2023年11月30日
早稲田大学
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所
世界デジタル政府ランキング2023年度版公開
詳細は、早稲田大学Webサイトをご覧ください。
発表のポイント ●デンマークが3年連続1位、カナダが躍進して初の2位にランクイン。 ● AIをはじめ最先端技術の導入競争ではAIサミット開催のイギリスがリードしている。 ● 日本は国民視点のデジタル化、並びに行財政改革推進に十分な進捗がみられず、調査開始から初めてトップ10圏外に。また、日本は2年前に発足のデジタル庁はコロナ、健保のデジタル化などで対応トラブルが見られ、成果が不十分。また、デジタル・ガバナンスの強化、中央官庁の縦割り行政の打破、自治体間デジタル格差、国民中心のデジタル化の実装、高度デジタル人材の育成、が引き続き課題。
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所(東京都新宿区、所長:加藤篤史。以下、「当研究所」)はこのたび、「第18回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2023」を発表しました。本研究調査分析では、デジタル先進国66か国・地域を対象に、国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価しており、デジタル社会への貢献により、世界銀行、アジア太平洋経済協力(APEC)、OECDをはじめ世界の
...more官民関係機関からも注目されています。
2023年度調査結果(世界デジタル政府ランキング2023 総合ランキング)
当研究所のランキングはデジタル政府の潮流を分析する上で十分なビッグデータを有しています。今回は、下位グループを2減4増として組み換えて66か国・地域を対象にし、評点も各種アプリケーションが出現したオンライン・サービス部門を14ポイントに増やしました。
18回目を迎えた2023年度のランキング総合順位は表1の通りです。
表1 第18回早稲田大学世界デジタル政府総合ランキング2023
デンマークは3年連続で1位。カナダは昨年3位から1つ順位を上げて初の2位となっています。トップ10のうち、昨年より順位を上げたのは、イギリス(6位→3位)、韓国(7位→6位)、オランダ(17位→8位)、アイルランド(14位→10位)。特に8位のオランダは市民参加、行革分野が伸びて昨年17位からの大躍進。また、10位のアイルランドは行財政改革などが奏功して昨年14位から4ランクアップでした。日本は18年目にして初めてトップ10位圏外となりました。
各国のデジタル化の進捗度の差は、トップ10のなかでも7位の米国と8位のオランダの間に約3.0ポイントの総合スコアの開きがあり、上位国の中でも総合スコア差が顕著になっています。これらの進捗度の差異をもたらす複数の要因は、当研究所のHP(https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm)に掲載しているレポートにまとめています。レポートは、日本語版本文並びに英語版を公開しており、デジタル政府を分析する際に作成した上位25か国の国別評価レポートを含め各国の諸課題を多面的に分析しています。なお、英文の国別評価レポート約220ページは公開中です。このほか、評価レポートには、ランキング内容を解説するだけでなく、過去18年にみる世界のデジタル政府の進展、総合ランキングの推移、主要国のデジタル政策、注目の新潮流や提言などのテーマをまとめています。
レポートの概要
本レポートは、官民のDXとデジタルエコノミーの双方に関するさまざまな情報とデータを提供します。これらが経済成長の鍵を握ります。その点、ポスト・コロナに顕著なデジタル格差並びにイノベーション格差の拡大に対する警鐘を鳴らしています。
2023 年の本ランキングは、政府活動におけるデジタル技術の利活用の重要な傾向を示しています。レポートの分析ではこれまでもAI登場など特筆すべきいくつかの新しい傾向を見出してきました。今後もデジタル分野は力強く成長し続けることを示しています。
とりわけ、2023年最大のトピックは生成AIの議論です。今回はAIの主要国行政への応用事例を論述しています。今年5月のG7サミットでは、国際的なルール形成の枠組みを構築する広島AIプロセスの推進が合意され、10月に当研究所も参加した京都で開催された国連会議「IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)2023」でも、岸田首相がAIを巡って国際的なルール作りを牽引するとし、AI開発者向けの国際指針や具体的な取り組みを示す行動規範の策定と合意を目指す、と発表しました。行政分野でも、生成AIの活用が議論展開される中で、透明性やガバナンスに寄与するデジタル政府の取り組みに注目が集まります。
2023年は、新型コロナウイルスによる世界的な影響がひと段落し、デジタル政府分野も新技術の利活用や、オンラインと対面を活かしたハイブリッド型デジタル政府や、スマホなどモバイル利活用のモバイル政府が普及するなど、デジタル政府の全体活動がコロナ前より分野別の高低差はありますが活発化しています。
また、ランキング上位国は、コロナパンデミックの経験から効率化や生産性の向上、デジタル格差対応に資する行政サービスを重視する特徴がみられます。各国の政府部門は、デジタル格差の縮小にむけてトップを走るデジタル先進国のDXに学び、そのレベルに追随する傾向は昨年以上に進んできました。
上記のAIやスマートシティのハイライトに加えて、今回はデジタル政府に関する以下の解決すべき8 項目のグローバルな社会・経済・政治的課題を取り上げています。
(1) デジタル・イノベーション格差(AI,ロボティクス,量子コンピューティングなど)
(2) 高齢社会や少子化等の人口問題対応
(3) 国境を越えた「オープン・イノベーション」のグローバル標準化
(4) グローバルおよびローカルコミュニティ両方におけるデジタル・リテラシー格差
(5) ロシア・ウクライナ問題,中東問題等に端を発するサイバー攻撃対応や,偽情報対策
(6) 都市と農村のデジタル化推進の顕著な地域差異
(7) 中央政府と地方自治体の不十分な協力体制
(8) 行政サービスの品質向上と関連人材の最適配置
加えて、国連の SDGsには、17部門の達成目標があります。デジタル政府の利活用については残念ながら高評価とは言い難いですが、デジタル政府は、各SDGsセクターに必要なスムーズなDXを積極的にサポートしています。
本レポートでは次の点についても分析、論究しています。
(1) 英語版はICT先進国66か国・地域のスコア、並びに約180頁に及ぶトップ25か国の国別評価レポート
(2) 過去18回の発表作業に基づくデジタル政府の歴史的推移の分析
(3) デジタル政府の新潮流や経済・社会に与える影響を「DX」、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」、「ヘルスケア」、「生成AI」、「個人情報保護」、「スマートシティ」、「DX人材」、「サイバーセキュリティ」、「SDGs」分野などを切り口にハイライトを解説
(4) 当研究所創設者の小尾敏夫名誉教授が提唱する「第5世代デジタル政府構想」の提言
日本の課題
日本の課題と構造的弱点は、次のように総括できます。
〇 司令塔機関としてのデジタル庁の役割、権限の実効性に課題が残ります。官庁の縦割り行政の弊害、遅れる行政のDXやスピード感の欠如は引き続きの課題です。
〇 電子政府(中央)と電子自治体(地方)の地方自治法などに基づく法的分離による意思決定の複雑...
headless 曰く、河野太郎デジタル大臣は 11 月 28 日、ガバメントクラウドの提供事業者としてさくらインターネットの選定を発表した
(河野大臣記者会見、
読売新聞の記事、
動画)。
10 月 12 日に締め切った今回の公募では機能水準を維持すれば共同提案やサードパーティ製品を利用したサービスの提供を認めるといった要件の緩和を行っていた。さくらインターネットからは2025年度末までにすべての技術要件を満たすという提案があり、計画の妥当性が確認されたので採択することにしたという。河野氏によれば、さくらインターネットが利用者へのサービスを開始するのは 2025 年度下半期になると予想されるとのこと。選定要件の緩和は国内企業の参入を支援することが目的であり、さくらインターネットは国内企業初のガバメントクラウド採択となる。
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