国産の食料品で自国民の食べ物をどれだけ賄えているかを示す「食料自給率」には、カロリーベースと生産額ベースという2つの指標があります。飢えを心配するケースで重要なのはカロリーベースの指標で、日本は先進国最低レベルの38%しかありません。戦前は86%、1970年でも60%あった自給率はなぜこれほど下がってしまったのでしょうか。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田教授が、その“元凶”について解説。南海トラフなどの大災害に備えた備蓄に加え、根本的に自給率を改善させる方策の必要性を訴えています。
米を作って食料自給率を上げよう
11月に『食糧危機のウソ八百』(仮称 ビジネス社)と題する本を出版する予定である。日本の食料自給率はどんどん下がり、カロリーベースで38%(2022年度)しかなく、自然災害や戦争などで外国から食料が輸入できなくなれば、国民の大半は飢餓に直面するだろう。というわけで、なぜ食料自給率は下がったのか、食料自給率を上げるにはどうしたらいいかを考えてみようというわけである。
カロリーベースの食料自給率は、所謂先進国の中で日本(もはや先進国とは言えないかもしれないが)は最低レベルで現在38%である。自給率が高いほうから、カナダ221%、オーストラリア173%、フランス117%、アメリカ115%、ドイツ84%、イタリア58%
...more、イギリス54%となっている。日本の自給率がいかに低いかがわかる。
カロリーベースの自給率は、1人1日当たりの国産供給熱量/1人1日当たりの供給熱量×100で算出される値で、国民に供給される食物の熱量(カロリー=エネルギー)に対する、国産供給熱量の割合である。日本は現時点で供給カロリーが2426kcalで、国産供給カロリーは918kcalである。ここから計算すると自給率は37.8%となる。供給熱量は実際に口に入ったものばかりではなく、残飯や賞味期限切れとなって捨てられている食品も含まれているので、こういった無駄を省けば2100kcalくらいには下げられるので、それだけでも自給率を6%近く改善できる。
実際、戦前の1936年度の供給熱量は2075kcal、自給率は86%で、戦後の食糧難の時の供給熱量は1448kcal、自給率は88%であったことを考えると、供給熱量は2100kcalくらいで、十分生きていけるだろう。もっとも1946年の1448kcalは異常に低く、別のデータによると摂取熱量は、実際は1903kcalとも言われ、差し引きの455kcalは統計に残らないヤミ食品だと考えられる。
食料自給率にはカロリーベースの他に生産額ベースでの値もあり、これだと、カナダ118%、オーストラリア126%、フランス82%、アメリカ90%、ドイツ64%、イタリア84%で、日本は63%である。生産額ベースで見ると、日本もそれほど悪くないが、実際に飢えに直面した時に、問題となるのは必要なカロリーを摂れるかどうかなので、食料の安全保障を考えるときに重要となるのは、カロリーベースの値である。
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日本は全体として、食料自給率38%であるが、都道府県別に見ると、100%を超える県もいくつかあって、2020年度の統計では北海道223%、秋田204%、山形147%、青森120%、新潟109%、岩手108%となっている。反対に低い県は東京0%、大阪1%、神奈川2%で、この3都府県が10%以下である。東京都でも八王子などで野菜を作っているので、0%という数字は不思議な気がするが、東京都の人口1400万人への供給熱量に対する東京都産の供給熱量は、四捨五入すると1%に届かないということなのだと思う。
食料自給率は平時であれば、実際問題としては低くても差し障りはない。流通が滞らなければ、お金さえあればどこからか買えばいいからである。しかし、天変地異が起きて、流通が寸断されると、物理的に食料が届かず、お金をいくら持っていても飢餓に直面することになる。
もし南海トラフ大地震が発生して、交通網が寸断されてしまうと、東京のように自給率が低い県は言うまでもなく、高い県でも必要な品目の食料が届かないといったことが起こる。災害に備えて、県ごとに食料の備蓄を進めるなどの対策が必要だろう。
それでも、しばらくすれば災害は復旧して元に戻るだろうが、世界的な飢饉や紛争や戦争が勃発して、外国からの食料輸入がストップすれば、食料自給率が38%の日本はたちまち窮地に陥る。そこで、自給率を上げるための方途を考えなければならないということになる。
日本の食料自給率を下げた一番の元凶は米の減反政策である。減反とは生産過剰になった米の生産調整のため、米の作付面積を減らした農家に補助金を払う制度である。例えば、水田で麦や大豆などを作る農家に対しては10アール当たり3万5000円の補助金が、菓子類などに使われる加工用の米を生産した場合には2万円、家畜などの飼料用の米に対しては最大10万5000円の補助金がそれぞれつく。1960年代から試験的に始まって1971年から本格的に導入され2018年に終えるまで、約50年間実施された。
その結果、水稲の作付面積は生産調整が始まる前の1969年の317万ヘクタールをピークに、1975年225万ヘクタール、1985年232万ヘクタール、2020年には145万ヘクタールにまで減少した。生産量も1967年の1426万トンをピークに1975年1309万トン、1985年1161万トン、2020年776万トンに減少した。1人1年あたりの米の消費量も1962年の118kgをピークに毎年減少し続け、2020年には51kgとなった。
米をたくさん作っても売れないので、生産調整をするというのは経済原則としては正しいかもしれないが、日本の食料自給率を下げ、食の安全保障という観点からは途方もない愚策と言うほかない。食料自給率は1946年の88%から、1965年73%、70年60%、75年54%、85年53%、90年48%、2000年40%、2022年に38%まで落ちた──(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』2023年9月8日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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