トランプ米大統領は12日、自身のSNS(ネット交流サービス)で、ロシアのプーチン大統領と電話協議したと明らかにした。 ウクライナとの停戦に向けた交渉を直ちに開始することや、互いの国を訪問することなどで合意したという。ウクライナのゼレンスキー大統領にも協議内容を伝える。【ワシントン松井聡】
アメリカのトランプ大統領は12日、みずからのSNSに投稿しロシアのプーチン大統領と電話で会談したと明らかにしました。この中で、トランプ大統領は「ロシアとウクライナの戦争が引き起こしている大勢の死を止めたいという考えで一致した」としています。その上で「互いの国を訪問することを含め、緊密に取り組んでいくことで合意した。互いのチームが直ちに交渉を開始することでも合意した」としています。
ロシアのペスコフ大統領報道官は10日、プーチン大統領が、中国で9月3日に行われる抗日戦争勝利80年の式典に参加する方針を明らかにした。タス通信が伝えた。 ロシアの駐中国大使も、中国の習近平国家主席が…
アメリカのトランプ大統領はロシアによるウクライナ侵攻をめぐりプーチン大統領と電話で話したと報じられたことについて9日、記者団に対し、具体的な言及は避けたものの、ロシア側との対話が進んでいるという認識を示しました。
国際社会のみならず米共和党の一部からも批判の声が上がっている、トランプ大統領の「アメリカがガザ地区を所有した上で再建を目指す」という仰天案。かようなアイディアを突如発表したトランプ氏の真意はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、考えうる2つの要因を解説。その上で、アメリカが今後もこのような外交手段を取り続けた場合に待ち受けているであろう事態を推測しています。※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:トランプ大統領が仕掛けた危険な遊び:“アメリカ領ガザ”提案が抹殺する和平の機運
混乱と分断が深まる対立の世界。トランプの「アメリカ領ガザ」提案が生み出そうとしているもの
「中東地域の和平の実現に向けて、実に前向きな提案だ。これは苦難の歴史にピリオドを打つアイデアとなるだろう」
トランプ大統領との首脳会談後の記者会見において、トランプ大統領が披歴した「ガザ地区をアメリカ合衆国が引き受け、完全に破壊され、死の恐怖が漂うガザを希望溢れる場所に作り替える」という荒唐無稽なアイデアに対して、抑えきれない喜びを隠すことができない様子で微笑みながらイスラエルのネタニエフ首相が発した発言の一部です。
トランプ大統領のアイデアによると「ガザに残る180万人のパレスチナ人
...moreすべてを周辺国に移住させ、復興後のガザ地区をすべての世界市民に開放する」とのことですが、それには「アメリカ合衆国による長期的なガザの所有が必須である」らしいのですが、アイデアが披歴された際、何と表現したらいいかわからないほどの驚きと呆れが襲ってきました。
「きっと本気ではないだろう」
そう思いたいのが正直な感想なのですが、果たしてトランプ大統領の真意はどこになるのでしょうか?
考えうる理由は大きく分けて2つあるかと思います。
一つ目は、ちょっとタブロイド紙のような意見になりますが、【トランプ大統領の“不動産王”としての側面から、ガザの再開発という、政治家にはない考えが出たのではないか】という推察です。
これまで議員をしてきた政治家出身の大統領では考え付くことがないだろうと思われるアイデアでありますが、皆さんのご記憶にもあるかと思いますが、実は“再開発”案は今回が初めてではなく、第1期目のトランプ政権時に、北朝鮮の金正恩氏と首脳会談を行った際、トランプ大統領から「北朝鮮のスキーリゾートの開発」という提案が金正恩氏に対してされたことがあります。
実現はしていないのですが、トランプ大統領の側近だった方々によると、トランプ大統領は結構本気で交渉材料として考えていたようで、もしかしたら今回のガザの再開発もその流れから来ているのではないかという推察が存在します。
ただ北朝鮮の場合と大きく違うのは、【アメリカが所有する】という部分で、この所有権に触れた提案は“国家主権の侵害にあたる”国際法違反に問われる内容である疑いが強いと考えられます。
パレスチナを【国家主権を持つ国家】と見なすか否かは議論が分かれるところですが、国連においてオブザーバー資格を最近得ましたし、アッバス議長が率いるPLO・ファタハが“パレスチナ”を代表するという認識が国際的に広まっており、これまでのアメリカの政権も、歴代、この認識をベースに、中東和平の望ましいかたちとして【二国家共存】という解決を目指してきています。
今回のトランプ大統領の提案は、その認識を根本から否定するものですし、パレスチナ人の自決権も否定すると考えられるだけでなく、これまでのアメリカの対中東政策の基盤も覆すものと捉えることができ、皮肉にも、ネタニエフ首相が記者会見時に使った【歴史を大きく変える提案】になる可能性が高いと考えられます。
「実は綿密に計算されたトランプ流交渉術」との見方も
ただすでに1期4年、大統領として務め、周辺にYESパーソンばかりと言われつつも、優秀な人材を揃えている政権のはずですし、Rule of Lawを外交の全面に押し出してくる国ですので、明らかな国際法違反に当たるようなことを平然と言ってのけるとは考えづらいのではないかと推測します。
そこで2つ目の見解が出てきます。
それは【これはあくまでも超高めのボールを投げておいて、ディール・メイキングを行うための道具】という見解です。
常識的に考えて受け入れられるわけがなく、さらに各国から瞬時に激しい非難を浴びることを重々承知で荒唐無稽な提案をし、そこからじわりじわりと内容を和らげて落としどころを探り、どこかの段階で“相手”がOKした時点で、合意の手柄を独り占めにするという戦略を実行しているのではないかと思われます。
交渉・コミュニケーション術においては、一つのスタイルとして分析もされ、実際に援用するケースも多いのですが、最初に到底受け入れることなどできないような内容を示し、NOと言わせたうえで、「ではどのような条件なら受け入れられるのか?」と相手に迫って、その内容や主張に合わせて条件を少しずつ穏やかなものに変え、相手の受け入れ可能な限度ギリギリを狙う手法です。
ただこの際、一つ確実なのは、提案した側は実は何も失っておらず、しっかりと欲しいものはすべて手に入れているということで、ついでに評判まで勝ち取っていきます。
個人的には、トランプ大統領と政権が選択している手法は、この戦略なのではないかと思います。
ネタニエフ首相と並んで行った記者会見時に、アメリカのメディアでさえショックを受けるような内容の提案をぶち上げ、記者からの質問にも臆することなく堂々と回答していますが、同盟国を含む各国から大非難を浴びたのを確認して、次の日には一旦本件については一切コメントも回答もせずに自分の面子をしっかりと保つ方策を取っています。
そのプロセスにおいてトランプ大統領とその周辺が注意深く見ているのは「どの国がどのような非難を行っているか」という内容であり、特に同盟国と目される国々や、地域における親米とされる国々の反応に神経を尖らせ、それらの内容をもとに提案に微調整を繰り返そうとしているように見えます。
オリジナルの提案は、トランプ大統領は絶対にイスラエル贔屓だと信じたいネタニエフ首相にとっては笑いがこらえ切れないほどの内容だったと思いますので当たり前にYESと答えますが、大事なのはそこではなく、英国やフランス、そして中東地域における親米国と言われるサウジアラビア王国やUAEが受け入れ可能な条件を探り当て、ガザ地域の復興とパレスチナの扱いについての落としどころについて、米・イスラエル以外の国からYESを引き出そうとするのが目的でしょう。
ゆえにこれから矢継ぎ早にいろいろな微調整が加えられ、私たちの目には発言内容の不一致を指摘したくなり「やっぱりトランプ大統領は…」と愚痴りたくなるかもしれませんが、実は綿密に計算されたトランプ流交渉術とも言えるかもしれません。
今のところまだテーブルには乗っていませんが、YESを得るためにギリギリのライン近くまで来たと感じたら、もしかしたら“追加関税措置の発動”をチラつかせて、ラスト・ワンマイルを埋めようとするかもしれません。
ただ正直なところ、人の生命と生活がかかる提案に、追加関税措置といったチープな手法は使ってほしくないですが。
否定できない中東全域を巻き込む戦争が勃発する可能性
「ガザ所有」の提案で遠のいたウクライナ戦争の停戦
またトランプ大統領が掲げる外交的な成果を挙げるためには、アメリカはもちろん、中ロとも話すことができる国を失うわけにはいかず、その観点から、サウジアラビア王国やUAEとの関係があまり悪化しないように気を遣っているようにも見えます。
実は【半年以内に停戦を実現する】と公言しているロシア・ウクライナ戦争の“停戦協議”の前提となる、プーチン大統領との直接的な首脳会談と協議の機会をトランプ大統領が探っており、その際、両方とのチャンネルを持つサウジアラビア王国やUAEがその会談場所として挙がってきています。
ガザ情勢の仲介を共に行うカタールでの開催という説もあるのですが、カタール政府は今回のトランプ大統領の“提案”に激怒しており、失望していることから、現時点ではあまり近寄りたくないという姿勢を打ち出しています。時間が経てば状況は変わるかもしれませんが、近々、そのロシアとアメリカの協議をカタールがホストすることは考えられないのではないかと、いろいろな話をもとにして感じています。
もし、今回の“ガザをアメリカが所有し、パレスチナ人を強制的に移住...