11月24日、勤務先の東京都パスポートセンターから個人情報を盗んだとして、中国籍の女性が逮捕された事件をご存知でしょうか。調べによると女性は、2,000人近い日本人の情報を持ち出していたと報じられています。この一件を取り上げているのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、日本人のスパイに対する危機感のなさを指摘するとともに、早急なスパイ防止法の導入を強く求めています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年11月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう) 1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
パスポートセンターで働く中国籍女性が個人情報を大量持ち出し。中国スパイに対する日本の異常な危機感のなさ
● パスポート申請個人情報など約1920人分持ち出し 中国籍女性を窃盗の疑いで書類送検
東京都のパスポートセンターで働いていた中国
...more籍の女性が、今年3月、1,920人分の個人情報を盗んだという疑いで書類送検されました。この女性は、東京都から窓口業務を委託されていた派遣会社の契約社員だったそうです。
都の調査では、パスポートを申請した人や関係者の氏名や住所、さらには戸籍謄本や在留カードなどがコピーされていたケースがあったとのことです。それにしても、パスポートというかなり高度な個人情報を扱う部署に他国の、しかも中国人を使用していたというのは、あまりにもずさんと言わざるをえません。
中国では、2017年6月に「国家情報法」という法律が施行され、中国の国内外の組織や市民による工作活動への協力が規定されました。国外での中国人に有事での動員を義務付けた「国防動員法」とならんで、他国で中国人に工作活動への協力を求めるという、極めて危険な法律です。
● 中国、国家情報法を施行 国内外の組織・個人対象
東京都がこの中国の法律を知らないはずはありません。これこそ情報の扱いがいかにずさんかを示す事例だと思いますが、マイナンバーカードにおける情報の扱いに大騒ぎしていた人たちが、今回の件では静かなのが不思議です。犯人が中国人だったから「忖度」しているのでしょうか。
外務省はこの事件を受けて、パスポートの発給を行う窓口の担当者を日本国籍を持つ人に限定するよう求めたということですが、かなり今更ながら感がありますし、窓口業務以外ならいいのでしょうか?
ニュースでは、持ち出された個人情報が第三者に漏洩された事実は確認されていないとしていますが、そもそもの動機は何だったのか、ニュースでは明らかにされていません。また、中国のスパイに情報が渡っていたとして、それを日本の公安は見抜けるのでしょうか?
また、今回は発覚したからいいものの、発覚しなかったケースもあるのではないかと思われます。これまで外国人(中国人)が窓口に立っていたケースはどのくらいあるのか、たまたま今回がレアケースだったのか、それとも常態化していたのか、そのあたりも明らかにしてほしいところです。
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イギリスの国営放送が暴いた英国内での中国による狼藉
そもそもスパイ法のない日本では、他国のように厳罰に処することはできず、執行猶予付きの微罪にしかなりません。
加えて、改正反スパイ法の施行以後、中国に渡航した日本人の逮捕者が増えていますが、情報流出した人々が中国を訪れた際に、本当に安全だといえるのでしょうか?そのなかに日本の政治家や高級官僚の家族などが含まれていたら、ハニートラップに引っ掛けられたりスパイ容疑で拘束される危険性もあるでしょう。
中国は海外で、日本人の動向もさることながら、在外中国人の動向に目を光らせています。たとえばイギリスでは、現地の華人コミュニティの名士や、偽のジャーナリストを利用して、イギリス内の香港反体体制派を監視し、脅迫してきたことが明らかになっており、その実態を暴いたドキュメンタリーをイギリス国営放送「チャンネル4」が最近放送しました。
● 中共刺探在英港人活動 運用西方假記者和華人慈善家
公共放送である日本のNHKも、こうした番組をぜひ作って欲しいものです。せめてこの番組をイギリスから買って、日本で放送することくらいはしてもいいはずです。
アメリカのホワイトハウスは2018年6月、中国国家安全部は約4万人の諜報員を海外に配備していると指摘しています。また今年7月、イギリスの情報・安全委員会は同国の情報機関であるMI6の調査として、中国国家安全部が数十万人のマンパワーを自由に使える状態にあると発表しています。
また、カナダ公共放送のCBCは今月24日、カナダ安全保障情報局が今月初めに連邦政府職員に対して、中国が海外人材プログラムにより、優秀な人材を高給でリクルートしていることを警告する書簡を送ったことを報じました。
記事によれば、中国当局からカナダの政府職員に対して、重要な個人情報の提供を求め、その見返りとして高額な給与を約束するメールが送られてくるとのこと。その実際のメールの写真も公開されています。
● 加拿大情報局警告:中國招聘加國公務員 意在機敏資源
このように海外では、中国によるスパイ活動や工作活動について、メディアも政府も詳しく報じているのですが、ところが日本では政府もメディアも、こうした情報をほとんど出しません。それだけ情報収集能力がないのか、あるいは中国に忖度しているのか。その両方なのかもしれません。
各国が警戒しているのに、日本ではその警戒感が非常に薄い。そのあまりの温度差には驚かされます。平和ボケもここに極まれり、いまだスパイ防止法の必要性を語らない政治家、メディアは、どう考えてもスパイの仲間だと思わざるをえません。
いずれにせよ、今回の事件でこの中国人女性は何の目的で個人情報を持ち出そうとしていたのか、徹底的に追及すべきでしょう。
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2014年に反スパイ法が施行された中国で、17人が拘束され10人が実刑判決を受けている日本人。しかしいかなる行為が反スパイ法に抵触するのかは明らかにされておらず、中国では日本人を含めた全ての人間が拘束されるリスクに晒されているのが現状です。そんな隣国の横暴を伝えているのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、台湾人が中国で逮捕もしくは拘束された複数のケースを紹介するとともに、日本政府に対しては、邦人保護の観点から早急なスパイ防止法の制定を提言しています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2023年11月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう) 1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
すべての日本人がスパイ拘束されるリスク。中国で繰り返される「文字獄」
● 中国で拘束の日本人男性 上訴棄却され懲役12年確定
4年前に中国湖南省長
...more沙で国家安全当局に拘束された日本人男性に対し、今年2月、スパイ行為に関係したということで懲役12年の判決が下されましたが、男性は上訴していました。しかし11月3日、この上訴が棄却されたということで、懲役12年が確定しました。
反スパイ法が制定された翌年の2015年以来、中国当局にスパイ容疑で拘束された日本人は少なくとも17人に及んでいますが、中国当局はスパイに関連しているということで、逮捕や裁判の判決理由などについて、ほとんど情報を出していません。
そのため、どのような行為がスパイ行為に当たったのかということが、ほとんどわからないのです。町中で何気なく撮影した写真、あるいは誰かと交わした言葉がスパイ行為とみなされたのかもしれないですし、あるいは政治的な理由からの冤罪かもしれないのですが、その実態はまったくわかりません。
今年3月にはアステラス製薬の日本人男性がスパイ容疑で拘束され、その後、正式に逮捕されています。理由はまったくわかっていません。また日本の非鉄専門商社の中国法人で働いていた中国人も、今年3月に拘束されていたことが先日発覚しました。こちらはレアメタルを巡って外資企業への情報流出が疑われたのではないかとも噂されています。
● 「社員みな萎縮」動揺する中国の日系企業 非鉄商社の中国人社員拘束
2015年以降、拘束された日本人17人のうち、12人が逮捕され10人が実刑判決を受けています。拘束されてから逮捕されるまでに解放された日本人は5人しかいないそうです。
● 中国、アステラス社員を逮捕 スパイ容疑で3月拘束
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拘束・逮捕される理由がない人のほうが少ないという現実
台湾でも同様に、中国大陸で拘束・逮捕される台湾人があとを絶ちません。しかも、その理由も非常に恣意的です。たとえば、2019年にスパイとして拘束され、懲役刑を課された李孟居氏は今年7月に刑期満了で中国を出国しましたが、深セン出張の際に、直前に香港で入手した「香港頑張れ」というカードが、拘束のきっかけとなったそうです。
民主化運動の支援者だと当局にみなされたようですが、本人はそのような意味があるとは思わなかったとのこと。単に「I LOVE NY」と同じような意味合いのものだと思ったのでしょう。
● いきなり拘束され、政治権利を奪われ、服役…台湾人男性が「反スパイ法」を「人質外交の合法化」と批判する理由
今年4月には、台湾独立を主張する政治活動を行ってきた台湾人青年が、中国で拘束されています。彼は2011年に台湾独立を主張する台湾民族党を立ち上げたメンバーでもありましたが、すでに政治からは手を引いていて、中国には囲碁を教える目的で訪れていたとのことです。中国国営テレビは、この男性が手錠をかけられて拘束されている様子を放送しましたが、これら一連の動きは、来年の台湾総統選挙に向けて台湾人を威嚇する目的があるのではないかと言われています。
● 中国が台湾人男性を政治犯として逮捕。台湾市民への脅しが目的か?
加えて今年の3月には、台湾の出版社「八旗文化」の編集長・李延賀氏が、病気の母を見舞うため上海を訪れたところで中国当局に拘束されました。李延賀氏は中国人ですが、台湾人の女性と結婚し、2009年から台湾に移住していました。台湾の戸籍も取得し、中国籍の放棄を申請していましたが、コロナ禍で除籍が猶予されていたところだったそうです。
● 台湾をジワジワと追い詰める…中国政府が「3年ぶりに本土を訪ねた編集長」をいきなり拘束した本当の狙い
中国当局は李延賀氏を拘束したことについて、「国家の安全を脅かす活動を行った疑い」と、例によってよくわからない理由を掲げていますが、台湾では「八旗文化」が、新疆ウイグルやチベット問題、天安門、中国官界の腐敗に関する書籍や、日本で出版された中国批判本の翻訳書を出版していたことが原因ではないかとも言われています。
● 台湾をジワジワと追い詰める…中国政府が「3年ぶりに本土を訪ねた編集長」をいきなり拘束した本当の狙い
要するに、本人自身が直接発言・執筆したわけではなくても、中国にとって不都合な内容の文章を扱っただけで、拘束される可能性があるということです。ですので、中国を批判する書籍を刊行したことのある日本の出版社社員が中国に行けば、拘束される可能性あるということなのです。中国に不都合なニュースや番組を放送したことがある放送局社員も同様です。もちろん、SNSで中国批判のツイートをリツイートしたことがあれば、それも拘束理由の証拠になるでしょう。
そのように考えると、拘束・逮捕される理由がない人のほうが少ないと言えるのではないでしょうか。
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中国の「何でも難癖をつけて相手を陥れる」風習
とりわけ、中国では「文字獄」(発表された文章が婉曲的に体制を批判していると認定し、その作者を弾圧、罰すること)が繰り返されてきました。作者にその意図がなくても、中国当局が「これは体制批判・国家分裂を示唆している」と認定することで、罰せられてしまうのです。
たとえば、明の洪武帝は貧しい家の出だったことから劣等感が強く、官僚の書く文章が自分を嘲っているのではないかと疑い、多くの官僚を処罰しました。学者の徐一夔(じょいっき)は洪武帝を称えた「光天之下、天生聖人、為世作則」という詩を書きましたが、「光」「聖」が僧侶であった洪武帝の頭の薄さを笑い、「則」の文字が「賊」と同じであるということから、洪武帝は自分を貶めているに違いないと曲解して激怒、一族郎党が処刑されてしまいました。その他、洪武帝の時代には文字獄によって多くの文人が処刑されています。清の時代にも康煕帝や雍正帝の文字獄が有名です。
『水滸伝』では、梁山泊の首領である宋江が酔って酒場の壁に書いた漢詩が、体制転覆を目論んだものだとして、朝廷から追われる原因となります。
また、文化大革命も、1961年に発表された新作京劇『海瑞罷官』について、毛沢東(の意を汲んだ四人組の姚文元)が「ブルジョアジーや地主階級を美化し、人民公社解体や反革命分子の擁護を主張している」と難癖をつけて、「実権派」潰しを行ったことから始まっています。
要するに、何でも難癖をつけて相手を陥れる風習が中国にはあるのです。清末の中国で20年以上にわたり布教活動を行ったアーサー・スミスも、著書『中国人的性格』で中国人は曲解の名人だと述べています。
今年7月に改正反スパイ法が施行され、「スパイ行為」の定義が拡大されました。今後、中国で日本人が逮捕されるリスクは、ますます高まっていくと思われます。いまだ中国の巨大市場を夢見て、中国事業への拡大を表明する日本人経営者も少なくありませんが、自社の社員が中国で拘束・逮捕される可能性があることについて、どう考えているのでしょうか?
日本維新の会の松沢成文氏は11月9日の参院外交防衛委員会で「日本もスパイ防止法を持たないと、スパイ交換ができず、海外で捕まったら何年も拘束される」と述べました。本メルマガで繰り返し述べてきましたが、日本国民を守るためにも、スパイ防止法の制定は急務なのです。
こ...
新型コロナウイルス感染防止対策として、口をつけずに形式的に行われていた大相撲の「力水」の所作が12日、2020年初場所以来、約4年ぶりに再開した。36歳の佐田の海は先場所までと同じく、口に水を含まずひしゃくを返してしまい「しっかり忘れていた」と苦笑い。33歳の錦木は「久々すぎて『どうだったっけ』と