食品・飲料世界大手のネスレ(ティッカーシンボル:NESN)は4月27日、欧州航空機大手エアバス(AIR)の新型人工衛星「Pléiades Neo」から取得した超高解像度の画像を活用し、森林再生プロジェクトの取り組みをモニタリングする実証実験を行うと発表した(*1)。食品・飲料会社として初の取り組みになる。
ネスレのコーヒー調達地域に植えた植林のモニタリングを長期、継続的に行う。今回の取り組みは、2050年ネットゼロ目標達成の重要な戦略の柱となる「グローバル・リフォレステーション・プログラム」を通じた、大気中の炭素除去に貢献するものとなる。ネスレは同プログラムを通じ、30年までにサプライチェーンと調達地域に2億本の植林を行い、CO2e(二酸化炭素換算)で200万トンの炭素除去を目指している。
まずは、22年に森林再生プロジェクトを始めた、タイの南部地方ラノーン県とチュムポーン県で実証を行う。Pléiades Neoは20年間にわたり、コーヒー農園の15万本以上のシェードツリー(日陰樹)をモニタリングする。シェードツリーはコーヒーの木を直射日光から守り、収穫量の増加や生産性の向上に繋がるほか、大気中から炭素を除去する役割も果たす。ネスレはタイでの実証を基に、人工衛星を活用したモニタリングの取り組みを他の地域にも広げていく方針だ。
Pléiades Neoは最高水準の衛星データ取得性能を...more誇り、ハイパースペクトル観測、30cm解像度での撮影を実現する。エアバスのエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるカレン・フロルシュッツ氏は「カーボンシンク(*)機能の再生やサステナビリティを確保するうえで、自然や(植林を通じた)森林再生をモニタリングすることは今や、森林破壊の状況をモニタリングすることと同じくらい重要になってきている。」と言及した(*1)。
ネスレは16年以来、エアバスとEarthwormが共同開発したStarlingを活用し、コーヒー調達地域の森林破壊リスクをチェックしている。Pléiades Neoも導入することで、モニタリング機能を高め、今回と同様の取り組みを通じて景観の回復・再生を図る。
ネスレは1日あたり10億個の製品を販売する世界最大の食品・飲料会社。サステナビリティの分野でも先進的な取り組みを推進し、外部機関から高い評価を得ている。23年3月には、穀物メジャーの米カーギル(非上場)、および環境NGOの米国魚類野生生物財団(NFWF)と提携し、米国で民間企業による取り組みとしては最大級となる170万エーカーに及ぶ放牧地でのリジェネラティブ放牧の取り組みを推進すると発表した。
(*)カーボンシンク…大気中に存在する二酸化炭素(CO2)を地中や海底に吸収すること。
【参照記事】*1 ネスレ「Nestlé to pilot new cutting-edge satellite technology to drive transparency in its reforestation projects」The post ネスレ、食品・飲料業界初の人工衛星画像を活用した森林再生プロジェクトのモニタリング実証開始。エアバスと協働 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.
米電力大手ネクステラ・エナジー(ティッカーシンボル:NEE)は4月28日、傘下のネクステラ・エナジー・リソーシズと、ダイムラートラック・ノースアメリカ、ブラックロックのオルタナティブ運用部門が合弁会社「Greenlane」を設立すると発表した(*1)。Greenlaneを通じて、中・大型のバッテリー式商用電動車と水素燃料電池車向けに、全米を網羅する公共充電・充填ネットワークの構築を目指す。
Greenlaneは喫緊の課題となる、長距離走行を中心とした電動商用車向けに、全米を網羅した公共充電インフラの構築に取り組む。この取り組みは、北米の自動車産業が持続可能なゼロエミッションのエコシステムを形成するうえで重要なステップとなる。
多様な輸送ルートに対応すべく、グリーンフィールド(未開発地)を含む複数のサイトを取得する中、まずは南カルフォルニアに充電インフラを設置する。Greelaneは最初に中・大型のバッテリー式商用電動車向けの充電インフラの構築に注力し、その後燃料電池トラック向けの水素充填ステーションの建設に取り組む。モビリティの電動化に貢献すべく、将来的には小型車にも充電アクセスを広げていく計画である。
専任のソフトウェア・ハードウェアチームが、カスタム性のある商用車向けの予約プラットフォームを構築し、フリートマネージャー、ディスパッチャー、ドライバー向けに業界最高水準の顧客体験を...more提供する方針だ。
米国では、カリフォルニア州が2023年3月末、州内で販売する商用車の約半分を35年までに電気自動車(EV)などのゼロエミッション車(ZEV)にすると発表した(*2)。環境規制をリードする同州の規制は、気候変動対策を進める他州にも波及する可能性がある。
民間部門の取り組みとしては、たとえば、英石油大手BP(BP)と米レンタカー大手ハーツ・グローバル・ホールディングス(HTZ)が22年9月、北米のハーツ店舗で、BPのEV充電ステーション「bp pluse」のネットワーク構築に向けて覚書(MOU)を締結した(*3)。bp pluseは乗用車、商用車、トラックを急速充電するグローバルネットワーク拡充を図る。
【参照記事】*1 ネクステラ・エナジー「Introducing Greenlane: Daimler Truck North America, NextEra Energy Resources and BlackRock Forge Ahead with Public Charging Infrastructure Joint Venture」
【参照記事】*2 ロイター「US approves California plan requiring half of heavy duty trucks be EV by 2035」
【関連記事】*3 英BP、北米でEV充電ステーション拡充へ。米レンタカー大手ハーツと提携The post 米ネクステラ・エナジー、全米網羅する商用電動車・水素燃料電池車向け公共充電・充填ネットワーク構築目指す。ダイムラートラック、ブラックロックと協働 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.
仏化粧品大手ロレアル(ティッカーシンボル:RO)は4月20日、同社インパクト投資ファンド「L’Oréal Fund for Nature Regeneration」を通じ、土壌中の炭素回収、森林再生、マングローブ再生に資する革新的な取り組みを実践する企業3社に新たに資金を拠出すると発表した(*1)。同ファンドを活用して生物多様性の保全を推進する。
生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)によると、今後数十年で、約100万種の生物が絶滅する恐れがあり、世界の陸地の75%は著しく改変されてしまったという。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、生物多様性の保全に向けて世界がより強調するよう求めている。そのような中、ロレアルは自社のバリューチェーンを超えて生物多様性に取り組む長期コミットメントを推進していく方針だ。今日までに2,200万ユーロ(約32億4,000万円)を関連プロジェクトに投じることにコミットしたL’Oréal Fund for Nature Regenerationを通じ、各分野で専門性を持つパートナーと共に、劣化した土地・マングローブの再生や、海洋・森林の回復をサポートする。
ビジネスモデル、経済性の面からの実現可能性、ポジティブな環境・ソーシャルインパクトといった基準をもとにデューデリジェンスを実施し、今回はNetZero、ReforesTerra、Mang...moreroves.Nowの3社を選定した。NetZeroはフランスの気候ベンチャーで、大気中から炭素を長期的に除去する取り組みに特化しており、農業廃棄物をバイオ炭へと再生している。ReforesTerraは、アマゾンが直面している最大の課題の一つである、農牧地として利用することで劣化した土地2,000ヘクタールの再生を目指す。Mangroves.Nowは、南アジア地域でコミュニティベースのマングローブ再生プロジェクトを推進する。
ロレアルは2020年に5,000万ユーロ規模のL’Oréal Fund for Nature Regenerationを立ち上げた。翌21年に、英国初のリワイルディング(再野生化)に取り組むReal Wild Estates Companyと、フランスで持続可能な農業を推進するRIZE carbon financingに資金を拠出した。同ファンドは、自然資本投資のパイオニアであるナティクシス・インベストメント・マネジメント傘下のミロヴァ・ナチュラル・キャピタルが運用管理する。
ロレアルは世界最大の化粧品会社として、欧州を代表する株価指数であるユーロ・ストックス50に組み入れられる優良銘柄だ。気候変動分野でも優れた取り組みを実践しており、外部機関から高い評価を得ている。世界的な環境NPOのCDPより、7年連続でトリプルA(気候変動、森林、水の全てでAリスト)評価を受けている。
【参照記事】*1 ロレアル「L’Oréal fund for nature regeneration accelerates biodiversity preservation efforts」The post ロレアル、インパクト投資ファンドを通じて生物多様性の保全推進。炭素回収、森林・マングローブ再生企業に資金拠出 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.
米スターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)は4月17日、世界20市場の3,508店舗が、同社独自のグリーンビルディング認証プログラム「Greener Stores」を取得したと発表した(*1)。地球から得た以上のものを還元する「リソースポジティブ」の実現に向けて、世界自然保護基金(WWF)と共同開発した同プログラムを今後も推進していく方針だ。
Greener Storesは、環境負荷の低減に加え、コミュニティと地球のより持続可能な未来の形成に向けた取り組みの一環となる。アジア太平洋とヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)の2地域の店舗が同認証を初めて取得した。スタバは、2025年までに世界の1万店舗がGreener Storesを取得することを目指す。ラテンアメリカ・カリブ地域では、23年末までに全ての新店舗をGreener Storesフレームワークの下で建設する。
Greener Storesは、エネルギー効率、ウォーター・スチュワードシップ、廃棄物転換(リサイクルとコンポスト)といった環境インパクト基準に基づく25種類のパフォーマンスを測定する。各店舗により特色は異なり、ある店舗では太陽光パネルもしくは水リサイクルのためのタンクを設置していたり、別の店舗はエネルギー効率の高いHVAC(暖房、換気、空調)システムや低排出のペイントシーラントを用いたりしている。パートナー(...more従業員)の日常的な活動も、同認証の重要な要因となっており、パートナーのアイデアやフィードバックは多くの基準に直接影響してくる。
米国ではGreener Storesの取り組みを通じて、年間の営業費用を約6,000万ドル削減したほか、水使用およびエネルギー利用を過去と比較してそれぞれ30%節約した。世界的に同取り組みを推進することは、30年までに炭素排出、水使用、埋立ごみを半減させる目標の達成に寄与する見込みだ。
スタバは気候変動分野で先進的な取り組みを推進している。しかしながら、足元では米国内で労働組合の結成を求める動きが活発化している状況だ。ESG(環境・社会・ガバナンス)関連銘柄として、今後も投資マネーを呼び込むために、23年3月20日に創業者のハワード・シュルツ氏からバトンを引き継いだラクスマン・ナラシムハン氏の手腕に注目したい。ラクスマン氏は次期最高経営責任者(CEO)として入社以来、5ヵ月間にわたり各国のパートナーと共に働き、バリスタ認証も取得した。同月23日には、従業員に配慮する企業への変革を目指すことを表明している(*2)。
【参照記事】*1 スターバックス「Starbucks verifies 3,500 Greener Stores globally」
【参照記事】*2 スターバックス「Laxman Letter to Partners: With Gratitude and Optimism」The post 米スタバ、世界3500店舗超で独自グリーンビルディング認証取得。リソースポジティブ推進 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.
米マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)は5月10日、核融合発電の米スタートアップ企業へリオン・エナジーと、2028年からの電力購入契約(PPA)を締結した(*1)。核融合発電によるPPAとしては世界初となる。
へリオンの発電プラントは28年までに稼働を開始し、その後1年間で50メガワット以上の発電を目指す。1メガワットは、米国で通常の日に約1,000世帯が使用する電力量に相当する。詳細は明らかにされていないが、核融合発電の一部がマイクロソフトに供給される模様である。ただし、へリオンは米原子力規制委員会(NRC)からプラント設計・建設に係る認可に加え、建設地の当局からも許可を取得しなければならない。
へリオンはこれまでに5億7,000万ドル(約779億円)の資金を調達している。マイクロソフトの提携先にして対話型人工知能(AI)「Chat(チャット)GPT」を開発した米オープンAIの創業者サム・アルトマン氏も、21年に3億7,500万ドルを出資した。21年には、摂氏1億度のイオン温度を達成した初の民間企業となった(へリオンの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるデービッド・カートレー氏は、核融合に最適な温度はその2倍と指摘)。
核融合技術は二酸化炭素(CO2)を発生しないクリーン発電技術の一つとして期待されている。核分裂炉と異なり、人体に影響のないレベルに弱まるまでに数万年以...more上かかる放射性廃棄物を排出することもない。核融合発電は、水素などの軽い原子核同士が融合し、摂氏1億度以上に加熱して、重い原子核に代わる反応で膨大なエネルギーを生み出す。核融合発電を巡っては、各国の研究機関や30社超の企業(米コモンウェルス・フュージョン・システムズ、英トカマク・エナジーなど)が開発競争を繰り広げている。核融合発電関連の資金調達額は約50億ドルに上る。
マイクロソフトは1985年、コンピューター上の基本ソフトウェア「Windows(ウィンドウズ)」を発売してIT業界を支配してきた。近年は、新型コロナのパンデミックをきっかけに、世界的にデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、同社のクラウドコンピューティングサービス「Microsoft Azure(アジュール)」が急成長遂げている。足元では、「Chat(チャット)GPT」を本格活用し、AI時代の主導権の獲得を目指す。
マイクロソフトの気候変動分野の取り組みとしては、20年1月に「30年カーボンネガティブ達成」という野心的な目標を発表した。カーボンネガティブはCO2の除去量が排出量を上回ることを意味する。翌21年にはCO2除去技術の開発に10億ドルを投じる基金を設立した。23年3月には、米気候テック企業CarbonCapture Incと、大気中のCO2を直接回収する技術であるダイレクト・エア・キャプチャ(DAC)によって生成された炭素除去クレジットを調達することで合意した。
【参照記事】*1 へリオン・ネナジー「Announcing Helion’s fusion power purchase agreement with Microsoft」The post マイクロソフト、28年から世界初の核融合発電の電力購入へ。へリオンとPPA締結 first appeared on 金融・投資メディアHEDGE GUIDE.