帰っていろいろと水曜日のカンパネラのことを調べ直したというぐらい、実は知識が薄かったんです(笑)。「やったー!」ぐらいの感覚でお返事をしたものの、もしかして自分が思っているよりも、大きな話だったのかなと。「チャンスは全部掴んでやろう!」というスタンスで、いろいろなことに挑戦している最中だったので、悩まずに直感的に即決しました。――初代ボーカリストのコムアイさんは、詩羽さんにとってどのような存在ですか。尊敬できる人ですね。初めて会ったときは世間話をしつつ、こちらから「いままでで一番楽しかった場所は?」「大変なことはありましたか?」といったことを質問していました。その度にコムアイさんは、「大丈夫、大丈夫!」と言って、フラットに接してくださって。コムアイさんに「代わるタイミングでインスタライブしたいんですよね」とお話ししたら、「一緒にやろうよ」と言ってくださって、なかなか他では見られない、いまの時代ならではのインスタライブ上での主演・歌唱の引き継ぎ配信をすることができました。――それまでリスナーとして聴いていた水曜日のカンパネラに、実際に加入してみて、まわりの方からの反響はありましたか。家族は、もともとわたしがやることを信じてくれているので、今回も「すごいね、やったじゃん!」と喜んでくれました。友達には、発表するまで言わなかったので、発表後に「どういうこと!?」とたくさん連絡が来ましたね(笑)。新体制になって初めてのEPが完成――2022年5月25日に、デジタルEP『ネオン』が配信リリースされます。まずこのタイトルに込めた意味からお聞かせください。わたしがアルバムタイトルを考えて、そのまま使ってもらいました。最近ネオンの看板に興味があっていろいろと調べているうちに、いまは使い勝手がよくて経費も抑えられるからと簡易的にできるネオンが増えていて、本格的なネオンを作る職人さんがどんどん減っているという現状を知りました。本来ネオンは繊細なもので、ガラスを熱で動かしてライティングするという技術は昔からあるものですし、なくなってしまうのは惜しいと思っていたところに、アルバムタイトルをどうするかという話があって、ふと「ネオンっていいな」と思ったんですよ。「ネオン」はラテン語なんですが、調べていくとどうやら「新しい」という意味も含まれているという解釈も。時代も新しい、わたし自身も新しく加入して、二代目になったという意味でもぴったりだなと「ネオン」とつけました。――4月27日に先行配信されたシングル「織姫」がアルバムのリード曲になっていますね。これは7月7日にしか会えない織姫と彦星が1年ぶりに再会したら、織姫が令和のギャルラッパーになっていたというストーリーの歌です。歌っているときは、最初にくる彦星目線の歌詞と、その後すぐにくる織姫目線のラップパートが、曲調としてもテンションとしてもとても落差があるので、彦星のところでは感情を込めてきれいに歌おうと心がけていて。でも、織姫の気持ちを表すラップの部分では、一気にいまどきの令和ギャルになるというマインドを大事にして、楽しんで歌っています。――2021年10月に、新体制後初の両A面シングルとして配信された「アリス」「バッキンガム」もEPに収録されていますが、詩羽さんにとって初レコーディングとなった曲ですね。初めてのレコーディングでしたが、あまり緊張しませんでした(笑)。でも、機材は全然わからないですし、どこでボリュームをあげるのか、どこでリズムをとるのか。そんな状況でしたが、楽しく歌入れできました。――今年2月の配信シングル「招き猫」「エジソン」も収録されていますし、新曲「卑弥呼」「モヤイ」など、タイトルだけでも興味深い曲が収録されていますね。「招き猫」は経営コンサルの招き猫という曲で、「エジソン」は、エジソンがバズってバンドマンになってしまったっていう曲なんです。新曲の中では、いまは「卑弥呼」の印象がわたしの中で強いですね。歴史上の人物の卑弥呼が、もしもお天気キャスターだったら……という、天気と卑弥呼が一緒になっている、面白いお天気の曲です(笑)。「卑弥呼」はリズムのテンポがはやくてポップな曲。高くなったり、低くなったり、歌っていても楽しい曲で、ライブでも2、3度披露しています。テンポ感とリズムがポイントの曲ですね。――聴き手には全曲聴いてほしいところですが、まずはこの曲からだけでも聴いてみてほしいというEPの推し曲というと?「織姫」です。「わたしの曲だな」と感じるぐらい、わかりやすさがある曲。わたしは水曜日のカンパネラの歌の部分とラップの部分、どちらも好きで「どちらもやりたい!」と欲張りな気持ちがあったんですが、「織姫」は歌もラップもきれいに入って曲が成り立っていて、自分の歌い方を調整できるので、歌っていてとても気持ちいい曲なんです。だから、一番推している曲でもありますね。――ミュージックビデオも凝っていますが、撮影はいかがでしたか。こちらも楽しんで撮影できていますね。いままでにリリースしたシングル4曲はミュージックビデオも作っていて、2曲リリースする際はひとつがいままで水曜日...