◆「琉球独立」を国連会議で主張 「民族独立総合研究学会」のメンバー 米ニューヨークの国連本部で開催中の先住民問題の会議に、沖縄独立を掲げる「琉球民族独立総合研究学会」のメンバーが参加し、日本政府は固有の文化を持つ沖縄の人々を「先住民」と認めるべきだと主張、在日米軍基地が沖縄に集中している問題の解決を訴えた。 会議は毎年開催される「先住民問題常設フォーラム」。 今年は16~27日の日程で開かれ、世界中の先住民や支援団体が参加。学会理事で沖縄大非常勤講師の親川志奈子さん(37)は「多くの人から『も...
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◆「琉球独立」を国連会議で主張 「民族独立総合研究学会」のメンバー 米ニューヨークの国連本部で開催中の先住民問題の会議に、沖縄独立を掲げる「琉球民族独立総合研究学会」のメンバーが参加し、日本政府は固有の文化を持つ沖縄の人々を「先住民」と認めるべきだと主張、在日米軍基地が沖縄に集中している問題の解決を訴えた。 会議は毎年開催される「先住民問題常設フォーラム」。 今年は16~27日の日程で開かれ、世界中の先住民や支援団体が参加。学会理事で沖縄大非常勤講師の親川志奈子さん(37)は「多くの人から『も...
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特別美人というわけではない女性が、男性の割合が多いサークルに入ったことで姫のように扱われる状況をあらわす「オタサーの姫」という言葉があります。
一般的には学生サークルで起きることが多いそんな状況を、社会人になって経験したという女性に話を聞いてきました。
学生時代であれば、よくある揉め事である「オタサーの姫」をめぐる恋愛のいざこざも、社会人になってお互い立場や状況があると事態は途端にやっかいになるようで…。
◆少女漫画!?男性4人から同時にアプローチ
小綺麗な外見と優しそうな雰囲気が特徴的な由奈さん(仮名・31歳)は保険会社で事務の仕事をしています。もともと文章を書くのが好きだった由奈さんは、趣味の時間を持とうと作家志望者が通う『作家養成塾』に入ったそうです。
「塾では、自分が書いてきた小説をみんなの前で読み、生徒と先生が講評するんです。生徒は20代~50代、学生から医者までと幅広かったのですが15人の生徒のうち男性が13人とまさにハーレム状態でした」
そこで初日から由奈さんはモテたと言います。
「授業後にみんなで軽い食事をとりながら書いた小説をさらに講評しあうのですが、お酒も入っていたせいで話が盛り上がり数人の男性と連絡先を交換して、その日のうちに4人の男性からデートの誘いを受けました」
小説家志望の男性がかなり積極的なことに驚きます。
「意外にみなさ
...moreん飢えてます(笑)。『〇〇という作家について語りましょう』とか『キミの書いた小説をもっと読んでみたい』とかアプローチは様々です」
ちなみにアプローチをしてきた男性は、50代の整形外科医(既婚)・30代の非常勤講師(未婚)・30代のSE(未婚)と20代の学生(未婚)だったそうです。
「『由奈ちゃんのことをもっと知りたい』とか『こないだ着ていた服かわいいね』とか『小説の世界観がすばらしい』とか、会社では絶対に言われない褒め言葉と積極的なアプローチを同時に4人の男性から受けて、まさにこの世の春でした(笑)」
◆じらしてこそ、オタサーの姫!
体の関係はどうだったのでしょうか。
「エッチはだれともしていません。そっちの方が、よりちやほやしてもらえるしデートのときも新鮮なので、いわば『じらし』ていました。あ、でも非常勤講師はけっこうイケメンだったので、一回だけBまで許しました」
まさにやりたい放題です。そしてもはやBがどこまでかもわかりません。
しかし、そんな由奈さんの春は最悪な形で終わりを告げることになります。
◆SE男性 まさかのストーカー化!
「私に夢中になっていたSE男性が知らない間にストーカー化していたんです。SNSで私を探し出して勤務先や住所・交友関係を全部調べ上げられました」
SE男性の行動はそれだけにとどまらず、「私が他の男性とデートをしている現場に数回あらわれたんです…」
まさに恐怖でしかありません。
「おそらく尾行されていたんだと思います。さらに怖いのは、そこでなにも言わずに笑顔で会釈(えしゃく)して去っていったことです。」
そして、とうとう由奈さんは、最高にツラ過ぎる局面をむかえることになります。
◆衝撃!「クソビッチ女」にされ小説に登場することに
「ある日、塾でSE男性が書いていきた小説を発表したのですが、主人公があきらかに私だったんです。名前も年齢も外見も設定がほぼ私でそこにいた全員が気付くレベルでした。
複数の男をたぶらかして嘘をつき、最後には登場人物に『本性をあらわしたな! このクソビッチ女が!』と罵(ののし)られていました」
想像しただけでもかなり壮絶な状況です…。
「教室中が静まり返ってましたね。みんな講評もできないというか……。弄(もてあそ)んでいた男性達もほぼ実名で登場してデート先までリアルに書かれていました。
講師だけが何も気付いておらず『いや~、最低な女の描写にリアリティがあっていいね』と褒めてまた場が凍りつきました」
SE男性は、夢中になっている時は褒め上げる一方、自分のアプローチになびかないと「クソビッチ女」としてディスり倒すという自分勝手なタイプで、さすが相手の迷惑かえりみずにストーカー化するだけありますね。
◆ストーカー男がネットにひどい悪口を書き込み
SE男性の迷惑行為は、公衆の面前で由奈さんに恥をかかせるだけにとどまらなかったようです。
「少女漫画のような世界が味わえてうれしかったし、なにより小説を書くのが楽しかったのですが、とうとうSE男性がSNSや塾の掲示板に私の悪口を書き込むようになったので怖くなって塾をやめました。アドレスも変えてSNSも全部削除です」
完全にタガが外れた粘着ぶりですね。
「SNS上でヤリマンよばわりされるのを友人に見られるのは、この歳になるとかなりイタかったです…」
そう語る由奈さんの背中が小さく丸まっているのがわかります。
「とはいえ、オタサーの姫だったときの恍惚感(こうこつかん)は忘れられないんですよね。今はまた乾いた生活に逆戻りです」
由奈さんはそう言うと、遠くを見つめながら弱々しく微笑みました。
―自分史上最悪の恋愛 vol.9―
<TEXT/瀧戸詠未 イラスト/やましたともこ>
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お風呂上り、「あれ、髪の毛がずいぶん落ちている……」。鏡の前に立つと、「髪にボリュームがない……」。そんなお悩みを抱えている女性、いませんか?
いまや、薄毛は男性だけのお悩みではありません。バリバリ働く女性は“オス化”していると言われ、体毛が濃くなったり、ヒゲが生えたりする人も。薄毛もその一つで、男性ホルモンが増加することにより、髪の毛は薄くなってしまうのです。
一体、どうすれば薄毛を予防できるのか? 薄くなってしまった毛を増やすことはできるのか? 『最強! の毛髪再生医療 – 豊かな髪と再び出会える本』(ワニブックス)など多数の著書で知られる、あらなみクリニック総院長の荒浪暁彦先生に話を伺いました。
◆キーポイントは“血流”をよくすること
――女性が薄毛になるメカニズムとは?
「男性ホルモンが増えると、5アルファリラクターゼという物質がDHTという毛根を攻撃して抜け毛を促進する物質に変えます。だから男性ホルモンが多い人は薄毛が多いと言われているんです。
女性も本来、男性ホルモンを持っていますが、女性ホルモンが強いうちは男性ホルモンの働きが抑えられているので、そんなに毛は抜けません。しかし年を取って卵巣機能が低下してくると、女性ホルモンを分泌できなくなるので、男性ホルモンが優位に働くんです」(荒浪先生、以下同)
――ご高齢の女性はヒゲが生えたり薄毛
...moreが目立ったりしますが、卵巣機能の低下が原因だったんですね。
「加齢以外にも、血流が悪くなることで卵巣機能は低下します。血管を拡張したり収縮したりするのは自律神経なんですが、昔と違っていまは冷暖房があるので、自律神経を鍛える場がないんですね。それが冷え性の原因の一つと言われています。自律神経はストレスに弱いので、ストレス社会に生きる女性に血流障害が多くなっています」
◆冷房に頼らず汗をかく、きちんと寝る…
――自律神経を鍛えるためにはどうすればよいでしょうか。
「暑いときは冷房に頼らず、我慢して汗をかく。あとはきちんと寝ることです。
睡眠中は副交感神経、起きている間は交感神経が働きますが、副交感神経と交感神経が交互に作用するような生活をしていないと、自律神経のバランスが崩れて血流が悪くなります。交感神経は攻撃神経と言われていて、男性ホルモンが優位に働くんですよ。
夜ずっと起きていて副交感神経を働かせなかったり、バリバリ働いて交感神経がいつも働いているような状態でいると、男性ホルモンが増えてしまいます」
――ほかに生活面で気をつけるべきポイントは?
「アルコールを過剰摂取すると、男性ホルモンが増えますね。あと、タバコは最悪です。タバコを一本吸うだけで血管が収縮するので、血流も悪くなるし、細胞を破壊して活性酸素を増やすので、抜け毛はもちろん、たるみやシワの原因になりますよ」
――マッサージは効果はありますか。
「悪くはないんですが、マッサージをしたくらいで血流はそんなによくなりません。むしろお風呂に長く入ったほうがいいですね。温まると血管が開き、血液がそこに多く入るということなので、長湯をすると血流がよくなります。
極端な話、毛皮の帽子をかぶるのもいいと思います。とにかく温めると血管が開くので、そのときは血流がよくなっているんですよ」
――食生活で薄毛を改善できることは?
「体を温めるようなものを食べるといいですよ。生姜とか、唐辛子とか。唐辛子が発毛に効くというサプリもあって、温めるという意味ではそれなりには効きます。ただ、実際は毛が生えるほど効かせるのは難しく、予防的なものですね。とにかく体を温めていれば卵巣は健康を保てますので、飲まないよりも薄毛にはなりにくくなると思います」
◆薄毛を予防するシャンプーの選び方
――頭皮シャンプーを使っているのですが、ズバリ効果のほどは?
「あくまでもイチ皮膚科医としての意見ですが、効果はあまりないのではと思います。皮膚は角質層、表皮層、真皮層とあって、真皮層に血管がたくさん通っています。毛根も真皮に集中しているのですが、角質層と表皮層はバリア機能がすごい鉄壁なんですよね。その壁を通り抜けて、毛根が元気になるくらいの有効成分は入らないと思うんです」
――ショックです……。どんなシャンプーがいいでしょうか。
「リンスやトリートメントを使わないとさらさらにならないようなシャンプーはダメですね。頭皮がボロボロになります。本当にいいシャンプーは、シャンプーだけで髪の毛がさらさらになるんですよ。
一つの選び方として、硫酸系界面活性剤とアミノ酸系界面活性剤というのがあるのですが、硫酸系界面活性剤が入っているシャンプーはごわごわしやすいです。アミノ酸系は少し高くて洗浄力も弱めなんですけど、頭皮のダメージは少ないんですよ。
私も漢方生薬、馬プラセンタなどを配合したアミノ酸系シャンプーを作ってみたところ、それに変更しただけで薄毛が改善された方は少なくないです。シャンプーのせいだったんですね」
――今日からアミノ酸系のシャンプーに変えます!
「ただ、医学的に考えると、シャンプーで育毛なんてできっこない。発毛に効果のある成分を直接頭皮に注射をしてもそんなにすごい効果はないのに、すぐ洗い流すようなもので発毛ができるとは考えにくいです。
発毛という発想じゃなく、頭皮を痛めないという発想で選んだほうがいいと思います。育毛成分というのは、外側から塗るだけではそんなに頭皮に浸透するわけじゃないので」
生活習慣を改めることで、薄毛は予防できることが分かりました。では、既に薄くなった頭皮に毛を生やすためには、どうすれば……? 次回は「薄毛に効果テキメンのミノキシジル。若い女性は絶対に飲んではいけない」で、最先端の薄毛治療の実態に迫ります!
<TEXT/尾崎ムギ子>
【PROFILE】荒浪暁彦(あらなみ・あきひこ)
あらなみクリニック総院長/慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師。浜松医科大学を卒業後、同大皮膚科入局。静岡市立清水病院、富士宮市立病院などを経て、現在、静岡県島田市および千葉県船橋市の皮膚科漢方クリニック『あらなみクリニック』総院長。漢方の大家として知られる、二宮文乃医師(現アオキクリニック院長)に師事し、ステロイドに頼らないアトピーの治療法を確立。その後も漢方皮膚科、美容皮膚科でキャリアを重ねる。『患者が決めた!いい病院』(近畿/東海版オリコン・メディカル発行)において、東海4県皮膚科医総合評価2位(医療水準のみでは1位)に選ばれるなど、行列ができる皮膚科医として高い評価を受けている
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『プラネタリウムの外側』は連作集。有機素子コンピュータで会話プログラム(チューリングテストをクリアするレベル)を開発する南雲助教と、彼の研究室に関わるひとたちの物語だ。ITと現実感覚を結びつけたSFは数あるが、この作品はガジェット/アイデアばかりを前景化するのではなく、わたしたちが暮らしている日常、人間関係のなかで出逢う感情や感覚の地平で語られている。そこがとても新鮮だ。
生活のなかでふと覚える些細な違和感。たとえば、いつのように電灯をつけようとしたら、壁スイッチの位置が思った場所と違っていたとか、毎日通っている町並の一角が空き地がなっていて、前にどんな建物があったか思い出そうとしても思い出せないとか。そんな経験はだれでもあるだろう。たいていは気の迷いだとしてやりすごしてしまうのだけれど、もしかすると「現実は自分が思ったとおりではない」のかもしれない。
その感覚をたくみに小説化したのがフィリップ・K・ディックというひとで、彼の作品ではしばしば些細な違和感を足がかりに現実の虚構性があらわになっていく。
ディックの展開はかなり強迫観念的だったけれど、『プラネタリウムの外側』の物語はそうしたアクの強さはなく、むしろ澄んだイメージだ。繊細な青春小説の匂いすらある。
「日常の些細な違和感」から「現実は思ったとおりではない」への展開がもっともすんなりいっているのが、第一作「有機素子ブレー
...moreドの中」だろう。物語のきっかけとなるのはシンクロニシティである。
第一の語り手の北上渉は、大学の非常勤講師の契約が切れたばかりで、気分を一新すべく、下関から釧路まで列車で行くパッケージ・ツアーに参加し、車中でポス・ドクで小説家志望の尾内佳奈と知りあいになる。奇妙な縁というか、その名前は北上の別れた妻の名前、中井奈央の逆読みだ。オナイカナとナカイナオ。そのうえ、車両のプレートナンバーが佳奈の誕生日と同じだった。できすぎた暗合。そう考えるとノイズのような感覚が走る。
第二の語り手は、有機素子コンピュータでプログラム実験をおこなっている「ぼく」。男側と女側、ふたつのプログラムを、列車の旅というシチュエーションのなかで会話させてなりゆきを観察している。「ぼく」はあくまで観察者のはずだった。しかし、同僚の南雲と手がけている出会い系ネットサービスのサイドビジネスが忙しくなり、ポス・ドクを対象とした求人を出す。応募してきた女性を会って驚く。尾内佳奈と名乗った彼女は、「ぼく」がいま走らせている女側プログラムの設定とそっくりの背格好をしていたのだ。
これもシンクロニシティ? それとも、プログラムの外側に「こちらの現実」があるということが思いこみだったのか?
「有機素子ブレードの中」は一種のリドルストーリーで、核心の謎は宙ぶらりんのまま、後続諸篇の通奏低音をなす。
第二篇「月の合わせ鏡」では、語り手が変わる。南雲と同じ大学の研究者で通信工学を専門とする「ぼく」だ。ぼくは月と地球のあいだで合わせ鏡をつくるシミュレーション実験を思いつき、南雲に資材面での助力を依頼する。ちなみにこの作品では、前作に登場した尾内佳奈が南雲の研究室で働いている。
合わせ鏡実験は学術的な知見を得るためではなく、インスタレーションのようなものだ。ここでのポイントは、光には速度があって映る鏡像は過去だということだ。地球と月の距離があれば、その時間差を人間が実感できる。しかし、そこにかすかな違和感が紛れこむ。
部屋の奥に置いたクライアント端末に近づくと、少しずつ遅れて、鏡像の中を自分が歩いている。 「あれっ?」 一瞬、奥の鏡像の一枚だけに、ぼくとは逆にドアの方に向かう人影がよぎったような気がした。ぼくは、足を止めて、それより奥、つまり過去が映っているはずの部分を確認するけれど、その人影は、まるで鏡像と鏡像の間をすり抜けたように、奥の鏡にはいない。
「ぼく」は気のせいだと納得しようとするが、その違和感は余韻のようにあとを引く。
月の合わせ鏡は、現代美術展で入賞する。それを両親に報告すると、母は「あなたは小学生のころから絵が得意だった。市内のコンクールで二回入賞した」と言う。しかし、「ぼく」はまったくそのことを覚えていない。それは本当に自分の過去か、と訝しむ。母は、いま美術展で入賞するするのだから、子どものころも絵が得意だったと、因果を逆にして思いこんでいるのではないか?
人間は忘れるものだから、記憶が作り替えられることだってあるだろう。では、コンピュータはどうか? 「ぼく」は合わせ鏡のプログラムをつくるとき、記憶領域がオーバーフローしないように不要になった鏡像データを消すルーチンを組みこもうとした、しかし、南雲助教から借りた有機素子コンピュータにはデータ消去のコマンドがない。南雲はこともなげに「もう三年間、このコンピュータを使っているけれど、ストレージがオーバーフローする不具合など一回もないよ」という。
このあたりから有機素子コンピュータの特異性がうっすらと浮きあがっていく。まず、由来がよくわからない。1990年代に、ある研究室で構築されたのち、使い道がなく大学に払い下げられたらしい。使われなくなった最大の理由は、演算をおこなうプロセッサと、データを記録するストレージが明確に分かれておらず、あるプログラムに同じデータを入力しても、得られる解に「ぶれ」が生じることだ。
ちなみに、早瀬さんのデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』も、この有機素子コンピュータを重要なギミックとして用いていた。本書の解説で渡辺英樹さんが指摘しているように、『グリフォンズ・ガーデン』と『プラネタリウムの外側』はテーマの点でも共通するところがある。『グリフォンズ・ガーデン』もつい先ごろ文庫化された。本書と併せて読むとより面白さが増すだろう。
「月の合わせ鏡」は、「過去から現在」という線的な因果論を超えて、人間の記憶とデータ的な記録の違いにふれる作品だが、第四篇の「忘却のワクチン」はそこから一歩進んで----あるいは大きく飛躍して?----、記録を徹底的に消去することによって記憶すら書き換える大胆なアイデアが試される。
この作品も、また違う「ぼく」が語り手だ。高校時代につきあっていた香織のために、ネットにバラまかれた彼女のポルノ画像を消す手段を求め、「ぼく」は南雲研究室の戸を叩く。もちろん、いったんネットに流出した画像を完全に消し去るなど、常識的には不可能だ。タイムマシンで過去を変えでもしないかぎり。
興味深いのは、方法を模索する南雲の相談相手が、有機素子コンピュータ上の会話プログラム「ナチュラル」だということだ。ナチュラルは、南雲のかつての共同研究者----つまり第一篇「有機素子ブレードの中」の第二の語り手「ぼく」----を模して構成されている。
南雲とナチュラルとの関係はどこか危うい。いっぽうで、「ぼく」と香織との関係もぎくしゃくしている。彼らは大学附属植物園で再会するのだが、香織は高校時代の恋人関係が終わったのは「ぼく」が香織を振ったからだと言う。「ぼく」の意識では、振ったのは香織のほうなのに。
『プラネタリウムの外側』を通じて流れるのは、大切な存在を手放す喪失感と覚悟である。物理的に失うだけではなく、その存在についての記憶すら失ってしまい、「失われた手ざわり」だけかすかに残る。新海誠監督の劇場アニメ『君の名は。』でもその境地が描かれていたけれど、良い感じの結末でまとめてしまった。早瀬作品は、ずっとシビアで儚い。
(牧眞司)
『プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)』
著者:早瀬 耕
出版社:早川書房
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