オリオンビールは、気軽に一杯を楽しむ“0次会”に注目し、その魅力を体験できるイベント「0次会屋 by オリオン ザ・ドラフト」を開催する。期間は2025年7月17日から19日まで、那覇市の「パレットくもじ」前の交通広場で実施。会場は入場無料で、仕事帰りや買い物の途中でもふらっと立ち寄れる構成となっている。0次会とは、正式な飲み会(1次会)前に仲の良い人たちと軽く飲む文化を指す。県内の調査によれば、20代から40代のうち約4割が経験済み。さらに、未経験層でも半数以上が関心を示しており、今後広がりが期待される。SNSとも相性の良い“0次会デザイン缶”で呼びかけを促進会場では、『オリオン ザ・ドラフト』の数量限定「0次会デザイン缶」を1人1缶無料で配布。缶には「参加者、募集中!」といった呼びかけのメッセージが記載され、イラストレーターOkutaさんが描いたユルく魅力的なキャラクターも添えられている。メッセージアプリやSNSと親和性が高く、イベント外でも使用できるデザインだ。また、来場者にはビールと相性の良い「ビアナッツ」を提供。さらに、イベントの様子をSNSに投稿すると、「オリジナル0次会ステッカー」(2種のうち1枚)がプレゼントされる仕組みも用意されている。調査から見える0次会への潜在需要と共感の動機オリオンビールが2025年6月に実施し
...moreたインターネット調査(※出典:オリオンビール株式会社調べ)によれば、0次会経験者は37.1%。実施の理由としては、「本番まで時間が空いていたから」「気の合う仲間と先に話したい」「軽く飲んで気分を上げたい」といった動機が挙げられている。場所は飲食店、自宅、公園など多岐にわたり、利便性と気軽さが重視されている傾向が見える。年代別では、20代で約49%、30代では約59%が「やってみたい」と回答。若年層を中心に、新しい集まり方として定着する兆しを見せている。集まるきっかけをつくる0次会の可能性このイベントは、ただアルコールを楽しむだけでなく、仲間とつながる“きっかけの場”を提供するものとして設計されている。メインの宴席に先立つひとときが、より自然で柔らかな関係づくりにつながる可能性もある。オリオンビールは、こうした文化の裾野を広げることで、日常の中にある小さな楽しみの価値を再提示している。0次会というスタイルが今後、沖縄の外へと広がるか注目される。0次会屋 by オリオン ザ・ドラフト 開催概要【日時】2025年7月17日(木)~7月19日(土) 16:00~21:00 【場所】パレットくもじ前交通広場(ウフルーフ)【参加費】入場無料【参加対象者】20歳以上の方【注意事項】※未成年の入場は可能ですが、必ず20歳以上の方の同伴が必要です。※免許証、健康保険証、パスポートなど、年齢確認ができるものをお持ちください。※ご来場の際は公共交通機関をご利用いただき、飲酒運転は絶対におやめください。※お車やバイク、自転車を運転される予定のある方へのアルコールの提供はできかねます。※泥酔状態でのご参加はご遠慮ください。周囲のお客様へのご配慮をお願いいたします。※無料配布は先着順となっておりますのでなくなり次第終了となります。※天候不良により、イベントは中止となる場合がございます。 【来場特典】・ザ・ドラフト0次会缶1缶を無料配布・ビアナッツ 【SNS投稿特典】オリジナル0次会ステッカー1枚をプレゼント※ステッカーは2種類をご用意しており、そのうち1枚をプレゼントいたします。※来場特典・SNS投稿特典は数量限定のため、無くなり次第終了といたします。Top image: © オリオンビール株式会社
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4億年も昔、いまだ大森林が地上を覆う前の時代──その地表には、高さが最大8メートルに達した可能性がある「巨大キノコ」のような姿がそびえ立っていたと、長らく信じられてきました。
化石の名称は「プロトタキシテス (Prototaxites)」。専門家のあいだでは「これは古代の菌類だ」という説が根強く、一部には「巨大な藻類」や「極めて原始的な針葉樹」といった主張もあり、19世紀半ばの発見以来、約160年以上にわたり学説が大きく揺れてきたのです。
ところが、イギリスのエディンバラ大学(University of Edinburgh)で行われた研究によって、この生物が既知の植物でも動物でも、さらには菌類ですらないことを示す証拠が示されました。
この発見は、古代陸上生態系のイメージを根本から変えうるもので、植物や菌類の進化史からはみ出す「未知の多細胞生物」が、かつて数メートルから8メートル級の巨体で大地に根を下ろし、その土地の生態系を支えていたとしたら──と想像をかきたてます。
いったい、この不可思議な生物の正体は何なのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年3月17日にプレプリントサーバー『bioRxiv』にて発表されました。
目次
プロトタキシテスの正体:植物か、菌類か、別次元か?4億年前、地上を覆った“偽巨大キノコ”
プロトタキシテスの正体:植物か、菌類か、別次元か?
4億年前に植
...more物でも動物でも菌類でもない未知の多細胞系統がいた可能性があると判明 / この図は、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)やAiryscan技術を利用した高解像度画像と3D再構築結果を示しています。ここでは、プロトタキシテスの内部に存在する3種類の管状組織(細い管、太めの管、そして特有の厚みを持つ管)と、それらがどのように複雑なネットワークを形成しているかが明確に描かれています。また、メドゥラリースポットにおける管の連結パターンの詳細な解像が、従来の真菌の菌糸構造とは大きく異なることを示しています。/Credit:Corentin C. Loron et al . bioRxiv (2025)
プロトタキシテスという化石が最初に学界で注目されたのは、約160年前の19世紀半ばでした。
そのころの研究者たちは、断片的な化石から見えてくる“巨大な管状の構造”に強い衝撃を受け、「原始的な針葉樹のような巨大植物ではないか」「菌糸(キノコの繊維)にそっくりだから大型キノコでは?」といった多彩な説をめぐらせました。
一部には「地衣類(菌類と藻類の共生体)の祖先が巨大化したのでは」という大胆な推測まで飛び出し、確固たる結論に至らないまま長い時を経てきたのです。
そもそもプロトタキシテスが生きていた約4億年前のデボン紀初期は、地球上にまだ大きな森林が出現していませんでした。
もしこれが本当に“巨大キノコ”だったとしたら、草木の少ない地表で何を分解して栄養を得ていたのか、あるいは植物に近い特徴をもつなら光合成をしていたのか──それらはどれも、古代の陸上生態系を考えるうえで大きな興味を引きます。
また藻類説に基づけば、海にいた生物が一時的に陸へ進出した可能性まで想定でき、学説はめまぐるしく入れ替わっていました。
実際に過去には、同位体比の分析から「光合成とは違うパターンを示すため、他の生物を分解する菌類のようだ」と報告され、“巨大キノコ説”が一時的に強まったことがあります。
しかし、植物に多いフェノール性物質が見つかったとするデータも発表され、「やはり植物寄りかもしれない」と再び考えがひっくり返る──そうした論争が絶えず起きてきたのです。
こうした混乱に新しい視点をもたらしたのが、スコットランド北東部の「Rhynieチャート」です。
約4億年前の陸上生物がタイムカプセルのような状態で残されており、初期の植物や小さな節足動物、菌類なども同じ地層から見つかっています。
保存条件がほぼ共通していることから、同じ環境にいた仲間として、化石同士を直接比較しやすいのが大きな特徴です。
実際、ここから出た真菌の化石にはキチンがはっきりと残っており、プロトタキシテスとの違いを照らし合わせる絶好の材料にもなりました。
ところが、プロトタキシテスそのものは化石によって大きさや断片の状態がまちまちで、有機物の割合もバラバラ。
ひとつの標本だけで全体像をつかむのは難しかったという事情があります。
「管の構造が菌糸っぽい」「リグニン様の化合物がある」など数々の報告がありましたが、しっかり一本筋を通せる仮説はなかなか見当たりませんでした。
そこで研究チームは、Rhynieチャートから新たに見つかった大型標本を使い、高度な顕微鏡観察や分子分析で徹底的に比較検討することにしたのです。
4億年前、地上を覆った“偽巨大キノコ”
4億年前に植物でも動物でも菌類でもない未知の多細胞系統がいた可能性があると判明 / この図は、ATR-FTIRスペクトルから得られたデータを用いて行ったCanonical Correspondence Analysis(CCA)の結果を示しています。各サンプルの分子指紋が、真菌、植物、その他の古生物群とどのように相関しているかがプロットされ、特にプロトタキシテスのサンプルが他のグループと明確に分離している点が強調されています。この視覚的なデータにより、プロトタキシテスが真菌特有のキチンや植物のリグニンとは異なる、独自の分子組成を持つことが示されています。/Credit:Corentin C. Loron et al . bioRxiv (2025)
今回の研究ではまず、大型のプロトタキシテス化石を強力なフッ化水素酸(HF)などを用いて溶かし込み、石英質を除去して有機物だけを抽出するという方法が取られました。
イメージとしては“酸のお風呂”に化石を漬け、岩石の部分をそぎ落として中身を取り出す感覚です。
この工程は危険も伴いますが、ふだんは石英に埋もれて見えない細胞壁やバイオマーカー(生物特有の化合物)を鮮明に捉える上で重要なステップとなります。
続いて、取り出した有機物を「赤外線を使った分子の指紋検出器」にかけ、どのような化学結合を持っているかを隅々までチェックしました。
もしキノコの仲間なら、細胞壁にキチンやキトサンが含まれるので特定の波長を吸収するピークが現れるはずです。
同じ地層から採取した真菌化石・植物化石と比較しながら、どこが似ていてどこが異なるのかをはっきりと浮き彫りにしました。
さらに、顕微鏡観察ではレーザーを使って内部構造を3次元的にスキャンし、管(チューブ)同士がどう繋がっているかを立体的に再現。
驚くのは、キノコの菌糸のように単純ではなく、太さや形が異なる複数のチューブが複雑に絡み合うネットワークをなしていたことです。
これらの手法を総合的に駆使した結果、プロトタキシテスには次のような特徴が見出されました。
真菌特有のキチン痕跡が見当たらない他のキノコ化石で確認できる分子指紋が、プロトタキシテスにはまったく存在しない。
リグニンに似た化合物があるが、現生植物とは一致しない“リグニンっぽい”成分はあるものの、明らかに独自タイプであり、植物とも決定的に異なる。
真菌系統を示すバイオマーカー(ペリレンなど)も検出されない菌類が持つ化合物が見つからず、真菌説はさらに否定的になった。
多くの化石研究は、「形(形態学的特徴)」をもとに「これは植物っぽい」「キノコっぽい」と判断しがちです。
しかし今回の研究では、危険な酸処理を含む抽出、赤外線による分子指紋解析、3D顕微鏡による詳細な内部構造の可視化といった複数の手法を組み合わせ、しかも同じ地層から得られた菌類や植物などと比較するという総合的なアプローチを行いました。
そうした最先端の技術をフル活用した結果、プロトタキシテスが既存の植物や菌類、ましてや動物のいずれにも属さない可能性が非常に高まったのです。
言い換えれば、4億年前の地上には、私たちがまだ想像すらしていない“未知の多細胞生物の系統”がいたかもしれない──その驚きを形にしたのが今回の研究だといえるでしょう。
この生物が活躍していたとされる約4億年前は、まだ森林が十分に発達しておらず、陸上生態系としては過渡期でした。
それゆえ、もしプロトタキシテスが数メートルから最大8メートルもの高さに達していたなら、当時の地表環境に相当なインパクトを与えていたはずです。
ところが、今回の分析では腐生(サプロトロフィー)的機能を示す化学指紋は見当たらず、キノコのように地表の落ち葉や倒木を分解する役割でもなかった...
誰もが知る最強生物、クマムシはなぜこんなに人気なのでしょうか。
クマムシ(緩歩動物)は、数多くの生物が暮らす地球上でもひときわ注目を集めています。その理由のひとつは、まず第一にクマムシが持つ圧倒的な「耐久性」です。
乾燥状態に陥っても活動を止める「クリプトバイオシス」と呼ばれる現象や、極低温から高温、さらには宇宙空間の高い放射線下でも生き延びる能力は、私たちの“生命の常識”を覆すものとしてメディアや科学ファンの間で大きな話題となってきました。
実際、2007年に欧州宇宙機関(ESA)がロシアの生物衛星「フォトン-M3」を用いて行った宇宙実験では、一部のクマムシが生還し、卵からの孵化が確認されたという報告もあり、その超絶的な耐久性があらためて注目されています。
また、クマムシの小ささと愛嬌のある丸みを帯びた見た目も人気の要因といえます。
成体でもわずか1ミリ以下のサイズながら、独特で愛らしい姿を顕微鏡で観察した動画や画像がSNSを通じて広まることで、「もっと知りたい!」という声が子どもから大人まで幅広い層で高まってきました。
さらに、近年のゲノム解析の進展によってクマムシの独特な耐性機構に関連する遺伝子が数々見つかり、ほかの生物のストレス耐性研究に応用できる可能性も指摘されています。
例えば、クマムシのゲノムには「Dsup(Damage suppression protein)」のよ
...moreうにDNAを保護すると考えられる遺伝子が存在し、これが宇宙線や放射線への抵抗力に寄与するのではないかと期待されているのです。
こうしてメディアを中心に取り上げられた結果、「クマムシ=強くて珍しい生き物」というイメージが一般にも広がりました。しかしながら、その一方でクマムシの進化上の位置づけや最も近い仲間については、意外に知られていないのも事実です。
人間に最も近いのがチンパンジーであると多くの人が知っているのとは対照的に、「クマムシの一番近縁な生物は何か?」という問いは、実はあまり耳にしません。
本コラムでは、クマムシの有名な耐久性とともに、その近縁系統がどのように分かれ、なぜ私たちがあまり知らなかったのかにスポットを当てながら、クマムシという不思議な生き物の奥深さを探っていきたいと思います。
目次
クマムシは虫じゃない? 脱皮動物“エクディソゾア”の正体6億年前の大分岐:クマムシはいつ“奇妙な仲間”と別れたのか?クマムシも脱皮する? 節足動物・オンシフォラと繋がる意外な証拠脱皮仲間の中でも異端児?クマムシを“最強”たらしめる理由昆虫よりも近い!?クマムシの親戚は“有爪動物”だった奇妙な化石が語る“パナルトプロダ”の正体:クマムシとオンシフォラの起源最強と最弱は紙一重?クマムシの隣人“オンシフォラ”の切ない現実分岐した運命:クマムシの“超耐久”とオンシフォラの“脆弱”が生まれた理由
クマムシは虫じゃない? 脱皮動物“エクディソゾア”の正体
クマムシ(緩歩動物)は、「エクディソゾア(Ecdysozoa)」と呼ばれる脱皮動物群の一員です。エクディソゾアとは、英語で「脱皮」を意味する“ecdysis”に由来しており、動物界の中でも体表や外骨格を定期的に脱いで成長する動物たちをまとめた分類群です。
ここには、節足動物(昆虫、クモ、甲殻類など)や線形動物門(回虫など)、類線形動物門(ハリガネムシ類)、そしてクマムシやオンシフォラ(有爪動物)といった多様なグループが含まれ、カンブリア爆発期以降、地球上で大きく繁栄してきました。
クマムシは、顕著な外骨格こそ持たないものの、胚発生の過程や体節の配置、そして脱皮を行うという点でエクディソゾアに確かに位置づけられます。
一見するとクマムシの丸っこい姿は昆虫やクモと大きく異なるように見えますが、分子系統解析や発生学の研究から、これらの仲間とは共通の祖先を共有し、同じく“脱皮性”を受け継いだことが明らかになりました。
過去にはクマムシのゲノム解析をめぐり、外来遺伝子が大量に取り込まれているかもしれないという論争も起きましたが、再解析で当初考えられていたほど極端ではないことが示されました。
こうした研究者間の議論も、クマムシが注目を集める大きな理由のひとつです。
エクディソゾアという大きな枠組みの中でも、昆虫や甲殻類のように圧倒的な多様化を遂げたグループもあれば、クマムシやオンシフォラのように小型で独特な生態に特化していったグループも存在します。
こうした背景を踏まえると、私たちに身近な節足動物だけでなく、「クマムシという極限環境に強い生き物や、謎めいたオンシフォラも、実は脱皮する仲間だった」と言われると、やや意外に思えるかもしれません。
しかし、分子生物学や古生物学の成果によって、この“脱皮”という性質がエクディソゾア全体の進化を大きく支えてきたことが、れっきとした事実として示されているのです。
6億年前の大分岐:クマムシはいつ“奇妙な仲間”と別れたのか?
最強クマムシに最も近い種は何か? / Credit:clip studio
現在の分子系統解析や化石記録にもとづく推定では、エクディソゾアは約6億年前にはすでに共通の祖先を持っていたと考えられています。
その後、カンブリア爆発期にあたる5億数千万年前頃から急速に多様化が進み、「パナルトプロダ(Panarthropoda)」と総称されるクマムシ(緩歩動物)、オンシフォラ(有爪動物)、節足動物がそれぞれの進化の道を歩み始めたとされます。
とくに、クマムシとオンシフォラが最初に分岐し、やや遅れて節足動物が別系統として独自の進化をたどったとする「タクトポダ(Tactopoda)仮説」が現在有力視されていますが、分岐順や年代については今も研究が続けられており、議論が残る分野でもあります。
分子時計解析では、クマムシとオンシフォラの共通祖先は5.5~6億年前にさかのぼるという推定があり、そこから今に至るクマムシとオンシフォラに分かれたと見られています。
一方、昆虫やクモ、甲殻類などを含む多彩な節足動物の祖先は、5.2~5.4億年前ごろに分岐した可能性が高く、ちょうどカンブリア爆発期の生物多様化のピークと重なります。
こうして同じ“脱皮”という共通の特徴をもつエクディソゾアの祖先は、環境の変化や新たな生態的ニッチの出現に応じて、クマムシ、オンシフォラ、そして節足動物へと次々に枝分かれしていったのです。
ただし、分子時計の結果には、化石の校正点や使用する遺伝子領域の違いが影響するため、分岐年代の推定値には研究によって多少の幅があります。
それでも、カンブリア期を中心とした膨大な進化の奔流の中で、これら3つのグループが共通の祖先から分岐したという大きな枠組みは、現在広く受け入れられています。
こうした理解は、後に述べるクマムシとオンシフォラの近縁関係がどのように成立してきたかを知る上で、重要な手がかりになっているのです。
クマムシも脱皮する? 節足動物・オンシフォラと繋がる意外な証拠
オンシフォラ(有爪動物:カギムシ)/Credit:wikipedia
クマムシ(緩歩動物)、節足動物、そしてオンシフォラ(有爪動物:カギムシ)は、いずれもエクディソゾアの内部に位置し、さらに「パナルトプロダ(Panarthropoda)」という大きなくくりに含まれる動物群とされています。
まず共通する特徴が「脱皮」で、これは成長時に体表を覆う外皮(クチクラ)を一度脱ぎ捨て、新しい外皮を形成するという性質です。
昆虫やクモのような節足動物は硬い外骨格を脱ぎ替えるイメージが強いかもしれませんが、クマムシも顕微鏡で観察すると、やはり成長段階で古いクチクラを脱ぎ捨てていることが確認されており、共通の祖先から受け継いだ“脱皮性”の痕跡がしっかりと残っているのです。
また、発生段階や遺伝子レベルでも多くの共通点が認められます。たとえば、体の前後を決めるHox遺伝子群や、体節形成・細胞分化を制御するシグナル伝達経路(Wnt、Notchなど)という「発生プログラムの基本ツールキット」を共有しているのです。
さらに、化石生物として有名なHallucigenia(ハルキゲニア)やAysheaia(アイシア)などの「ロボポディアン」と呼ばれる柔軟な体と短い脚をもつ生物を調べてみると、クマムシ・オンシフォラ・節足動物の共通祖先の姿をうかがわせる形質が見つかっています。
こうした遺伝子や形態的な類似は、地上や水中、森林など、多岐にわたる環境に適応してきたこれら3グループが、実は同じ“脱皮”という進化的履歴を共有する仲間であることを示すものです。
極限環境に強いクマ...
この世から消滅したはずの人間の子どもが生まれていたようです。
2017年に科学雑誌『Journal of Assisted Reproduction and Genetics』に、妊娠初期に消滅したはずの人間の遺伝子を持つ赤ちゃんが産まれたという珍しい症例が報告されました。
いったいなぜ、そんなことが起きたのでしょうか?
目次
この世に存在しない人間の子供が誕生していたと判明!消えたはずの双子の細胞が睾丸で生きていた従来型の遺伝子診断はキメラ体には向かない
この世に存在しない人間の子供が誕生していたと判明!
この世に存在しない人間の子供が誕生していたと判明! / Credit:Canva
事件のきっかけは、父親となったサム(仮名)と赤ちゃんの血液型不一致でした。
サムとサムの妻は不妊治療の末に男の子を出産しましたが、産まれた男の子の血液型は、サムとは一致しませんでした。
そこでサムたち夫婦は、正確な親子鑑定を行うために赤ちゃんのDNAを調べてもらうことにしました。
結果、赤ちゃんはサムの子供ではないとの判定でした。
この場合、可能性は2つです。
体外受精の時に間違った精子が使われたか、妻が不倫をして他の男の子を身ごもったかです。
ですがサムは妻を信じ、体外受精を行ったクリニックを相手に調査を開始します。
しかしクリニックは間違いを認めませんでした。
そこでサム夫妻は、サムの父
...more親(赤ちゃんにとってはお爺ちゃん)のDNAを含む、より高精度な遺伝子診断を行いました。
結果、衝撃の事実が発覚します。
精密診断の結果、妻を身ごもらせた男がサムの血縁者だと判明したのです。
一方、調査結果を知ったDNA診断センターのベアード氏は驚くとともに、ふと気になる点を思いだしました。
サムは白人男性でしたが、彼の体には明るい肌と暗い肌が非常にハッキリと混在していたのです。
サムは肌の色の問題をずっと火傷か何かであると考えていましたが、ベアード氏にはもっと別の問題に感じられました。
というのも、肌の色の混在は、1匹の体に2匹の遺伝子が混在する「動物のキメラ」によく表れる症状だったからです。
そこでベアード氏はサムを研究室に招き、サムの精子を調べることにしました。
結果、サムの精子の10%が、サムのものではなく、サムの兄弟にあたる存在の遺伝子を持つことがわかりました。
ベアード氏はこの時点で、サムの体が「キメラ体」であり、サムの生殖細胞の一部が、サムの兄弟の細胞に置き換わっていると考えました。
なぜそのような「キメラ体」にサムはなってしまったのでしょうか。
消えたはずの双子の細胞が睾丸で生きていた
サムは子宮の中で双子の兄弟が存在した / Credit:Canva
全てのはじまりは、サムの母親が二卵性の双子を妊娠した時でした。
近年の研究により、単独の妊娠だと考えられていた事例の8分の1が多胎妊娠からはじまることが明らかになっています。
ですが1つを残して他は子宮に吸収されてしまうことが多いのです。
しかしサムの場合は異なりました。
だがある日、サムは兄弟の細胞を吸収して自分の一部にしてしまう / Credit:Canva
胎児のとき、サムは何らかの方法で兄弟の細胞を吸収して、自分の一部にしていたのです。
結果、産まれてきたサムは、元々サムである体と、吸収されて消えたはずの兄弟の体が混在するキメラ体となったのです。
サムの肌が明確に色が違う暗い部分があったのは、その部分だけが吸収された兄弟の細胞に由来していたからです。
だが運悪く、吸収された細胞は睾丸で生き残り精子を作る細胞になっていた / Credit:Canva
問題は、キメラ部分が肌だけではなく、精子を作る生殖細胞に及んでいた点にありました。
サムの生殖細胞がキメラになった結果、生産される精子もサム本人のものと、吸収された兄弟のものの2種類になってしまったのです。
消えたはずの兄弟の細胞が精子を作った結果、サムの妻はサムの兄弟の子供を出産した / Credit:Canva
そして運悪く、サムの妻の受精卵に最初に辿り着いた精子は、消滅したはずの兄弟の細胞に由来するものだったのです。
結果、サムの妻はこの世に存在しないはずのサムの兄弟の子供を身ごもり、出産することになります。
従来型の遺伝子診断はキメラ体には向かない
現在サムは妻との間に2人目の子供をもうけている。新しい子供は遺伝的にも完璧にサムの子である / Credit:Canva
今回の研究により、実の親子であっても血液型の不一致や父親鑑定の失敗が起こりえることが示されました。
人間においてキメラ体が生じる例は非常にまれであり、これまでで100例ほどしか知られておらず、さらに生殖細胞にまでキメラ症状が及んだ例はほとんど存在しません。
正確な診断結果が出るまでサム夫妻にとって動揺の続く時間でしたが、愛する人を信じ続ける心が最後には勝った稀有な例となるでしょう。
また今回の事例は、従来型の親子診断には一部、盲点が存在することが判明しました。
そのため研究者たちは今後、親子診断にはより慎重であるべきだと結論しています。
全ての画像を見る参考文献This Man Failed A Paternity Test Due To His Vanished Twin’s DNAhttps://www.buzzfeednews.com/article/danvergano/failed-paternity-test-vanished-twin元論文A case of chimerism-induced paternity confusion: what ART practitioners can do to prevent future calamity for familieshttps://link.springer.com/article/10.1007/s10815-017-1064-6ライター川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。編集者ナゾロジー 編集部...