記事のポイント
CFDAチェアマン・トム・ブラウン氏は、NYFW2025秋冬ショー開催前に、自身の公開書簡を通して、各デザイナーが自分の独自性を前面に出し、恐れずにリスクを取る姿勢を持つことを強く求めた。
各デザイナーは革新的なアプローチを試みながらも、商業性や市場動向との折り合いに苦心し、自らのアイデンティティを模索する現状が浮き彫りになった。
NYFWのスケジュール縮小や従来の枠組み変化が、ファッション業界に新たな方向性を示唆。今後の市場やクリエイティブ活動に大きな影響を及ぼすと予想される。
ニューヨーク・ファッション・ウィーク2025年秋冬(New York Fashion Week Fall/Winter 2025:以下、NYFW)が正式に始まる前日の2月5日、アメリカ・ファッション・デザイナー協議会(Council of Fashion Designers of America:以下、CFDA)チェアマンを務めるデザイナーのトム・ブラウン氏は、仲間であるデザイナーたちに宛てた公開書簡をCFDAのウェブサイトとソーシャルアカウントに投稿した。そこでは「自分のストーリーを包み隠さずに語ろう。(中略)ほかの誰でもない、自分だけの語り口で」「先のことや、人にどう思われるのかは気にしなくていい」。そのための場がショーなのだと、同氏は述べていた。
同時に、大胆になれと...more、次のように檄を飛ばしている。「リスクを取り、自らが責任を取れ」「両極端なアイデアに走れ」「なぜこのストーリーに目を向けるべきなのか? その理由を世界に思い出させてやろう」。
NYFW期間中に話を聞いたデザイナーのなかには、ブラウン氏のメッセージを当然のことと受け取っている人物もいた。反対に、ビジネスに害を及ぼすと、このアドバイスに反発するデザイナーもいた。
アリス・アンド・オリビア(Alice + Olivia)の創設者でデザイナーのステイシー・ベンデット氏は2月8日、チェルシーで行われた同ブランドのプレゼンテーションで、「私はリスクを取る世界で生きている。創造という宇宙のなかに常に身を置いている」と語った。「ほかのブランドが何をしているのかを考えることはほとんどない。自分が誇りに思えることをするだけだ」。
アリス・アンド・オリビアの秋冬コレクションには、リアルレザーとリアルスウェードが再登場する。ベンデット氏はこれを、過去のコレクションで発表したビーガンレザーよりも「むしろ環境にいい」と語った。ちなみにその2日後に、動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals:PETA)が、コーチ(Coach)がランウェイショーを行う会場の外で、「コーチ:牛を殺すな」のプラカードを掲げて「コーチのレザーは殺しだ」と叫んでは、抗議の声を上げている(この抗議運動に対してなら、間違いなく大胆という言葉を使ってもいいだろう)。自らのコレクションを称して、ベンデット氏はオーセンティック(本物)という言葉を使った。「人々はリアルを求めている。私もリアルを求めている」と、同氏は語った(ある元リテールファッションディレクターによれば、近年では、場合によっては、リアルレザーの方がむしろ安価だという。この点は注目すべきだろう)。続きを読む
The post 「リスクを取れ」 トム・ブラウン 氏がNYFW2025秋冬を前に提言。デザイナーたちの反応は? appeared first on DIGIDAY[日本版].