CDの全盛期である1980年代後半から1990年代にはたくさんの名盤が生まれ、海外の作品も盛んに国内盤が制作されました。歌詞、対訳、それにライナーノーツが付き、ときにはボーナス・トラックも収録されるなど、レコード会社は輸入盤との差別化を真剣に模索していました。
そんなCD爛熟期に、R&Bの分野でひとりの青年が執筆活動を開始。それが、雑誌『ブラック・ミュージック・リヴュー』をベースにライター・デビューを果たし、後には音楽プロデューサーとしてシングルおよび収録アルバムの累計セールス枚数が3000万枚を超すというヒットメイカーとなった松尾潔さんです。
そう、あの松尾潔さんのキャリアのスタートは文筆業だったのです!
そんな音楽プロデューサーの松尾潔さんが、NHK-FMのR&Bプログラム「松尾潔のメロウな夜」終了後初めて出版する音楽本『松尾潔のメロウなライナーノーツ』が6月20日にリットーミュージックから刊行されます。
『松尾潔のメロウなライナーノーツ』(リットーミュージック刊、税込3,300円)
すでに早稲田大学在学中より「R&Bジャーナリスト」として活動してきた松尾さん。あの久保田利伸との交流をきっかけに90年代半ばから音楽制作に携わり、SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加し、その後プロデューサー、ソングライターとして平井堅、CHEM...moreISTRY、東方神起、SMAP、JUJU、EXILEら、そうそうたるアーティストの作品に参加してきたことはご存知の通り。
松尾潔氏
本書『松尾潔のメロウなライナーノーツ』には、松尾さんがこれまでに執筆した300タイトル以上にもおよぶ90年代R&BのCDライナーノーツから松尾さん自身が厳選した52本を収録しています。
本文は「第1章:女たちよ!(女性シンガー編)」「第2章:男たちよ!(男性シンガー編)」「第3章:花よ嵐よ!(グループ編)」の3章仕立てで構成。
チャート順位などのデータをきっちり踏まえたうえで、ブラック・ミュージックの歴史や系譜から最新動向までに精通、さらにはアーティスト本人の現地インタビューも多数経験した松尾さんだからこそ書くことができた、貴重な解説と実体験の数々。
これは90年代のR&B受容の赤裸々な記録でもあり、美メロ・ガイドでもあるとのこと。
今回初めて知ったのですが、今では普通に使われる「美メロ」という言葉、これは松尾さんが発案したんだそうです。
そう、本書は単なる音楽ガイドではありません。これは、のちにヒットメイカーとなる音楽プロデューサーの血となり骨となった「魂(ソウル)の記録」なのです。
『松尾潔のメロウなライナーノーツ』
著者:松尾潔定価:3,300円(本体3,000円+税10%)発売日:2025年6月20日発行:リットーミュージック
● リットーミュージック公式サイト
本書目次:
第1章女たちよ!
フィリス・ハイマンラップにも挑戦、極めて完成度の高い1枚Phyllis Hyman / Prime Of My Life
シー・シー・ペニストン今が旬の勢いには抗いがたい魅力があるCe Ce Peniston / Finally
シャニース待った甲斐があったモータウン・デビュー作Shanice / Inner Child
アリソン・ウィリアムズ前作から一転、〈歌志向〉を強く打ち出すAlyson Williams / Alyson Williams
メアリー・J・ブライジ聴き手の渇きを潤していく、しっとりとした艶に満ちた声Mary J. Blige / What’s The 411?
ミキ・ハワードゴスペルに根ざしながら独自の世界を確立Miki Howard / Femme Fatale
ジャネット・ジャクソンマイケルも嫉妬したであろう、整然とした音の配置Janet Jackson / janet.
アンジェラ・ウィンブッシュヒップホップ好きの人にこそ聴いてほしいAngela Winbush / Angela Winbush
レイラ・ハサウェイ声質のみで聴き手を魅了できる数少ない歌手のひとりLalah Hathaway / A Moment
ティナ・ムーア傑作であります。ひとことで言うと。Tina Moore / Tina Moore
ロリ・ゴールドブロンクス・ビューティーの瞳には一点の曇りもなかったLori Gold / Lori Gold
シャンテイ・サヴェージ見事なR&B的整合感その背景には美メロの狩人がChantay Savage / I Will Survive (Doin’ It My Way)
エリーシャ・ラヴァーン〝慈しみ〞の心にあふれた英日米の合作プロジェクトElisha La’Verne / “Her Name Is….”
エリカ・バドゥ通受けする初期設定と巧緻なマーケティングの産物Erykah Badu / Baduizm
エイドリアナ・エヴァンスジャズ、R&B、サルサなどのミュージック・ガンボ!Adriana Evans / Adriana Evans
第2章男たちよ!
キッパー・ジョーンズ90年度の収穫突出した出来のソロデビューKipper Jones / Ordinary Story
アレクサンダー・オニールジャム&ルイスとの入魂のコラボレーションAlexander O’Neal / All True Man
ピーボ・ブライソン初期の作風を思い出させる復調著しい歌いっぷりPeabo Bryson / Can You Stop The Rain
ジェラルド・レヴァート文句なし、興奮すら覚えた待望のソロ・デビュー作Gerald Levert / Private Line
グレン・ジョーンズ一朝一夕に完成したのではないこの高品質Glenn Jones / Here I Go Again
キース・ワシントン熟した男が世に送り出す新しき傑作Keith Washington / You Make It Easy
ジェラルド・アルストン人と人の縁が織りなす巡りあわせの不思議Gerald Alston / First Class Only
バリー・ホワイトプロデューサーをプロデュースする達人Barry White / The Icon Is Love
ジェイムズ・ブラウンJBは電磁石なんだとぼくは思うJames Brown / Living In America
ディアンジェロ異様なまでの抑えた調子が虚を衝くD’Angelo / Brown Sugar
久保田利伸アメリカ進出第1弾となる良質のR&B作品Toshi Kubota / Sunshine Moonlight
ルーサー・ヴァンドロスソロデビュー以来のビッグヒットを時代順にLuther Vandross / Greatest Hits 1981-1995
ケニー・ラティモアそのヴォーカルの色艶、もう完璧ではないかKenny Lattimore / Kenny Lattimore
キース・スウェットこの5枚目のアルバムは5枚目の傑作アルバムKeith Sweat / Keith Sweat
ジョニー・ギルやっぱりジョニー・ギルは器が違うJohnny Gill / Let’s Get The Mood Right
エリック・ベネイR&Bの魅力がわかりやすく詰まった良作Eric Benet / True To Myself
マイケル・ジャクソンMJによるMJイメージと利き腕DJ達が考えるMJ像Michael Jackson /Blood On The Dance Floor / HIStory In The Mix
ロームドロリとした古くささを今っぽい意匠でRome / Belong To You
ジョー心あるR&Bファンは彼の活動を支援すべきだJoe / All That I Am
ブライアン・マックナイト〝らしさ〞と新しさの混淆際立つR&BのかたちBrian McKnight / Anytime
ベイビーフェイス童顔の巨人氏アンプラグド初見参Babyface / MTV Unplugged NYC 1997
第3章花よ嵐よ!
ハイ・ファイヴテディ・ライリーが見事に切り取った若さの瞬間Hi-Five / Hi-Five
ガイまさに未来を感じさせる期待に違わぬ1枚Guy / The Future
レヴァートもうひれ伏すしかないこれは大傑作!Levert / Rope A Dope Style
ブレイズ『What’s Going On』以来のモータウン...